地獄に神は居ないのでしょうか その1
どうぞよろしくお願いします。
「ここが絶倫王の根城か。悪く無いな」
「二人の愛の巣ね。素敵だわ」
外道丸と橋姫が、俺たちが作った根城の周りを一周して、そう感想を言ってくれた。
「最近は三人なのでしゅ」
おコンが、そう言って頬を膨らませる。
「俺たちが居た洞窟より風情があるな」
「外道丸がズボラで、私たちの愛の巣を作ってくれなかったのよねぇ」
橋姫が可愛らしく拗ねて見せた。
「お蝶に教えてもらいながら、時間を掛けて作った自慢の我が家だ」
俺は床に胡座をかき、自分の考えを話す事にする。その手は、おコンの尻尾を撫で回していた。
「しかし、いくら住み心地が良くても、所詮レベル16の小地獄だ。俺はここを出たい。出来れば兵隊にもなりたくない。いっその事、地獄を抜け出して気儘にやりたい」
みんなが俺の話を聞き、呆気に取られている。
「おにぃたんは、本物のバカなのでしゅ」
可愛い顔して、おコンが断言する。
「ここを抜け出すには試験官を倒せば良いわ。でも軍隊を拒否したり、ましてや地獄を抜けるなど出来るのかしら?」
お蝶も眉根を寄せて疑問を口にする。
「俺も昔から、ずっと考えて来たが難しいだろうね」
外道丸までが否定的だ。
しかし俺は、おコンが畜生道へ堕とされた話を聞いてから地獄の番犬には、どうしてもなりたくなくなっていた。
「だからこそだ。きっと獄卒どもは油断している。いや油断してないつもりでいるはずだ。そこが付け目なんだ」
俺は考えに考えたプランを披露する。
「強い仲間を集めてだな。みんな揃って、ここを出る。出たら洗脳される前に、すぐに反乱を起こして門の外へ突っ走る。どうだ?」
みんな、頭を抱えていた。
「安易だわ」
「あなたが、ここまで愚かだったとは」
「おにぃたん、バカ過ぎなの」
「そんな事、誰でも考えるし色んな方法で脱獄しようとした者たちもいる。だが未だに誰も成功した者は居ないらしい。もちろん誰も戻って来なかったばかりか、どうやら魂ごと消滅してしまったらしい」
「えっ、そうなの? 完璧だと思ったんだけど」
外道丸に指摘されて俺は肩を落とす。
「恐らく反乱を起こさせないためにも、ここを出る前に忠誠を誓わせる何らかの手段が講じられるのではないか、と言われている」
閉じられた空間で試験するのも、そのためではないか、と外道丸は言う。
「せめて、俺たちを言いなりにする方法が分かればなぁ」
俺は足を前に投げ出して天を仰いだ。
「情報が欲しいわね」
橋姫が言う。
「どうやって集める? お蝶、お前は情報収集のプロフェッショナルだろう? 何か方法はないのか?」
「内通者を作るか、関係者を拉致って拷問するか。色仕掛けで籠絡するか。どれも無理そうね」
「外の世界と接触出来ないから不可能なのでしゅ」
おコンも諦めたように呟く。
「試験官を締め上げればどうかな?」
「そんな事をしても無駄だな。奴らが情報を持っているとも限らないし、異変を察知されて不穏分子として仕置きされるだけだろう」
「外道丸の言うとおりなのでしゅ」
「はぁ〜。知る人ぞ知る、なんて大見得切っていたけど、針山の管理者ごときの次郎丸は知らないだろうなぁ」
「あなたは獄卒に知り合いでもいるの?」
「次郎丸? 針山の次郎丸の事なの?」
お蝶と、おコンが同時に、そう言った。
「次郎丸の事は、お蝶には言わなかったっけ」
「聞いてないわよ。あなたが特別記念来獄者とは聞いていますが、次郎丸が何者なのかは聞いていません」
「俺の付き人だ」
「あぁ、前に言っていた紅白鬼のことね」
お蝶が納得する。
「その次郎丸は針山の責任者なの?」
おコンが俺の顔を下から覗き込む。
「うん。前は針山のボスだった、みたいな事を言っていたな。おコンは次郎丸を知っているのか?」
おコンがコクリと頷く。
「私が、ここに来る途中に等活地獄をウロウロしていたら、いやらしい目をした獄卒が、俺は針山の次郎丸様だ、て近付いて来たのでしゅ」
困った事があれば俺に聞けと言って、尻尾や耳を触りたがったそうだ。その時に、俺は軍にも事務方で務めた事があると自慢していたらしい。
「どうにか次郎丸と接触出来ないの? おにぃたん」
「無理なんじゃないの?」
俺には次郎丸と連絡する方法が分からない。
「しかし、特来と言われて特別扱いされていたのに、今まで放って置かれているのも解せないな」
外道丸の疑問は尤もである。
「今まで何もなかったの?」
お蝶も怪訝そうな表情をしている。
「う〜ん」
俺は、お蝶と会うまでは一人で戦って来たし、お蝶と会ってからは二人で戦って来た。それらしい事は・・・
どうもありがとうございました。




