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死んだらみんな地獄へ転生  作者: 一無
第一章 地獄転生編
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亡者を嬲るのはやめてください その1

どうぞよろしくお願いします。

 《パンパカパーン》

 ・・・まるで霧のかかったような白い世界に、軽快なラッパの音が鳴り響く。

 「おめでとうだっちゃ。あなたが一億人目の自殺者だっちゃ。ダーリン」

 手にオモチャのラッパを持ち、虎柄のビキニを着たお姉さんが、そう言いながら俺の右手を引っ張る。

 「はぁ? な、なに? コスプレ?」

 「あ、あれ? この格好で、このセリフを言えばイチコロのはずじゃ?」

 「うわぁ~、角まで再現してるんすかぁ~」

 う〜ん、すごっく可愛いのに非常に残念だ。

 俺は、完全に引きながら呆れかえってしまった。

 「え、えへん。気を取り直して・・・丁度あなたで、自殺による一億人目の入獄者になりま~す。特典として豪華金箔入り熱湯風呂や、これまたびっくり、18金で出来た針山ツアーを体験出来ま~す」

 俺の置かれている状況って、どうなってんの? でも取り敢えず、それは置いておいて。

 「じゅ、18禁の針山について、詳しく教えてください!」

 「18金でメッキされた針山、という事になっていますが金色のペンキを塗ったニセモノです」

 「えっ。詐欺じゃん。それにキン違いだし」

 途端に興味を無くす俺。仕方がないので、さっき置いておいた疑問に話を戻す事にする。

 俺の置かれている状況って、どうなってんの?

 ひょっとしてアレか? 異世界転生で無双、ハーレム、ラッキースケベな鈍感系主人公。的なアレなのか?

 俺はワクワクしながらも自分が置かれている状況が理解出来ず、わけが分からないでいる。

 衣服は黒いTシャツにジーパンという、首を吊ったときのままだが、なぜか靴だけは履いていない。足の裏が小石を踏んで微妙に痛い。

 ここは死後の世界なのだろうか。さっき針山ツアーだとか言ってたし。

 手首に指を添えてみる。

 あれ? 脈があるんじゃね? やっぱり異世界転生か?

 「しゃっちょさ〜ん、(だま)されてはダメ。この女嘘つきだよです。そっちの地獄はダメ地獄だよ。一億人目なんて嘘っぱちだよです。そっちに行っちゃダメ。ボッたくられて尻の毛まで禿げ上がるだよ。飲み放題、()み放題の真・地獄組に来るが良いだよです。生前の苦労を癒すキレイどころも(そろ)っているだよ」

 いつの間にか俺の左手には、純白ビキニのお姉さんが(まと)わりついていた。

 シチュエーションとしては嬉しいんだが、これ、死後の世界的にどうなのよ。

 まるで盛り場の客引き合戦じゃねぇか。

 て言ってる場合か。俺って地獄行きかよ。

 「ちょっと、営業の邪魔をしないでよ。お兄さんは元祖・地獄組に来るんだから。ねぇ~、ダーリン」

 俺は思わず虎パン鬼っ娘に激しく突っ込みそうになったが、あまりにも状況が飲み込めないために、ぐっと我慢する事にした。

 「しゃっちょさ〜ん、こっちの拷問セットは最新式だよです。今なら、このセットで責め苦が二倍、期間も二倍、苦痛は半分、大変お得になっておりますだよ」

 それって責め苦を受ける側として、お得なのだろうか。

 「だから何なんだよ、お前らわよぉ」

 「ほら、お兄さん困ってるじゃない。あんたは引っ込んでなよ」

 「黙れ! この雌ブタが! だよです」

 純白水着は、角を振り立てながら怒鳴る。

 「何ですって~。ムッキー!」

 とうとう俺を放っておいて、(つか)み合いの喧嘩を始めた二人の後頭部を、俺は思い切り平手で引っ叩いてやった。

 「ちょっとは状況を説明しろやぁ」

 更に地面に(うずくま)り、頭抱えている二人の尻に蹴りをくれてやた。

 「お兄さん、情け容赦が無さ過ぎです」

 虎パン鬼っ娘が涙目になって、蹴られた尻をさすりながら上目遣(うわめづか)いに訴えて来る。

 「しゃっちょーさんは、死んで地獄へ転生ね〜」

 「それは薄々気が付いていたが、て言うかそれって転生じゃなくて地獄堕()ちだろ。おっとそれよりお前らは何者なんだよ」

 「しゃっちょーさん、現世から見たら地獄も異世界ね。死んだらみんな地獄へ転生だよです」

 「ようするに、お迎えってヤツか?」

 俺は、純白鬼っ娘の喋りに(いら)つきながらも(たず)ねた。

 「そうです。私が正式なお迎え係で、あのビッチは男に飢えた(だつ)()()です」

 と虎パン鬼っ娘が答える。

 「テキトー言ってんじゃねぇよ! しばき回したろかぁ! その女、嘘つきねぇ。わたしが本当のお迎えさんねぇ」

 「わけ分からんが、言葉遣いが変わって来てるぞ」

 良い加減、ほんと面倒臭さいです。

 「あぁもう面倒くせぇ。ジャンケンで決めたらどうだ?」

 「えぇっ、そんなんで良いんですか? 分かりました。一応、あなたの将来が掛かっているのですが、仕方ありませんね。良いわね花子、ジャンケンで決めるわよ」

 「花子って外人設定じゃないのかよ。せめてキャサリンにしろよ。てか源氏名? いやいや、そうじゃなくて俺の将来って何だよ。聞いてねぇよ」

 一人で騒ぐ俺を無視して、二人の勝負は呆気なく決まってしまっていた。

 そして、このジャンケンの結果で俺の運命があんな事になるなんて、この時の俺は知る由も無かった。

 「おめでとうございます、だっちゃ」

 「もういいって」

 「では案内しますので、ついて来てください」

 訳が分からないけど、取り敢えず虎パンの後に着いて行くとしよう。

 しかし、あまりにも状況が飲み込めない。

 確かに、俺は自殺したはずだ。枝にぶら下がって意識が遠のいた所までは憶えている。

 仕事も上手く行かず、難病を患い、エッチもさせて(もら)えずに彼女にフラれ、ヤケになって遊びまくり、挙句に借金までこさえて哀れ二十二歳の誕生日に俺は首を吊った・・・はずだよなぁ。はぁ自分で言ってて情けねぇ。

どうもありがとうございました。

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