ああ勘違い その4
どうぞよろしくお願いします。
「現世では、地獄のことが色々伝えられているが、どれも正しいものはないからな。俺様が説明してやるよ」
次郎丸は結構、良い奴なのかも知れない。
「等活地獄とか黒縄地獄とか、八つの大地獄があってな、全部が殺しや、盗み、性犯罪とか罪全般の清算をする所なんだが、責め苦の内容が違うんだ」
次郎丸の説明では、
一 等活地獄
二 黒縄地獄
三 衆合地獄
四 叫喚地獄
五 大叫喚地獄
六 灼熱地獄
七 大焦熱地獄
八 無間地獄(現在使用禁止)
これらの大地獄があり、それぞれの大地獄には責め苦の辛さ別に、レベル1から16までの小地獄があるらしい。レベルが高くなるほど神経も敏感になり責め苦も残酷になるそうだ。で等活地獄は体を切ったり、針で刺したり、殺しあったりする責め苦を科す所だそうだ。
ちなみに各地獄は八欲毎に分かれているわけではない。各カルテ毎の罪の重さに応じて共通で使用される地獄もあるそうだ。
「心配すんな。等活地獄の針山は俺の元職場だ。俺が良いように言っておいたから、他の亡者達よりは優遇されるだろうよ」
「ありがとうなぁ。よろしく頼むよ」
「レベルは7で、辛さは真ん中くらいだがな」
「えっ⁉︎ 痛いの?」
「ま、まぁな。一応地獄だし」
「行きたくねぇ」
「そう言わずに」
「嫌だ」
「まぁ物見遊山的な気分で軽くだな」
「嫌だ。行かね」
そんな事を話しつつ、等活地獄の入り口に着いた俺は、次郎丸に従って、ここでも行列の先頭に割り込み、門の横の窓口にカルテを渡す。
「地獄は初めてですかぁ?」
「はぁ、初めてですが」
「カルテは責め苦が終わるまで、こちらでお預かりしますので、お帰りの際に受け取り用の窓口で、お受け取りくださいね」
「はい」
「では、ごゆっくり」
「嫌です」
「えっ⁉︎」
「ゆっくりしたくありません」
それはそうでしょう。地獄にゆっくり滞在したい酔狂な奴は居ないと思うのだが。
俺は、等活地獄の門をくぐる。
「何じゃこりゃ⁉︎」
門をくぐった瞬間に、俺の服装が古い映画に出て来る囚人が着るような服装に変わっていた。しかも紅白縞柄の。
「幾ら何でも、紅白はないだろう」
「バカ野郎、特来のお前用にワザワザ特注したんだぞ。文句言うなよ」
「センス悪い」
等活地獄の中は大きな広場になっており、混雑する程ではないが、多数の亡者が行き交っていた。
その広場の中央には、巨大な円筒形の建物が建っており複数のドアがある。
そのドアを亡者が出入りするたびに、中から叫び声が聞こえて来る。どうやら小地獄への入口になっているらしい。
亡者達の服装は男女とも、俺の服と同じ格好であるが、色は真っ白である。
あっちが良かったな。
俺は恨めし気に次郎丸を睨む。
「次郎丸」
その時、俺たちの後ろから声を掛けてきた鬼がいた。
「お・・・おう、久しぶりだな」
「お久だねぇ」
二人は俺を無視して内輪話しを始めてしまった。
「お前、今何やってんの? 針山を追い出されたって本当か?」
「い、いや。追い出されたんじゃないんだよ・・・ある方の特命で色々動いてんだよ」
次郎丸は、あまり話したくないように見えるが、本当は友達とは違うのかな?
「おい。俺はどうすりゃ良いんだ?」
「ああ、そうだったな。こっちの門からだと左回りで五番目のドアだな。間違うなよ。左回りで五番目だぞ」
「わーったよ。なんだよ。俺の世話係じゃねえのかよ。俺一人で行くのかよ。まったくよぉ」
俺はブツクサ言いなが、左手の方へ歩いて行った。
しばらく話を続けていた鬼が、怪訝な表情をする。
「おい次郎丸、お前の亡者が左に歩いて行ってるが良いのか?」
「良いよ。あいつは針山だからレベル7の部屋なんだよ。左回りで五番目のドアで合ってるよね」
「いやいや、そうだけど。そうじゃなくて、お前の亡者は左に歩いて行ったんだぞ。左回りじゃなくて左手の方へな」
「んっ? 左手側・・・右回りか?」
「そうそう」
「右回りで五番目は・・・レベル16の部屋だ!」
「そうそう」
次郎丸の額に汗が滲み出て来る。
慌てて、祐介の後を追うように走り出す。
「お〜い!! そっちじゃねぇ!! その部屋には入るなぁ〜!!」
次郎丸は走りながら大声で怒鳴る。
「祐介〜!! そっちじゃねぇ!!」
どうもありがとうございました。




