生命の神秘 その3
御免なさい。
書き溜めた在庫が枯渇し新規に書き起こしておりますので自己検閲が甘くなり、内容が益々酷くなる恐れがあります。不愉快ない思いをさせてしまうかも知れませんが今更と思ってご辛抱をよろしくお願いします。
出産準備に際してジロもトクも美紗子の部屋でオムツをせっせと縫っていた。流石に紙おむつなどは存在しないので赤ちゃん用品は自作するしかない。
最近はクリスタル経済が広まってきたので、日用雑貨などは官給品の物々交換ではなくクリスタルでの購入も増えている。
購入できる物品も衣食住に関するものは随分と充実して来ていた。それに伴い文麿の力も増しているようなのであるのだが。
「おい。こんなもんクリの一つ二つで腐るほど買えるんじゃねぇか?でゲス」
そもそもベビー用品など出回っていないので自分で作るしかないのであるが、地獄では子供が産まれにくいことなど耳の穴からこぼれ落ちて覚えていないのであろう。
「わん」
「まったく。俺たちに暇な時間を与えたくないと言うイビリ根性は気に食わねえでゲス」
「わん」
「おしめの次は産着だとさ。お針子じゃねぇってんだでゲス」
「わん」
「・・・ジロ」
「わん」
「はぁ。お前が教祖の愚痴なんか溢すから日本語を禁止されるんだでゲス」
「・・・わん」
「それにしても、つくづく学のねぇ野郎だでゲス。俺っちなら華麗な英語をペラペラとだな」
「わん!わわん!」
「そんなこたぁねぇよでゲス。立板に水ってやつでゲス」
「わわわんわん!」
「なら喋ってみるが良いでゲス。どうせ口先ばかりで中学英語も出来ない愚か者でゲス」
「わん」
「まあそうだな。俺たちは学校なんざ出てねぇけどでゲス」
「ほう。お前ら犬語で会話が出来るのか。これは面白いな。じゃ今後は二人ともにゃん語で話してみるか?」
「わんわんわわわんわん!わわんわんわん!」
「信じられんな。お前の言い訳や反省など、中国製家電より信用できん」
「教祖様も犬語がお出来になるでゲスか?」
「バカ言え。どうせジロだ。『もう言いません勘弁してください。あれは徳右衛門に誘導されて喋らされたんです』とでも言っているんだろう」
「くーん」
図星のようであった。
「まあ良い。ジロ、罰はこれくらいにしておいてやる。もうじき大事なお客様がいらっしゃるから、貴様らはおもてなしの準備をしろ」
「ありがとうわん。もう生意気は言わないわん」
「取り敢えずお茶の準備だ。この間手に入れた高級玉露をお出ししろ。茶の淹れ方は仕込まれてるよな?」
「へへ。それはもう何度も生死の境を彷徨いながら奥方様に仕込まれてごぜいますでゲス」
「わん!」
「お客様は甘党らしいから、ザラメのたっぷりついたカステラもお出しするようにな」
せかせかと裁縫道具を片付けて、裕介の後をテテテと着いて行くジロとトクであった。
「ほう。これは地獄では珍しい良いお茶ですね」
「このような時のために、手に入れておきました」
VIPをもてなすために、外道丸と橋姫が接客を担当している。
居間のテーブルにはお茶と茶うけのカステラが置かれていた。居間には外道丸、橋姫、美紗子、ひろみちゃん、裕介、河童、それに徹斎が同席していた。
「どうぞカステラも閣下のために手に入れて御座います。何でも甘党でいらっしゃるとか」
「ああ、それは石原君ね。私はそれ程の甘党では御座いませんよ」
「え!?」
裕介はバテレンさんを睨む。バテレンさんはサッと視線を躱した。
「石原莞爾君は大層な甘党で体を壊すほどだと聞いておりましたな」
裕介の正面には二人の男が腰掛けている。裕介の両脇に美紗子とひろみちゃんが腰掛けており、外道丸と橋姫は裕介の左右に立ち、残りのメンバーは裕介の後ろに二歩ほど離れて立っている。
ジロとトクは居間の入り口に、神妙な面持ちで控えていた。
どうもありがとうございました。
これからも引き続き、ひっそりと活動を続けたいと思っていますが投稿も休み休みになる事があるかも知れません。それでもどうか今後ともよろしくお願いします。