内儀候補
「はじめまして、本日はよろしくお願いします」
会ってみたいなぁとは言ったよ?
言ったけども、こんな急に集合させてもらわなくても良かったです。
昨日旅の前の最後の祠の儀式を終えて、二日休みを挟んでいよいよ旅立ちだ。
と思ったら、今日はファイブの内儀候補達とお茶会をするという。
私の「会ってみたいなー」が拡大解釈されてすぐに会いたいとなった様子。いやいや。
急な展開で驚く。
というわけで貴族のお嬢様方と初対面。
皆自分のペアのファイブと同じテーマカラーのお洋服を着てくれていて、わかりやすくて有り難い。
一人ずつファイブから紹介された。
アレックスのお相手は、ハリのあるカーマインレッドの生地のワンピースが似合うイザベラさん。
意思の強そうな瞳が印象的だ。
挨拶するとき、睨まれているかと思うくらい目をじっと見られた。
このペアはアレックスがイザベラさんに引っ張られてそう。
ニコラスから紹介されたのはナタリアさん。
この二人は高貴な感じで洗練されている。
薄紫の胸下切替ワンピースのナタリアさんは優しげな笑顔だったけれど、社会人経験から一筋縄では行かない雰囲気を嗅ぎ取った。
ギルバートの隣りにいるのはグウィネスさん。
ペールブルーのオーガンジーを重ねたワンピースを着た彼女は妖精のようだった。可愛い。
でもギルバートのエスコートはあんまり丁寧な感じじゃなくて、おい妖精をもっと丁重に扱えと思った。
パーシヴァルのペアはポーリーンさん。
はっきりしたカナリアイエローのワンピースを纏う彼女は緊張している様子だった。
パーシヴァルが自然とポーリーンさんを気遣っていて、何だかいい雰囲気。
可愛いカップルじゃん。
リアムが伴っているのはライラさん。
深緑の服を着た彼女は、いつも元気いっぱいなリアムとは対象的にしっかりした大人っぽい女性だ。
ちょっと意外な感じ。
リアムのお相手は小ちゃくて可愛い小動物系の女の子を想像してた。
以上五組のカップルを紹介された私。
え、これ私いる意味ある?
もうすぐ旅が始まって長期間会えなくなるんだから、皆デートとかしといた方がいいのでは。
お茶会の進行や貴族女性との仲良くしかたなんて分からないから困ったけど、ニコラスとライラさんがいい感じにリードしてくれて和やかに皆でお話できた。
しばらくして、サロンルームから中庭に出ることになった。
いつもはファイブの誰かがエスコート役という感じで私についてくれるけど、今は皆相手の女性がいるからどうしよう。
あっちをほっぽって私に来られても困る。
と思ったら、壁際で護衛していたブレントさんが自然に私についてくれた。
さすが騎士団長。気が利くぅ。
全員カップルの中で私だけぼっち状態から脱して、少しほっとした。
いや、皆可愛いカップルでいいんだよ?
でもいつも私だけに構ってくれるファイブにもやっぱり大切な人がいるんだなぁと思うとちょっと寂しいというか。
中庭で何となく数人で話す感じになると、イザベラさんが一人で私のところへやって来た。
「聖女様、少しだけ二人でお話させていただけませんか」
挑むような目で見られる。
何の話だろう。
庭の隅の花壇の前に二人で移動する。
「アレックスのどこが不満足か、お教えくださいませんか」
覚えやすいようにファイブと婚約者は五十音表で同じ行の文字から始まる名前になっています。
アレックス
イザベラ
ニコラス
ナタリア
ギルバート
グウィネス
パーシヴァル
ポーリーン
リアム
ライラ
よろしくお願いします。