バカとバカの喧嘩はタチが悪い その1
御免なさい。
書き溜めた在庫が枯渇し新規に書き起こしておりますので自己検閲が甘くなり、内容が益々酷くなる恐れがあります。不愉快ない思いをさせてしまうかも知れませんが今更と思ってご辛抱をよろしくお願いします。
裕介は、以前にちょっとだけ夢想した事を実現可能か検討してもらうために発議する。
この会議の開催も、もう二十回を数えていた。その間に美紗子の腹も順調に大きくなり、赤児の胎動も日々力強さを増していた。
「どうせ新規に地獄を作るのであれば、亡者も魔族も妖怪も獣人も面白おかしく罪を清算出来ないかな」
「裕介の理想通りには行かんだろうな。キュケケケケ」
「何が問題だ?」
「一つは裕介から聞いた話だと、新地獄はまるで中世ヨーロッパではないか。幾ら何でも大和民族の魂の世界で、それは無いだろう」
「日本にずっと住んでいる異民族はどうなるよ。排除されるのか? それはちょっと差別的ではないか?」
「キョケ。論点のすり替えだな。そもそも、こちらが受け入れようにも日本が嫌いなら相手は、それを拒絶するし、異民族であろうと大和魂を受け入れていれば、魂の帰る場所として受け入れる。そのような魂は大和民族として転生されるし、これは大和民族から他民族への転生においても同じだ。即ち、全くもって差別的ではないと言う事だ。もっとも民族として引かれやすい故郷の地があるから大概の場合、似た世界観を持っていても同じ民族のあの世へ転生する事が多いけどな。あ、それでも大和民族でも自分の民族に対して否定的にすぎると、帰る場所を無くして浮遊霊として狭間へ引き込まれて次元の違う、おどろおどろしい異世界転生を味わえたり、消魂してしまう場合もあるよ」
「ならば新地獄の世界観は思いっきしジャパンな風景に設定すれば良いだろ。要は内容であって装束や景色の違いでは無いのだよ。河童君」
「まあそれはよかろう。でも楽しく罪を清算というのは神のプログラムから却下される」
「ふむ。なら言い換えよう。我々運営側、特に俺様が面白おかしければそれで良い。罪深き亡者どもは、罪の清算が終わった亡者どもの娯楽の道具として、魔族や妖怪どもの玩具になってもらおう」
「キョエ? ちょっと待て。裕介の構想では天国と地獄を一元管理したいのか?」
「まあ設定上、楽しむ側と苦しむ側に分けないといけないもんな。出演者のキャスト的というかモブ的に言っても亡者が皆、苦しむだけの世界観は無理だろうな」
「キュ」
バテレンさんはしばし考え込む。
「確かに天国と地獄を一つの次元で管理することは理にはかなっているんだけど・・・」
「なあ? いけそうだろ?」
「天国でも使っている善人カルテを冒険者カードに改変すれば、罪の清算が終わった亡者は管理できるけど、地獄の亡者どもの管理はどうするよ」
「違うんだよ。冒険者カードはただのオプションで、全ての登場人物にはステータスを持たせるんだ。その内容は善行や悪行の全てが登録されていて、清算された悪行は消えて行くし、悪行を重ねた亡者には悪行が追加される。善行については善行を重ねたら、どんどん追記され続けて消されることはない」
「ほうほう、それは面白い。つまり罪は消えるが善行は積み上がると言う仕組みか。これなら亡者のモチベーションは高まるな」
「だろ? 罪の清算は辛く厳しいが修行を積んでレベルを上げていけば、いつかは全ての罪が消えて完全なる善人が出来上がるわけだ」
「ふむ。ならば天国相当亡者と地獄相当亡者の境は曖昧になるわけか。そして全ての罪が消え去った者から現世へ転生させれば良いと」
「なあ? 完璧っぽいだろ?」
それから裕介とバテレンさんは、他の参加者を置いてけ堀にして、二人だけでじっくりと新地獄構想を練りに練り始めた。
以下、祐介が話しながら書き留めたメモである。
世界分け(一民族、二黄泉)
一民族で元祖地獄組と真・地獄組の古典地獄と
我らの新地獄の二制度を持つ。
現世(変更なし)
黄泉(天国地獄統合型あの世と
古典的あの世の二制度)
種族(配役、全てをステータスカードで管理)
人間
魔物
鬼神
鬼
餓鬼
その他
その時々に応じて配役
妖怪
河童
妖狐
奪衣婆
その他
ゲゲゲ的な奴ら
獣人
牛人
馬人
猫人・犬人・兎人
男女とも可愛い子限定
子供っぽい見かけ
小柄でスリム
豚人
魔物に分類?
心醜くき者
その他
場当たり的に都合よく
役柄
冒険者(剣士やら魔法使いやらゲーム的ななんか)
商人
職人
武人
文人
市民
浮浪者
罪人
“こんな感じかな”
残念ながら裕介にはゲームの趣味はなく、なろう的な期待には応えられないのであった。
裕介は鉛筆を机の上に放り出した。
ノートには意外と几帳面な字で書き込みされている。
昨今のマンネリなろう系転生モノで若者を中心に死後の世界の価値観が作り上げられつつある。その下地に地獄界での布教活動で得た信仰力を注ぎ込めば、小さな地獄は作ることができるらしい。ダンジョンの一層目的なモノ?
「後はプロジェクトマネージャー、設計者、プログラマの確保だが・・・」
「パパ。それはあなたが早く子供を作らないと揃わないわよ」
「ああ聞いたよ。まさか管理者やSE、プログラマは地獄生まれでなければならないとはね」
「ファイヤウォールの鍵としての存在だから、実務は別人でいいんだけどね」
「SEとプログラマの実務は俺がやってやるよ。管理者は裕介か?」
「河童よ、俺にできると思うか? 壊す側なら自信があるぞ?」
「外道丸が適任ね。それか東條でも良いわよ?」
「東條か・・・誰?」
裕介は首を横四十五度に傾げた。
「共産主義者の敵ね。日本のリーダーも務めた軍人さんよ」
「おい! あの東條さんか?」
「そうよ」
「軽く『そうよ』て言うけど、あんな強面の人が、こんな腐った教団に帰依して挙句に、おちゃらけ地獄製作委員会みたいな存在に在籍してくれると思うのか?」
「もう打診してあるわ。『人としての尊厳を捨て去る事ができるか考えさせてくれ』だって。笑えるでしょ。アハハハハハ」
「キュケケケケ」
美紗子と河童が笑っている。
「何がおかしいんだ?」
「考えてごらん。あのマジメ腐った堅物の髭メガネが、ア・ナル神様に御祈りを捧げている様を」
御神体のカンガルーの玉袋に礼拝する元総理大臣であり陸軍大将の東條さん。
「ついでに教祖様と同様の礼拝もさせてみたら?」
「キュハハハハ。奥方様やめてくれ! けつの穴を天に掲げて、その広げた肛門を拝む様など想像したら腑が捩じ切れる」
そう言いながら、河童は地面で笑い転げている。
一人、裕介だけが憮然としている。
一通り笑い合うと美紗子が真顔に戻った。
「バカ話はそれくらいにして、今から緊急議題を話させてもらうわね」
美紗子の顔に殺気が漂う。何やら嬉しそうでもある。
どうもありがとうございました。
これからも引き続き、ひっそりと活動を続けたいと思っていますが投稿も休み休みになる事があるかも知れません。それでもどうか今後ともよろしくお願いします。