地獄に神は居ないのでしょうか その3
どうぞよろしくお願いします。
俺たち五人は、瞬く間にレベル16最強チームと言われるようになった。
等活地獄最強の亡者、万年チャンピオンの童子組を倒した男女三人組が、童子組を従えて新たにチームを組んだ。
このニュースはかなりセンセーショナルだったみたいで、噂はあっという間にレベル16内全体に広がった。
お陰で今では、瞬間移動しなくても対戦者には事欠かない。何故なら、次から次に挑戦者が現れるからである。
「はーい。並んでくださ〜い。チーム戦をお望みの方は、こちらにチーム名と代表者名を記入してください。個人戦をお望みの方は、ご自身のお名前と、私たちの中から、お望みの対戦者名を書いてください。順番が来たらお呼びしますので、あまり遠くへは行かないでくださいね」
おコンが受付を担当してくれるので、俺たちは対戦に集中する事が出来た。
おコンが対戦するときには、手の空いている者が代わりを務める。
団体戦で、みんなの手が離せない時は、その辺りの者に頼むか受付中止となる。
でも、おコンちゃんは普通に喋れるのね。
「観戦者は、柵で仕切られた試合場には入らないでくださいね」
受付から、そうアナウンスするおコンの声が聞こえて来る。
「しかし、すげ〜人気だな。大盛況だ。レベル16最強決定トーナメントでも始めるか」
俺が半ば呆れたように言う。
「面白い!」
「面白そうだわ!」
対戦の手が空いた外道丸と橋姫が、激しく興味を惹かれたようである。
「確かに面白そうね」
お蝶もノリノリのようだ。
「あいつも出て来るかな?」
「最強決定戦と聞いたら、絶対に出て来るわ」
「だなぁ。あいつは絶対に来るよな。でも、あいつは日本語が不自由だから大丈夫かな」
「話すのは不自由でも、聞き取りは大丈夫みたいよ」
外道丸と橋姫が、誰かの話を楽しそうにしている。
外国の人? 日本的な地獄をイメージしていれば、他国の方でも入獄は可能なんだろうなぁ。
あ、ちなみに俺の戦績はレベル16のルーキーとしては、まずまずと言ったところだ。でも個人戦の優勝は無理だと思う。
それから俺たちは、みんなでレベル16最強決定戦の計画を立て、スケジュールを決めて、俺たちに挑戦して来た相手や観戦に来た者たちに、その内容を伝えて参加者を募った。
「おコン、団体戦の参加はどれくらいだ?」
「千組くらいなのでしゅ」
「えっ! そんなにか。で個人戦は?」
「一万人くらいなのでしゅ」
「はぁ? 一万人? なんだよそのとんでもない人数は」
「心配は要らないよ。急ぎ会場を整備中だ。参加者を始めレベル16の住人がボランティアで手伝ってくれているから、それ程時間は掛からんだろう」
事務的な事は、おコンが取り仕切り、会場整備などの実務は外道丸が取り仕切っている。
この二人と我々全員、それと大量のボランティアの努力によって、どうにか大会の開催に漕ぎ着けることができた。ただし、やっつけ仕事なので多少の不手際や会場の質などには、目を瞑らざるを得ない。
「それでは第一回、等活地獄レベル16最強亡者決定戦を、只今より執り行う事とする。我々亡者一同、極悪人の名に恥じぬレベル16らしい、どんな手を使ってでも勝つ。という気概を持って試合に挑もうではないか!」
「うおおぉぉぉ〜〜〜」
レベル16で一番名の通っている外道丸が開会の挨拶を行い、参加者及び観戦者が一斉に雄叫びを上げる。地面を揺るがすような大歓声だ。
大会は初日から目を覆うほどの、えげつない熱戦が続いている。流石は極悪人どもだ。
「焼きたての肉はいらんかね〜。美味しいよ〜。五本、一クリで良いよ」
幾つか用意した試合会場の周りには、いつの間にか焼肉の屋台まで出ていて、その屋台の亡者が串焼きの肉を売っていた。
「おい。一クリってなんだ? 女の単位か?」
「クリスタルの事です。私も賽の河原で拾ったクリスタルを持っていますわよ。それより、なんでクリが女の単位になるのよ!」
俺の後ろにいた橋姫が教えてくれた。
なんでもクリスタルの美しさ、つまり色、形、大きさで価値が決まるらしい。
「貨幣経済があったんだなぁ」
「そんなもの、ありませんでしたわ。この戦闘の観戦者目当てに、商売したい人たちが勝手に始めた行為です」
「マジか! 俺たちが原因で貨幣経済が始まったのかよ」
「そうなりますね」
橋姫は冷静に答えるけど、本当に良いのかよ。
「でもさぁ、いくら色や形が良くて、程よい大きさの綺麗なクリを集めても、買う物なんて殆ど無いだろう」
俺は当然の疑問を口にする。
「あら、ここは男の割合がとても高いのよ。私だって、ちょっとバイトすれば結構なクリを稼げるわよ。クリをいっぱい稼いで、そのクリで美男子を侍はべらせるのも良いかもねぇ」
そう言うと、懐から小さくて綺麗なクリスタルを取り出し、掌に乗せて指先で転がし始めた。
「野郎ども相手に、どんなバイトだよ。やめておけよ。また外道丸が嫉妬してウザいから」
「どう? 私のクリちゃん、とても可愛らしくて綺麗でしょう。祐介も触って良いのよ。指で転がしてみて」
「お前にクリちゃんは無いだろう」
ボソリと言ってやる。
「いえいえ、だからこれ」
俺の目の前に、綺麗なクリスタルを突きつける。
「分かったよ。俺の負けで良いから、もうクリクリ言うなよ」
俺の方が赤面してしまう。
「しかし、クリスタルってどうやって集めてるんだ?」
「洞窟や河原で見つかったりするんだけど、流通量の調節はやってないみたいね」
「ふーん。じゃ運が良ければクリ拾いで、大クリ持ちになれるのか」
「まぁゴールドと同じですね。そのうちクリ鉱山でも見つかるんじゃ無いかしら。そしたら貨幣経済も、しっかり根付くかもしれないわね」
確かにそうだろう。まだ始まったばかりの貨幣経済だが、きっと経済規模は大きくなって行くのだろうな。今のうちに銀行を建てる計画でも練るか。
「まぁ貨幣なんて流通し始めれば、誰かしら工夫して、上手い商売を考えるものだしな」
「使い道がなくても、お金という認識だけで集めたくなるものですしね」
ごもっともです。ごもっともですが、金銭欲の罰も有る地獄で、貨幣経済ってアリなんですかねぇ。あ、色欲の罰も有るのにヤリまくっている俺もいるし、そもそも、ここは暴力ふるい放題だし、まぁ良いんだろうなぁ。
《良いわけあるかよ。バカ祐介が余計なことをやらかしやがって》
どうもありがとうございました。




