地獄に神は居ないのでしょうか その4
どうぞよろしくお願いします。
「んっ???」
何やら頭の中に声が聞こえる。
「何か言った?」
「何も言ってませんが」
橋姫は可愛く首を横に振る。
“可愛えぇ。男の娘だけど”
思わず俺は心の中で呟く。
《男に覚醒してんじゃねえよ》
「覚醒してねえよ!」
俺は口に出して否定する。
《全く、色気付きやがって。良い女に良い男かよ。ハーレムだね〜》
「だからエッチは女とだけだって!」
「種馬殿、何を大声で宣言しているのですか?」
俺を見る周りの視線が痛い。何やらヒソヒソ噂する声も聞こえて来る。
〈流石、鬼神を凌ぐ逸物の種馬殿〉
〈止むところを知らぬ道祖神は異常精力者と聞く。エッチの方も常時臨戦態勢という事か〉
〈流石は漆黒に輝く絶倫王だ。きっとブラッククリスタルだぞ〉
〈恐るべし、性欲のブラッククリスタル〉
「ちょっと待てやぁ!!」
なんだか以前にも増して、俺の噂の凶暴度が増しているようです。
「何か聞こえるのか?」
一戦終えた外道丸も騒ぎに気付いて、こちらへやって来る。
「どうやら、幻聴を聞いているようなのでしゅ」
いつの間にか、おコンも近くに来ていた。
「おにぃたんの症状が酷くなって来たのでしゅ。んーんんー」
おコンは、背伸びをして俺の頭を撫でようとするが届かない。俺は少し屈んであげた。
おコンは、いつも可愛えぇのぉ。
《おうおう、今度は獣姦か? 怖いものしらずだねぇ》
「獣姦なんてしてねえし!」
〈獣姦だって。性欲の魔獣とは言え、流石にアブノーマルにも程があるぞ〉
〈いや、俺は尊敬するぞ。そのようなエクストラプレーまでも極めるとは。種馬殿は快楽の真の追求者だ!〉
俺の評価が、益々とんでもないものになって行く。
「おにぃたんは、やっぱり壊れているのでしゅ」
「ちょ、ちょっと。違うよ? 本当に違うからね?」
「種馬殿、誰かと話しているのか? ひょっとして獄卒からの連絡か?」
「あ!」
そうだった。この声は間違えなく次郎丸の声だ。
「次郎丸か? この偽ナル・ア・ナル野郎。ぶっ殺す!」
俺の声が、思わず荒くなる。
「次郎丸なんだな?」
そう言うと、外道丸が俺の左手を握って来る。
「はぁ〜、だから外道丸。俺はあんたと違って、その気は無いって」
〈外道丸様も、橋姫様という愛人がいなさるのに、種馬殿にもお手を出されたのか〉
〈英雄色を好むと言うし、お盛んですなぁ〉
「バ、ババ、バカを言うな! 俺はノンケだと言っているだろう!!」
慌てて周りの声を否定するが、きっと俺と外道丸がデキているという噂は、あっという間に広がるのだろう。
《そんな事より、お前は地獄をメチャクチャにする気か? 貨幣経済なんか持ち込みやがって》
「俺じゃねぇし。お前が悪いんだ。もっと早く連絡してくれたらよかったのに」
《馬鹿野郎! 俺の管轄じゃないから連絡をとるのも一苦労なんだぞ》
「種馬殿、言葉は口にしなくとも、頭に念ずれば会話は出来る」
外道丸がそう教えてくれた。
俺のブレスに手を添えた外道丸にも、俺と次郎丸の会話が聞こえているようである。
いつの間にか、橋姫とおコンの手も俺の左手に添えられていた。お蝶はこちらを気にしながらも対戦中である。
《お前が地獄を引っ掻き回すからいけないんだ》
“言い掛かりだ。俺は戦っていただけだぞ”
《そもそも、お前がドアを間違える程のバカだから、こんな事になるんだよ。俺がどれ程、局長を誤魔化すのに骨を折っていることか。うぅっ》
次郎丸は言葉を詰まらせる。
局長の鬼の形相を思い浮かべると、なんだか悪い事をした気になってしまう。
“じゃ、貨幣経済も局長にバレたのか?”
《いや、貨幣経済も、お前がここに居る事も、まだバレていないし、もちろん報告なんてしない》
次郎丸の声がションボリしている。
“うーん、ここは対策会議が必要だな。お前、こっちに来れる?”
少し間が空く。
《行けるが、この騒ぎを内密に終わらせる何か良い案でもあるのか?》
“まぁねぇ〜”
俺は外道丸たちに親指を立てて見せる。
《今すぐには行けないが必ず近い内に、そっちへ行くから、これ以上騒ぎを大きくするな。良いな。出来るだけ騒ぎを鎮めるんだ。分かったな。あ、やべぇ。人が来た。じゃよろしくな》
それだけ言い残して、通信が途切れた。
「やったな」
外道丸も親指を立て返す。
「それで、良い案って?」
どうもありがとうございました。




