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死んだらみんな地獄へ転生  作者: 一無
第一章 地獄転生編
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地獄に神は居ないのでしょうか その2

どうぞよろしくお願いします。

 「・・・そう言われても、変わった事と言えば一人で戦っていた頃に、俺の肛門から神様の声が聞こえた事くらいかなぁ」

 「はぁいぃ〜?」

 外道丸が素っ頓狂な声をあげて、

 「無残な」

 橋姫が目頭を押さえ、

 「・・・」

 お蝶は言葉なく俺に(すが)りつき、

 「ああ、あの時の」

 おコンは(いた)わるように、俺の頭を撫でている。

 「ちょっと待てぇ!! 本当だって。本当にケツの穴が喋ったんだよ。ギョウ虫が痒くて、肛門を覗いたら〈戦え、戦って勝てば救われる〉みたいな内容でさぁ。きっとナル・ア・ナル神様が、俺の肛門を使って喋ったんだ。俺の口と肛門で、俺と神様が会話出来るようにさぁ・・・だから哀れむような目はやめてくれぇ。俺、本当に聞こえたんだよ。本当にケツの穴と会話・・・したんだよ? あれ? ナル・ア・ナル神様が・・・ケツの穴で? 俺、何を言ってんだろう。壊れてる?」

 「ナル・ア・ナル神様て何だ?」

 外道丸は首を傾げて、

 「ナル・ア・ナル神様なんて知らないわ」

 橋姫は腕を組み、

 「ナル・ア・ナル神様は、ダーリンが作り出した妄想の神様よ」

 お蝶は涙で濡れる顔を両手で覆って、

 「ナル・ア・ナル神様は、おにぃたんの心の支え」

 おコンは俺を哀れむような目をしている。

 俺は段々、自分の正気が信じられなくなって来た。

 「うんうん、私は信じるわ。だから大丈夫。落ち着いて」

 お蝶が優しく俺を抱きしめて、慰めてくれる。

 「ヒック、ウ、ウゥ。ヒク・・・ありがとう、お蝶。俺、きっと地獄の生活が辛くて心の風邪に(かか)っているんだ」

 「もう良いのよ。もう大丈夫だから」

 しゃくり上げるように泣きじゃくる俺を抱く手に力が入る。

 「あの時は、おコンもとても悲しかったの。人が壊れていく様とは、こんなにも無残なものなのかと・・・それ以来、定期的にズボンを下ろして、肛門様を拝むのでしゅ。可哀想な、おにぃたん」

 おコンが怒ったように唇を噛んでいる。その目からは、大粒の涙が(あふ)れ頬を濡らしていた。

 やはり見られていた。おコンには、あの光景を見られていたんだ。

 「穴がち・・・失礼。(あなが)ち間違えでもないかもしれないよ」

 おいおい、言葉で言っても漢字間違いの洒落はわからないって。

 「勘弁してよ。外道丸まで壊れちゃったの?」

 「落ち着け橋姫。絶倫王は、その時期は素手で戦っていたのだろう?」

 「うん」

 俺は上目遣いに外道丸を見て、小さく頷く。

 「もしブレスが機能していなかったのであれば、尻のIDチップに音声を送ったのではないだろうか」

 「そんなことが出来るの?」

 お蝶が聞き返す。

 「俺が玉を潰され、チップを埋め込まれた時に、そのような緊急用の機能がある、と聞いた覚えがある」

 「それです!」

 お蝶の顔に光が差した。

 「お、俺、大丈夫なの? 壊れてないの?」

 「あなた大丈夫よ。きっと、その声の主は次郎丸だわ」

 「おにぃたんは、あんまり壊れてないのでしゅ。少しだけなの」

 「えっ!?」

 また涙目になる俺。

 「おコン!! 大丈夫よ。あなたは肛門様から次郎丸の声を聞いたのよ」

 「ナル・ア・ナル神様は次郎丸だったのか?」

 「そうよ、あなた。だから安心して」

 お蝶の優しい言葉も、ショックを受けた俺の耳には届かない。

 「何てこった。次郎丸がナル・ア・ナル神様だったなんて」

 俺は生前も死後も含めて、最大の衝撃を受けていた。

 あの紅白鬼の軽薄そうな、とても尊敬に値しない次郎丸が、ナル・ア・ナル神様だったなんて!

 「あれ? このバカ、何か激しく勘違いしてない?」

 自分の亭主を、このバカって。

 「本物のバカが居たのでしゅ。あの言い伝えは間違っていたのでしゅ。死んでも治らない本物が、此処に居たのでしゅ」

 おコンまで酷くない?

 「いいかい。よく聞いてね種馬君。あの声はナル・ア・ナル神様ではなくて、次郎丸がチップを通して君に話し掛けていたんだよ」

 「あなた、よく考えて。神様がケツの穴から話し掛けるより、次郎丸がケツの穴を使う方が有り得る話でしょう?」

 俺は外道丸やお蝶たちに説明されて、やっと状況が飲み込めて来た。

 「クッソー、次郎丸め! ナル・ア・ナル神様の名を(かた)りやがって」

 俺は怒りで目の前がクラクラして来た。

 「でも、それ以降あのクソ野郎からの連絡は何もないぞ」

 これは自信を持って断言出来る。

 「それも変ね。外道丸、どう思う?」

 「ブレスのスイッチが入れば、俺たちの居場所はモニター出来ると説明を受けたんだが。不祥事がバレるのが怖くて、大っぴらに動けないとか」

 橋姫と外道丸は、顔を見合わせて考え込んでしまう。

 「ウダウダ考えていても仕方がない。難しい事は後回しだ。取り敢えず仲間を増やそう。次郎丸も、そのうち思い出したように接触して来るかもしれないしな」

 外道丸が、みんなにそう告げる。

 「仲間を増やしながら、考えようじゃないか。ここは地獄、時間はたっぷりある」

 外道丸の意見に、みんなも異論はなかった。

どうもありがとうございました。

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