魔法について
話が長くなりそうだったからか、いいタイミングでエリンさんがお茶とお菓子を用意してくれた。
温かい紅茶と数種類の小さな焼き菓子。
ここの焼き菓子本当に美味しいんだよな。いいバター使ってそう。
給仕してくれるエリンさんに会釈すると目が合って、お互いにだけわかるように笑ってくれた。嬉しい。
「魔法ってみんな使えるの?」
「ほとんどは大なり小なり何らかの魔法が使えます。私は身体強化のみですが、ギルバートは炎を使った攻撃魔法が得意です」
アレックスが言う。
「おう、火力なら多分俺が一番だ。まあ直接攻撃だけで、罠とか混乱とかえぐい効果攻撃はニコラス様が得意だけど」
ギルバートが言うとニコラスがいやにきれいな笑顔になった。
「騎士団演習でのことを未だ根に持っているんですか。たまたま不意打ちがうまく行っただけですよ」
この二人、演習で戦ったんだ。
「パーシヴァルは?」
「僕は医術と治癒魔法を組み合わせたものを学んでいます」
「パーシヴァルの家は代々治療士が多く、医術や治癒魔法の研究支援をしているんです」
ニコラスが補足した。
魔法って色々種類があるんだな。今出てきたのは身体強化、攻撃魔法、罠、混乱、治癒と。
「聖女の使う魔法みたいなのはあるの?」
聖女といえば回復魔法ってイメージなんだけど。
「聖女様は祈りの儀式を行うだけですね。歴代の聖女様それぞれの祈りの作法の記録やお作りになったアミュレットが遺っています」
ニコラスが教えてくれた。彼の家は代々歴史資料を保管しており、特に聖女関係の記録や遺物を管理しているらしい。
「え?皆違うことしてたんだ」
手を合わせてただお祈りすればいいのかと思ってたんだけど。
何か作ったりしないといけないの?
「聖女様は皆様、独自の様式で祈りを捧げられるそうです。舞踊や唱歌、呪文等をお使いになった記録が残っています」
そうなんだ。私も何かしなきゃいけないっぽいな。まずい。
「ニコラス、その記録とか遺物って、私が見せてもらうことはできる?」
「聖女様関係の物は最重要クラスの取り扱いなので、閲覧申請から許可まで二週間ほどかかるかと思います」
まじか!ちょっとニコラスの実家に行って見せてもらえたらなーとか思ったけど駄目だな。
そもそもこの建物の二階から出してもらえないから無理な話か。
「聖女の祈りに準備が必要ならもっと早く教えて欲しかった」
「最初の祠に行った際、歴代の聖女様の遺された痕跡が見られるそうです。祈り巡りの最初と最後は王城の祠と決まっているのですが、一度目は身一つで祈りを捧げ、旅の最後に訪れた際にアミュレットを奉じる決まりのようです」
ちょっとぶーたれて言うと、ニコラスが詳細を説明してくれた。ニコラスごめん。
ちなみにアミュレットとは破魔のお守りのようなものらしい。
私に作れるのかな。
「二つ目以降の祠については一度しか訪れませんので、予め用意いただくこととなっています」
「ありがとう。それなら見てから考えることにする」
アミュレットか。何かを祈るときに使うっていうと絵馬やお守りなんかをイメージするけど。自分で作るとなるとなぁ。神に祈るわけでもなさそうだし。
何にしろ、明日は初めての聖女のお仕事だ。
乗り切れるかなぁ。もし聖女の力がないってなったらどうなるのかな。打首とかにならないよね。やだな。
何とかなるといいな。
その夜は目が冴えて中々眠れなかった。