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死んだらみんな地獄へ転生  作者: 一無
実力行使編
127/133

生命の神秘 その7

御免なさい。

書き溜めた在庫が枯渇し新規に書き起こしておりますので自己検閲が甘くなり、内容が益々酷くなる恐れがあります。不愉快ない思いをさせてしまうかも知れませんが今更と思ってご辛抱をよろしくお願いします。

 美紗子は後産も無事に終わって産湯を使った赤ん坊に初乳を与えている。

 裕介はと言うと、その尊い光景を眩しそうに見ている。

 「これが生まれるって言う事かぁ。新しい生命なんだよなぁ」

 「あなたも現世ではこうして生まれて来ましたのよ」

 「俺は両親とは折り合いが悪かったからな。特にお袋とは思春期以降はロクに口を聞いてない」

 「母親はこれからが一仕事なんですのよ」

 「子育ての苦労と申すが苦労じゃないんだわな。可愛い我が子を育てるのは大変じゃけど、大変じゃない。苦労かも知れぬが苦労じゃないわえ」

 おい。なぜ奪衣婆の顔が綺麗に見えるんだ?

 「時には投げ出したくなる事もあるわえ。しかしじゃ。振り返ってみれば全てが大切な思い出なのじゃ。お主もいずれは分かるじゃろ。我が子のためなら命も要らぬと本気で思える事が。閣下達の世代が何故に命を軽んじるが如き戦をしたのかを。我が子や我が家族。我が同胞の命を、我が子孫の将来を守るためなら我が骨肉など惜しいとも思わぬ人の心が。のぉ」

 裕介も何かを感じているように素直に頷いていた。

 「人は。いや人に限らず生物はすべからく命を産み育ててこそ価値があるのじゃ。生物が生命であるが故に途切れさせる事なく育む事こそ尊いのじゃ」

 美紗子も裕介も言葉もなく聞いている。

 その時、ノックの音が聞こえ、ゆっくりと静かに引き戸が開き、静々とお蝶とおコンが部屋に入って来た。

 「おめでとう。美紗子。裕介。そして赤ちゃんも、お誕生おめでとう」

 「おめでとうございましゅなのでしゅ」

 お蝶は会釈でそう言い、おコンは深々と頭を下げて祝辞を述べた。

 「ありがとうございます」

 美紗子も素直に返礼を返す。

 「お蝶、おコン。ありがとう」

 またも涙ぐむ裕介。

 「正直言うと俺なんかに子供ができるなんて現世では考えられない事だったんだ」

 裕介は患った病気のことや上手くいかない人間関係を思い出してしみじみと言った。

 「まだ一人目よ。後二人は仕込んで貰わないといけないんだから」

 「せめて絶倫丸だけでも暴れん坊でいてもらわないと困るのでしゅ」

 「お前ら、今までの良い空気を返しやがれ」

 「シリアス展開は御免被るのでしゅ」

 「まあそうだな。ここは俺たちらしくふざけたノリで行こうか」

 「貴様らうるさいのだ」

 「へ?」

 「誰?」

 「あら大嶽丸(おおたけまる)。御免なさいね。もうお(ねむ)かしら?」

 「大嶽丸?」

 「この子の名前よ」

 「なんだよ、その微妙なキラキラ具合は」

 「全くよ。それに古臭い響き」

 「俺の名は『ハジメ君』だ」

 「ハジメ君。赤ちゃんにして言葉を喋るハジメ君」

 「なんか既視感があるわね」

 「きっとあれでしゅ。あれでしゅが色々面倒なので言いませんでしゅ」

 「ああ、あれか。また微妙な所を突いてくるなぁ」

 「ハジメ君。鬼神の子供は言葉が早いけど、あなたは格別早いですわね」

 「ハジメ君は本当に言葉を理解してるのかしら」

 「ハジメ君が偶然意味の通っている会話をしているとは思えないのでしゅ」

 「貴様ら、何故に俺を呼び捨てにする?」

 「え? ちゃんと君付けで」

 「俺の名は『ハジメ君』だと言ったよな?」

 「あ!  カッコの中に君までが入っている!」

 「おい! 会話の中でどこにカッコがあるかなんて分かるかボケが!」

 「貴様! 黄泉國の大王に向かって無礼千万であるな。俺様の事を呼び捨てにして良いのは、母君たる美紗子ただ一人だけである」

 「あら嬉しいですわね」

 「どうせ俺の子だ。美紗子を怒らせて消魂されるのが怖いからだろ」

 「・・・」

 どうやら図星のようだ。

 そぎゃんこぎゃんで無事に生まれたハジメ君であった。

どうもありがとうございました。

これからも引き続き、ひっそりと活動を続けたいと思っていますが投稿も休み休みになる事があるかも知れません。それでもどうか今後ともよろしくお願いします。

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