生命の神秘 その6
御免なさい。
書き溜めた在庫が枯渇し新規に書き起こしておりますので自己検閲が甘くなり、内容が益々酷くなる恐れがあります。不愉快ない思いをさせてしまうかも知れませんが今更と思ってご辛抱をよろしくお願いします。
「ひっひっふぅ。ひっひっふぅ」
「ひっひっふぅ。ひっひっふぅ」
「ひっひっふぅ。ひっひっふぅ」
三人の馬鹿者が出産部屋でリハーサルを行なっている。
「しかし現代の出産は不思議なものだな。わん」
「こんなんで出産が楽になるとか信じられんでゲス」
「馬鹿野郎! 男は出産に立ち会って、この応援をしないと出産後に奥さんから責められて針の筵で、後々面倒なことになるんだよ」
「事情はよく理解できるけどよ。こんな呪いで奥方様の苦痛が癒やされるのかねでゲス」
「効果が大事なんじゃないわん。こういうことは、やってますよ、というポーズが大事なんだろう。わん。いわゆる建前と言うやつだわん」
「そうそう。男が居ても何の役にも立たんのはにゃんこの出産を見た事があれば誰にでも理解はできるはずだ」
「ああ。それはよくわかるでゲス」
「確かにな。子供を作るのにオスなんて交尾する時以外、全く役に立たないからな。わん」
「母にゃんこが出産して育児に命を賭けて間、オスにゃんこは他のメスに発情してるか、寝てるか食ってるか、しかしてないからな」
「要するにオスにゃんこなんて玉袋分の役にしか立たないロクデナシという事わん」
虚しく落ち込む三馬鹿男衆であった。
そげなこげなで、いよいよ出産当日。
「今夜が山じゃの」
「い、い、いよいよか? 俺は礼拝でもしていた方が良いのか?」
「やめてくださいな。広げた自分の肛門に祈りを捧げる我が夫に見守られながら出産とか有り得ませんわ。それとジロもトクも出てお行き」
「へへぇ」
二人は若干嬉しげに出産部屋を後にした。
「おい。俺一人に看取れってか」
「看取るんじゃなくて立会ですわ。それと妊婦の手を取ったりして励ます係ですわよ」
「俺に出来るかな。ひっひっふぅ。ひっひっふぅ」
裕介は心を落ち着けるように、応援用の息遣いをする。
「それと、その過呼吸になりそうな息遣いはやめてくださいな。私はソフロロジー派ですの」
「え? 礼拝もダメ、応援もダメなんじゃ、俺って種付けだけのオスにゃんこじゃん」
「当たってますわね。世の男なんて女と子供のために金を稼いで家族に貢ぎ続けるだけの生き物ですわ」
「身も蓋もねぇな」
「私は専業主婦派でも有りますの。働かずして食う。これこそ至高かつ究極の食事ですわね」
「おい。せめて家事くらいはやってくれ」
「家事はやりますけど休日の家族サービスに力仕事。子供の教育には協力して頂きますわよ? まあ本音を言えば生活さえ保障してくだされば家にいなくても良いんですが」
「これじゃ男が結婚を嫌がるようになったわけだ。日本の滅びは近いな」
すっかり日も落ち・・・地獄に太陽は無かったですね。
「はぁ〜〜〜」
美紗子は無理にイキまず、体の力を抜くように息を吐く。
「次の陣痛が来たら、力まずにお腹から産道に向けてウンコを押し出すようにするのじゃ。くれぐれも産道を締めるような体全身に力を入れてはならぬぞえ」
出産部屋にはゆったりとした音楽が流れている。美紗子は出産前に散々聞いてリラックスする癖を付けていたので、苦痛により強張っていた体を楽にする。
暫くすると強い陣痛の波が押し寄せてくる。
「ほりゃ。リラックスして下腹へ空気を抜くようにイメージするのじゃ」
「そうじゃそうじゃ。すかしっ屁をこくようなイメージでプスーっと空気を抜くのじゃ」
「貴様は黙っておれ。出産中の妊婦を笑かしてどうするのじゃ」
「いえ。今ので余分な力が抜けましたわ」
「来たわえ。頭が来たわえ。もう少しじゃ股倉の力を抜いて腹から押し出すのじゃ。屁をこくようにスポンとじゃ。スポンと発射するのじゃ」
「クソ婆も笑かしてんじゃねぇよ!」
〈パシ!〉
「出た〜」
裕介がクソ婆の後頭部を叩くのと、赤ん坊が飛び出すのと同時であった。
「ほれ見よ。丸い頭でピンクの綺麗な赤子じゃ」
「ブンギャ〜〜。ブンギャ〜〜。ヴンギャ〜〜」
「おおお。なんと賢そうな男じゃ」
臍の緒の付いたままの赤子を受け取り、すぐさま胸に抱き締める美紗子の目が見た事もないほどに優しかった。その目尻には涙が光っている。
「俺の子だ。俺の赤ちゃんだ! いや。俺たちの赤ちゃんだ! 美紗子・・・」
裕介は言葉が続かず、思わず両手で顔を覆っていた。
どうもありがとうございました。
これからも引き続き、ひっそりと活動を続けたいと思っていますが投稿も休み休みになる事があるかも知れません。それでもどうか今後ともよろしくお願いします。