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死んだらみんな地獄へ転生  作者: 一無
第一章 地獄転生編
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修練の成果はなんか虚しい その1

どうぞよろしくお願いします。

 目の前には出現したばかりの、見るからに強そうな丸坊主の巨漢が立っていた。

 お蝶は後ろの岩に腰掛けてワクワクした表情で、こっちを見ている。

 「お主は、お蝶の色かい。そうかい。こりゃ期待しちゃうね。余程の使い手なんだろうね」

 身構えて、じりじりと間合いを詰めて来る。

 「俺は山田豊三郎、お主の名は何と申す」

 「俺は吉田祐介、元サラリーマンだ」

 「えっと、吉田祐介か聞いた名だな・・・確か・・・素手の亡者、歴代最弱の吉田祐介か。お蝶も物好きな事だな」

 おいおい、いい加減にしろよ。前から思っていたけど何の歴代だよ。

 お蝶は座ったままニヤリと笑った。

 「あなた。()っておしまい」

 坊主頭が素早く突っ込んで来た。手にはデカイ棍棒が握られている、しかし。

 “動きが遅い”

 お蝶に比べるとスピードは遥かに劣る。

 「おりゃ」

 俺は気合いとともに振り下ろされる棍棒を躱して、顎先へパンチを打ち込む。

 「あなた格好良いわよ。そのまま殺っておしまい」

 調子に乗って相手の背中へ回り込み、ちょうど腎臓辺りに蹴りを入れて、すかさず離れる。

 俺が居た場所には棍棒が横殴りにされていた。

 「せい」

 今度は横から肝臓へパンチを入れる。

 「ゲフ」

 坊主頭は腎臓と肝臓を潰されて身動き出来ない。

 「ダーリンとどめよ」

 「よっしゃ」

 俺は気合を入れて坊主頭の首へ、渾身の蹴りをお見舞いしてやった。

 坊主頭は無言で(くず)()れ、お蝶が手を叩いて喜んでくれる。

 「覚えておおき。これがお蝶の亭主、〈地獄の種馬、底無しの絶倫王〉吉田祐介様だよ」

 「おい〜っ。恥ずかしい二つ名は要らね〜よ!」

 「その名、しっかり胸に・・・刻ん・・・だ。ガクッ」

 いまわの際に坊主頭が言い残す。

 「お前も、そんなもんを胸に刻んで死んでんじゃね〜よ。何が、ガクッだよ」

 ナル・ア・ナル神様、今日は勝てました。ありがとう。

 しかし虚しい。勝利がこんなにも虚しいものだなんて。ふっ、地獄の種馬? 底無しの絶倫王?

 新たな通り名に気落ちする俺。

 「あなた、何を格好つけてシリアスにポーズ決めてるの?」

 「お前ってさぁ。本当に信長に仕えてたの? 時代、間違ってねぇ?」

 「素手の戦闘は、随分良くなったわねぇ、序破急(じょはきゅう)の感じも(つか)めかけているようだし、そろそろ得物の修練も始めましょうか。ダガーナイフくらいが手頃かな?」

 「ダガーナイフって、だから本当に戦国時代人かよ」

 「ちょっとナイフをイメージして出してみて」

 「へいへい」

 俺はナイフを強くイメージして、教えられた通りに左手のブレスに右手の指を添える。

 ブレスレットをした左手に、モヤっとした何かの感触がする。

 「しっかり握って」

 左手で、そのモヤっとしたものを握りこむと、そこにナイフが出現した。

 現れたナイフは、諸刃になったサバイバルナイフ。以前練習した通りに上手く出すことが出来た。

 「上手く出せたわね。でも戦闘中には片手で瞬時に武器が出せるようにならないといけないわ。しかも相手に悟られないようにね」

 「面倒臭いなぁ」

 それからはナイフを持った構え方だとか、基本的な使い方を教えてもらう。

 これまた、みっちりと時間を掛けて。

 「うーん」

 基本を繰り返し練習していると、お蝶が考え込んでしまった。

 何かまずい事でもしたのだろうか。

 それともアレがバレたのだろうか。すごく気になる。

 数日前に倒した女性亡者に悪戯しようとした時みたいな、酷い折檻を受けるのだろうか。

 「何でしょうか。何かマズイのでしょうか?」

 「ちょっとマズイわねぇ。って、その言い方、また何かやったわね?」

 頭を抱えて(うずくま)る俺。

 「まぁ良いわ。ちょっとこっちに来て」

 どうやら助かったみたいだ。折檻は回避された。

 お蝶が手招きするので、近付くと俺の体をペタペタと触り始めた。

 「何だ? ヤリたくなったのか?」

 調子に乗った俺は、イヤらしくニヤニヤして言う。

 「違うわよ。それは後で。あなたは貧弱だから、この先が難しい・・・うん、肉を食べましょう」

 生前、ヤケを起こすまでは対人恐怖症で、準引きこもりのインドア派だった俺としては耳が痛い。

 それにしても肉って何の肉だろうか。

 「人のか?」

 おい。

 「一部のマニアの間では、ご馳走だそうだが」

 おいおい。

 「あなた、狩りに行くわよ」

 「人をか? 俺、まだ食ったことねぇぞ」

 おいおいおいおい。

 「俺は好き嫌いは少ない方だが、残さずに食えるかな」

どうもありがとうございました。

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