やはり亡者には情け容赦ないのです その4
どうぞよろしくお願いします。
それからの修練は、俺を大きく成長させた。
自分が早く動くためには、思考も素早くなければならない。
次々と変化する状況に、素早く対応するため、俺の思考は絵的に、次々と脳裏を流れて行くようになった。ただし、そこに至るまでに俺は数え切れない程、おコンに殺されたわけだが。
もちろん修練は、おコンとだけではなく、お蝶とも繰り返す。
苦無投げや手裏剣などの忍者の技、素手での格闘術、刀と脇差による二刀流などなど。時にはそれらの訓練を、二人を相手にして行ったりした。
もちろん、お蝶も、おコンを相手に本気モードで修練を行った。
・・・お互いに感情剥き出しで。
「さて、そろそろ童子組に挑戦しましょうか」
「いっちょうやるか!」
「おぉ〜!」
俺は元気よく拳を突き上げ、おコンは可愛らしく、丸くした拳を上げて応じる。
狐っぽくて可愛いでしゅ。
「転移!」
転移先では挨拶もソコソコに、太刀を構えて隙なく迎える二人の童子。
「久しぶりに来てくれたね。君たちと戦うのは楽しいよ」
「本当だわ。ワクワクしちゃう」
二人は本当に嬉しそうだ。
よし。思い切って言っちゃおう。
俺は前から考えていた事を言うことにした。
「俺が勝ったら、俺たちと行動を共にしないか?」
「子分になれと?」
「妾になれと?」
「どっちも違うわ! てか、妾ってなんだよ。俺は外道丸と違って、その趣味はないぞ!」
「俺はホモじゃないって言ってんだろうが!!」
「あなた、衆道はやめて!」
「おにぃたん、菊門の危機」
「お前ら、やかましいわ! おコンもそんな言葉を使うもんじゃありません!」
俺はみんなを黙らせる。
「子分とか妾とかじゃなく、仲間として行動しようって言ってんだよ。童子組、受けるか!」
俺は二人に向けて、拳を突き出す。
「俺たちは構わんよ」
「私たちに勝てればだけどね」
「えっ、いいの? ダメもとで言ったんだけど、本当に受けてくれるの?」
「ははは。絶倫王は面白い。この退屈地獄の救いの神だ。一緒に行動するのも面白かろう。さぁ、いつでも来なさい」
「三対二でも良いのか?」
「勿論構わん。合戦に否も応もあるまい」
くぅ〜、カッコいいなぁ〜。
俺は外道丸の格好良さに感動してしまった。
五人は無言になり、じりじりと間合いを取り合う。すでに戦闘は開始されているのだ。
童子組に対して、俺とお蝶が左右に展開し、おコンがやや後方の中央に位置している。
童子組の方は外道丸が俺と対峙し、橋姫は、お蝶と対峙している。
左構えの俺は、時計回りに移動しようとするが、外道丸は巧みに俺の動きを抑え込む。しかし、おコンのスピードを警戒しているためか、今までに無く、やり難そうだ。
間合いはまだ遠い。俺はゆっくりと、背中に隠しておいた脇差を抜き出す。
外道丸は、それを見ても表情を毛一筋も動かさない。
“勝負”
俺は、歩幅狭く腰から下だけで走るように外道丸へ向かった。
左足を踏み込み、右手の脇差を横に寝かせて後ろへ引き、真上に構えた刀を思い切り振り下ろす。
外道丸は下段に構えたまま踏み込み、俺の初太刀を躱す。
「勝ったぞぉ〜」
俺は思わず叫んでいた。目の前には蹲る外道丸、その腹から大量の血が流れていた。
「参った。お見事」
外道丸が痛みをこらえて負けを認めた。
勝負は一瞬でついた。
俺の踏み込が以前より早くなっており、外道丸の太刀の長さが不利になったのである。
「こっちも参った」
外道丸の負けを知った橋姫は、呆気なく負けを認める。
「流石に私でも外道丸抜きで、この三人に勝つのは厳しいわ」
俺たちは得物を仕舞い、戦闘を終える。
「あなた、脇腹が」
俺も外道丸の太刀を右脇腹に受けていたのだ。
「ふぅ、この程度の傷で、よく勝てたよ。奇跡だな」
俺は正直な感想を漏らす。
現世ならば十分致命傷なのだが・・・取り敢えず、奇跡をありがとうございます。ナル・ア・ナル神様。
俺の脳裏に菊の花の上に、菊の蕾に囲まれて神々しく鎮座するナル・ア・ナル神様の姿が浮かぶ。
「外道丸の負けた姿なんて、いつ以来かしら」
橋姫が小首を傾げる。
「それにしても良くここまで強くなった。絶倫王殿は本当に面白い」
「おにぃたん、すごい。一人で外道丸に勝つなんて思わなかったの」
おコンもビックリしているようだ。尻尾が嬉しそうに左右に揺れている。
「さぁ約束だ。お頭殿、俺たちはどうすれば良い?」
暫く蹲っていた外道丸の傷も殆ど癒えて、そう聞いて来る。
「まずは根城に戻って、ゆっくりしよう。そして、お頭はやめてくれ」
俺たちは取り敢えず、俺らの根城に戻る事にした。
本当は、外道丸は手を抜いたんじゃないのか? きっとそうだろう。それでも俺は、新たな仲間が増えたことを素直に喜んだ。
どうもありがとうございました。




