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死んだらみんな地獄へ転生  作者: 一無
第一章 地獄転生編
26/133

やはり亡者には情け容赦ないのです その3

どうぞよろしくお願いします。

 「おコン、強ぇなぁ」

 おコンは結局、俺たちに付きまとい、移動する際にも俺の手を取り一緒について来てしまうようになってしまった。

 今回も強そうな対戦相手に、俺を差し置いて向かって行き難なく倒してしまう。

 「相手がこの程度じゃ、おコンもまだまだ本気じゃないわよ」

 お蝶が解説してくれる。

 兎に角、おコンの速さは尋常じゃない。小さな体で、目にも留まらぬ速さで動き回る。

 可愛い尻尾が巧みにバランスを取っているようだ。その右手に持った短刀が一閃(いっせん)するたびに、対戦する亡者が死んで行く。

 根城に戻っても、おコンは俺たちの側から離れない。平気な顔をして家の中にまで入って来て、部屋の隅で丸くなっていたりする。

 お蝶が追い払おうとしても、素早く森に隠れ気配を絶ってしまう。そして気がつくと俺の横で寝ていたり、すぐ側に居たりする。

 「おコンも食うか? どうせその辺にいるんだろ。今日は鹿肉だぞ」

 おコンは嬉しそうに、尻尾を振りながら姿を現し、家の中に入って来て俺の横にチョコンと座った。

 「やらなくても良いのに」

 お蝶が頬を膨らませる。

 「まぁ、そう言うな。ホラよ」

 俺は骨つきの肉の塊を囲炉裏端から取り上げ、おコンに差し出す。

 「いったらきま〜す」

 えっ? 何? 可愛い。その舌足らずもわざとなの?

 おコンは肉から突き出ている骨を掴んで、美味しそうにかぶりつき、俺は、おコンのフカフカの尻尾をモミモミさせて貰う。

 超極上の毛皮だな。

 「いくら(さば)きたての新鮮なモツでも、もう飽きたのでしゅ」

 ひょっとして、俺たちが捨てていた獲物の内臓のことですか?

 「うーん。おいしぃ〜。生も良いけど、焼いても美味しいのでしゅ」

 しかも生で食べてたの?

 「ケダモノですものね」

 「半分以下なの!」

 「ちょっと聞いて良いか?」

 俺はおコンに聞きたい事があった。

 「良いのでしゅ。おにぃたん、なぁに?」

 可愛い。もう獣姦でもいいや。

 デレる俺の後頭部をお蝶が張り倒す。

 「おコンは、何をしたから畜生道送りにされたんだ?」

 「賽銭ドロボー」

 「ちぃせぇ〜。ちいせぇよ。そんなんで畜生道かよ」

 「だって、お母様とはぐれて大人は怖いし、お腹空いてペコペコだったんだお? そしたら目の前に、お稲荷さんが・・・」

 「出来心で盗っちゃったの?」

 コクリと頷くおコン。

 よっぽど格式の高いお稲荷さんだったらしい。

 結局、母親と生き別れたおコンは生きて行けず、賽銭泥棒の後すぐに餓死してしまい、地獄の入口まで来ると入獄を拒否され、畜生道の刑を受けて、現世へ五十回ほど狐として転生させられ、獣の生活を送っていたとのこと。

 一番辛かったのは(おす)と交尾して、子育てをする事だったそうだ。何故なら畜生道転生者は、思考力は制限されるが、人間の意識と記憶を持ったまま転生させられるからだ。

 おコンの記憶は十五歳の少女のものである。

 「でも中には、人並みの思考を持つものもいたの。鬼退治の猿、犬、雉とか、お金を掘り当てた成金犬とか、恩返しした鶴と亀、狸を火炙りにした挙句、溺死させたウサギと、その被害者の人喰い狸、柿の実で喧嘩した猿やカニ、蜂とか。それにゴリラのガッツ石」

 「それは嘘。絶対嘘だろ。最後のは多分、本物の人間だと思うし、猿とカニの物語には、臼や牛の糞も出てきたぞ」

 にっこり微笑むおコン。

 「私の初体験は、牡ギツネなの」

 俺たちは言葉を失う。

 たかが賽銭だぞ。死にそうな子供だったんだぞ。情け容赦なさすぎだろ。惨過(むごす)ぎないか?

 このシステムを考えた奴は鬼畜? 悪魔?

 激しい怒りが込み上げて来る。

 「私のスピードは、畜生道で(つちか)われたのでしゅ」

 片目を(つむ)ってニコリと笑うおコンに、俺はすっかり同情してしまった。

 「よし仲間にしてやるから、俺の頼みを聞いてくれるか?」

 「はい。喜んで」

 「あなた!」

 なぜか、おコンは丈の短い地獄の刑服を脱ぎだし、ペタリンコな胸が露わになり、お蝶が何故か俺に向けて苦無を構える。

 「何故脱ぐの?」

 「ヤらせません!」

 俺が疑問を口にするのと、お蝶に刺されるのが同時であった。

 「早まるな! つまり俺の修練の相手をしてくれないか。という事だよ!」

 俺は必死に抵抗しながらも何とか誤解を解くが、俺って、どこまで変態だと思われているんだよ。

 「おコンのスピードに付いて行けるようになれば、俺は強くなれるはずだ。だから、お蝶も、おコンの仲間入りを許してやってくれないかな」

 お蝶は、黙って考えている。

 「分かったわ。あなたのためなら我慢するわ」

 「おにぃたん、ありがとう。これからも、よろしくなのぉ」

 おコンが礼を言って、俺にジャレついて来る。俺の首筋や背中を、おコンの尻尾がサワサワと撫でて、とても気持ち良くて嬉しいのだが、お蝶の歯軋りが聞こえて来て、とても怖い。

どうもありがとうございました。

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