ネガティブな作家終演
きっと殺したくなくてほっとしてるんじゃないか。
私は落ちたナイフを見てそう感じた。
まあ物の気持ちなんて分からないけど。
視線をまた彼に戻す、
目をそらしてる間に
彼の体の痣や傷が消えていた。
(いつの間に!?・・・でもこれが彼の本当の姿)
ふふっ。
やっと、私を見てくれるんだね。ありがとう。
彼は私の腕の中で微笑んだ。
貴方みたいな優しい人が作家になれば
あの人も笑ってくれるのかな?
彼の純粋な笑みを見て、急に寒気がした。
(離れなきゃ)
離れようとしても、彼の掴む力が強くて離れられない。
至近距離のまま彼は耳元で呟いた。
もし貴女が捕まって私達と同じ作家になれば
彼が生きてる未来へ行くでしょう。
此処は私達の・・・彼の人生の追体験コーナーですので。
お気を付けて。
パッと手を離され、私はその場で尻餅をついた。
(いてて・・・)
改めて謝ります。先程は申し訳ございませんでした。
少しいえ、相当病んでいました。
でも貴方のお陰で少し心が晴れました。
見てくださいあんなに太陽の光の差し込みを邪魔をしていた草木が消え、光がまた差し込んできましたよ。
言われて気づく、そういえば抱き締めた時から
暖かくて明るくなってたような・・・分からないけど。
言っておきますがこれはチュートリアルでしかありません。
貴方みたいな未来からの訪問者は、一人じゃなかった気もしますが・・・別にそこはどうでも良いでしょう。
彼は光に照らされながら両手を広げて
幸せそうに笑った。
「自作小説の「解放宣言」読みまーす!
呪いに犯され忌みの魂は解放を求めた。
でも方法はわからない。だからとあるシスターに聞いた。
人は人の幸せを祈れない。だからもし他人の幸せを祈れる人が現れたのなら、清らかな救いの運命だと思いなさい。ありがとうと伝え。呪いに蝕まれずに本心で接しなさい。
それが貴方にとって、呪いの解放宣言になるでしょう
。僕は久々に心から笑った。じゃあ貴方にもありがとう。と言うよ。数年後~解放宣言、今ここに宣言する!
さようなら、忌みの魂よ。ようこそ普通を求めた魂よ」
一呼吸をする。
「ありがとう救いの勇者。君こそが新たなる私の・・・いや僕の救世主だ!!!」
彼は楽しそうに、小説を読んだ。
まるで彼自身の事を当てはめている様な話だった。
でもそれは憶測でしかない。実際の所は作者しか知らない事だろう。
でもなんで最後一人称を僕に変えたんだろう?
でもあの人が心から笑えるならそれで良かった・・・のかな?
そう思った時後ろから現れた擬似な図書館にまた引きずり込まれた。
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行ってしまいましたか。
私もそろそろ寝るとしますか。
すみません。ご主人、止まらない作家、魔に落とす作家。
私は先に逝きます。
ありがとう。
もし彼女が失敗したら、また呪われるかもしれませんが
その時はその時です。
今は幸せのまま逝かせて貰いますよ。
襲い来る睡魔に身を委ね、目を閉じ地面に倒れた衝撃で
胸ポケットから、彼と二人の男と一人の少年と綺麗な女性が写った写真が地面に落ちた。