お茶会
せっかくなので祭祀さんも交えて、七人でお茶をすることにした。
聖女の役割について、まだ分からないことが多すぎるから話が聞きたい。
祭祀さんは聖職者扱いなので、私がお茶に誘ってもいいらしい。
祠とお城の間にある庭園に、テーブルと椅子を用意してもらった。
こういう手配の指示はニコラスが気付いたらやってくれている。若いのにできた子だよ。
お茶菓子だけでなくサンドイッチや一口サイズのコロッケみたいなのもあって最高。付け合せに焼いた芋とかアスパラガスとかもあって最早ご飯。勿論有り難く食べさせていただく。リアムやギルバートもモリモリ食べてる。
「まさか聖女様と同じテーブルにつく日が来るとは夢にも思いませんでした」
年配の祭祀さんはしみじみと言った。
「でも今年聖女召喚することは決まってたんですから、お仕事柄絶対会えたじゃないですか」
「一目お会いできればと思っておりましたが、このように言葉まで交わすとは望外の幸運です」
聖女ってやっぱり大層な身分なんだね。
祭祀さんは元文官で、早期退職後に祠を守る現在の仕事についたそう。他の祭祀さんも転職組ばかりらしい。祭祀ってセカンドキャリアなんだ。通りでおじさんばかりな訳だ。
詳しく聞くと、祭祀ってお給料がほとんど無いんだって。名誉職だから。その為他の仕事で貯蓄してからなるんだって。やば。
祠を祀り、手入れし、次世代に繋ぐことが使命らしい。
祈りの祠は六十年に一度しか使わないけど、その時使えなければ魔物がめっちゃ出てきちゃうんだもんね。大変だ。
ちなみに祭祀さんは私が召喚された時、最前列にいたらしい。知らなかった。
これから全ての祠を回るから、あの部屋にいたおじさん一人ひとりを訪ねる旅にもなる訳だね。すべてのおじさんと会えるね!別に嬉しくないけど。
「そういえば、次どこ行くってもう教えてもらえるの?」
ファイブに聞くと、ニコラスが地図を見せて教えてくれた。
次は王城から一時間くらいの所だって。
暫くは滞在中のお屋敷から行ける範囲らしい。その後は西方の主要都市。
「リアムのいた領地はどこ?魔物がよく出るんなら早く行きたいよね」
リアムの家の領地は国の北の端だった。
北側は他国と接しておらず、一面森らしい。魔物がうようよいる危険な場所で、黒の森と呼ばれている。
リアムの実家と他二家で、広大な森から出てくる魔物を食い止めているという。領地三つ分にまたがって広がる森ってめちゃくちゃ広いじゃん。大変そう。
だけど黒の森近くの三つの祠はかなり後の順番だった。
「森より魔物がたくさん出てくる場所がこんなにあるってこと?やばくない?」
「ご安心ください。他の領地では滅多に魔物など
現れません」
「えっなら何で先に森周辺潰しとかないの?」
どういう基準で回る順番を決めるのかと祭祀さんに聞いてみたら、祭祀さん達が口を出せる問題ではないらしい。
「言ってしまえば、政治的思惑が絡むのです」
アレックスが言う。
どの領地も、早く自分のところに来てほしい。
順番を決めるのは貴族の委員会らしいけど、結局は高位貴族の領地や納税額の多い地域、豪商が集まり多額の寄付金を出す街など発言力のある所が先になり、また主流派の派閥優先らしい。
本当に政治だな。駄目な方の。困っているところから先に、とか効率よく全て早く終わらせるために、とかじゃないんだ。
「実際は今も被害があるんでしょ?」
「報告は騎士団から上がっているでしょうが、結果を見る限りあまり参考にされていないようですね」
とアレックス。それはどうなの。
「うちも他二家も、黒の森の防衛ラインを守ることに注力しているので遠く王都の政治にまで手が回らないんです。でも聖女様のご来訪の順序については予測しておりますので、お互い連携し、聖女様に来ていただくまでしっかり戦う準備はできております」
リアムの爽やかな笑顔が辛い。
「ちょっと私達にできること考えよう」
みんなの目を見て言うと、若者たちは頷いてくれた。