焦る次郎丸
どうぞよろしくお願いします。
「奴の居所は分かったか?」
「まだだ。おかしいなぁ。ブレスで位置確認が出来るはずなんだが、ブレスのスイッチが入ってないのかな?」
次郎丸は頭を抱えていた。
祐介がレベル16の部屋に入って三日が過ぎていた。
「中の感覚だと一ヶ月くらいか」
次郎丸は同僚の協力を得て、監視室から祐介を探し出そうとしていた。
同僚とは祐介が入獄した時に、その案内係としての座を争った金ピカ鬼である。
しかし今日は次郎丸も金ピカ鬼も、工事の誘導員のような作業服を着ていた。
「とりあえずバイタルサインでの捜索を続けるしかないな」
「何でIDの検索機能が無いんだよ」
「仕方あるまい。システム全部がやっつけ仕事だからな」
焦る次郎丸を金ピカ鬼が落ち着かせるが、焦りまくる次郎丸。
祐介の事が上に知られたら、次郎丸はどうなってしまうのだろうか。
「クッソー、あの大バカ者がぁ。あの方からは、こっぴどく叱られ、局長の目は誤魔化さないといけないし、踏んだり蹴ったりだ」
「うん。お前が選ばれて心底良かったよ。ありがとなぁ、次郎丸」
金ピカ鬼が、そっと次郎丸の肩に手を置いた。
「クッソー」
次郎丸と金ピカ鬼は操作盤を触って、次々とバイタルサインを切り替えながら、目の前のコンソールパネルを凝視している。
「ブレスが動いていないとすれば入った場所から、あまり動いていないはずだ。あの辺のエリアを、もう一度探して見よう」
無数の亡者の中から一人を特定する事は至難の業である。
二人は、それから長い時間、捜索に全力を挙げていた。
「おっ、これじゃないか?」
金ピカ鬼の半信半疑な声に次郎丸が飛びつく。
ロックされたバイタルサインの詳細情報がコンソールに映し出された。
「これだ間違えない。チップから発信されているIDが裕介のと一致したぞ」
コンソールに映し出されたグラフ、その上の十桁のIDが祐介のものと一致している。
次郎丸は亡者呼び出し用のマイクを掴んだ。
「祐介、俺だ次郎丸だ。聞こえるか?」
グラフに全く反応が無い。
「ブレスレットが機能して無いから、聞こえないんじゃないのか?」
「分かった。IDチップの緊急通信機能を使ってみよう」
次郎丸はそう言うと、祐介のIDチップに緊急信号を送り、通信機能を強制起動させた。
「今の緊急信号でケツに埋めたIDチップが振動して、祐介に注意を促したはずだ。祐介が気づいてくれれば・・・あっ!」
「ど、どうした?」
「そういや、チップを埋め込んだ時に、何も、全く何も説明してないや。てへぺろ」
「・・・・・・次郎丸、緊急通信機能は壊れやすいから、とりあえず要点だけ伝えろ」
次郎丸は金ピカ鬼の、冷たい声のアドバイスに黙って頷いた。
「祐介、戦え。助かりたければ戦うのだ」
ちょっと間を空ける。
「反応があったぞ。もしかしたら聞こえているかも知れんぞ」
「戦うんだ。全力で戦え」
また反応を伺う。
「間違えなく聞こえている。と俺はそう思うぞ! てか愚かな次郎丸のためにも、そう信じたい気持ちでいっぱいだ!」
精神状態を表すグラフに、激しい変化が見られる。
次郎丸は、その反応に力を得て話を続けた。
「この試練は、戦って勝つ事だ。立派な戦士として戦い、勝利するのだ」
その時、監視室のドアがガチャリと開く。
「次郎丸さん、入管の局長がお呼びです・・・何してるんですか?」
顔を見せた丈の短い振袖姿の、若干若作りな鬼っ娘が怪訝な表情を見せる。
血の気が下がり、青くなる次郎丸。
「はひぃ、ただいま参ります」
どうもありがとうございました。




