修練の成果はなんか虚しい その5
どうぞよろしくお願いします。
次の相手は、俺たちと同じ男女の二人組。男女共に刃渡り七十センチほどの太刀を構えていた。
「彼らは強いわよ。私よりも、もっと古いペアだからねぇ」
「戦国時代より古いのか?」
俺たちの会話を聞き、笑い声をあげる対戦者たち。
「あははは。源平合戦の少し前さ」
男の方が答えてくれた。
「えっ。千年くらい前?」
俺は驚いて、思わずそう言った。
「おや、賢い子だねぇ。ここの外の時間では、それくらいだわ」
今度は、お姫様のように髪の長い、胸が小さそうなチッパイ美女が言う。
「相当強いらしいけど、それでも、ずっと出られないの?」
俺は目の前が暗くなる思いがした。
「なぁに獄卒なぞは、いつでも始末できるのさ。ただ色々訳ありでね」
話しながらも相手の二人は、じりじりと足場を固めている。
今回は、お蝶も参戦するようで、腰の後ろに佩いた小太刀を抜いて構え、同じく良い足場を求めて摺り足で移動していた。
俺も腰に差した刀を抜いて身構えるが、目の前の男に対峙しているだけで、鳥肌が立って来る。
“やべぇな。じっくり行っても勝ち目ねぇぞ”
俺は先手を取るために、男に向かって大きく踏み出しフェイントを掛けて飛び込んでみた。
「げふ」
目の前が暗くなり、意識がプッツリと途切れる。
“あれれ?”
目を開けると苦笑いを浮かべるお蝶の顔が見える。
「どうなったの?」
「一太刀よ。あなたは大きく踏み込まれて、左肩から綺麗に両断されちゃったわ。私の方も似たようなものよ。バッサリやられちゃった」
「いやいや。二人共なかなかのもんだよ」
「特に、お蝶は噂通りですね」
「絶倫王も、ルーキーなのに良い太刀筋であったよ。久しぶりに本気で斬り返させて貰った」
成る程。あちらさんは、まだまだ余裕ってわけね。
「もう一丁!!」
俺は大声で、そう言うと気を取り直し、素早く立ち上がって男に対峙した。
今度は刀を左肩に担ぐようにして出足のみに集中し、深々と踏み込む。
小さく鋭く肩口から突き出すように籠手を狙って斬りつける。
「ちっくしょぉ〜」
見事に外されて眉間を割られてしまった。しかも手加減されたので殺されてもいない。
「お見事」
それでも男は褒めてくれる。
「私に傷をくれるとは、並の腕では叶わぬことだ」
男はさっきと同じ場所に立ったまで、手首の擦り傷を見せてくれる。きっと見切りとかいうやつで、表皮の一枚でも斬らせてくれたのだろう。
俺は斬られた、その場に片膝ついて蹲っている。
「貴殿の傷もすぐに癒えるだろう。その間に名乗りを上げさせてもらおう」
男は改めて姿勢を正し、名乗りを上げ始めた。
「我が名は幼名、外道丸、長じて酒呑とも呼称されるが、私は外道丸と呼ばれることを好む。生まれは越後、若年より悪行が過ぎて皆から鬼の子と恐れられし愚か者だ」
「平安時代だよな、ひょっとしたら酒呑童子?」
「その名で呼ばれることは好まない。手の天と書いて手天の方がよい。あの漫画は面白かった」
「えーーっと。俺にはわかりません」
「そして私が外道丸の一の子分で、愛人の茨木童子です。橋姫と呼んでくださいね」
俺は、ついつい橋姫に見惚れてしまう。
う〜ん、すげぇ美人だな。胸はペタリンコだけど。
「あなた橋姫は男よ」
「はい⁇」
お蝶の言葉に混乱する俺。
「だから、娘と書いて男の娘」
「BL・・・か。まぁ、昔は普通にあったことだそうだし、今では色んな団体が小煩いので、俺は偏見は持ってないしね。ないから。ないですから」
「ちょっと待て。誤解されては困るが、橋姫は愛人ではない。私に衆道の趣味はないぞ」
外道丸が、やや慌てたように否定する。
「マイハニー、酷いわ。私を千年以上も弄んでおいて」
「いやいやいやいや。弄ばれているのは俺の方だろう。お前は昔からバイだったが俺はノーマル、ノンケだから! ノンケだからねぇ!!」
「お前ら本当は現代人だろう」
思わず突っ込んでしまう俺。
「いやいや、だから俺はノンケだから」
「変態談義で盛り上がるのは、それくらいにして」
「その表現はいけませんよ? よく考えてね。じゃないと正義の味方さんたちが怒っちゃいますよ」
と俺は正論で、お蝶を叱っておく。
「そんな事より、時間も勿体ないし、戦闘の続きをやりましょうか。お二人の関係は獄内でも有名な事なので、今更アレですし・・・んっ⁉︎」
話の途中で周囲を伺い出すお蝶。
「お蝶?」
「気のせい?」
お蝶が首を傾げる。
「ちょっと待てぇ。俺は襲われてるだけで、その気は無いぞぉ」
「へぇ〜、襲われてんだね。つまりそう言う関係なんだぁ」
外道丸の訴えは、全く受け入れられず戦闘は再開された。
どうもありがとうございました。




