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魔素過多中毒

「おはようございます!」


翌日、リアムは元気いっぱいに挨拶してくれた。

胸に抱えていたものを吐き出してすっきりした様子。よかった。


今日はアレックス、パーシヴァル、リアムの信号機組が出勤。

パーシヴァルから妊娠出産の話ももう少し詳しく聞きたいし、リアムの領地と森周辺のことについても話したいし、忙しい。


会議室で、まずパーシヴァルの話から聞くことにした。

アレックスとリアムは聖女が短命という話も昨日の馬車での出産についての話も聞いていないから、いきなりの話にびっくりしていた。

けれど聖女の寿命についての話はどう転ぶかわからないので、詳しく説明はしないでおく。


「出産時の死亡事由について、家のものに聞いてきました」

詳しく説明してくれたパーシヴァルの話は昨日の話と大筋は同じで、目新しいものは無かった。

やっぱりこの方面は難しいかな。


「出産によって母体の寿命が縮む件について、一つ興味深い事例を父が知っていました」

おっ。

「父が担当した魔力無適合症の女性が妊娠した際、胎児が育つにつれ母体に魔素過多中毒の症状が強く出たそうです」

何か専門用語たくさん出てきた。

全然分からないから一つずつ聞いていく。


魔力無適合症というのは、生まれつき魔法を全く使えない人のこと。

この国では、使える力の強さに違いはあれど、ほとんどの人が何らかの魔法を使えるらしい。

その素質が全くない人のことで、人口の1パーセントほどの比率で生まれるそうだ。

遺伝ではなく、また日常生活に特に不便はないため、大して気にされないという。


魔素過多中毒は成長期の子どもが魔力の成長に体の成長が追いつかない場合の症状で、めまいや息切れ、倦怠感、爪が脆くなる、味覚がおかしくなるなど様々な不調が伴うらしい。

魔物の血を浴びたり黒の森に入ったりすることによっても、同じ様な症状が出る人がいるとリアムが教えてくれた。


パーシヴァルのお父さんの患者さんは、妊婦が魔力を持たず胎児が大きい魔力を持っていたため中毒症状が出て、妊娠継続が危ぶまれるほどだった。

けれど薬や魔法を使って母体を保護し、その上少し早めに帝王切開でお産することで母子ともに無事だったという。

胎児の父親の魔力が強かったことが魔素過多中毒の一因と考えられるらしい。


「魔素過多中毒で死ぬ事例はありませんが、そのような妊娠をもし繰り返すなら、母体に相当の負担がかかると思います」

パーシヴァルはそう締めくくった。

なるほど。

ちょっとそれっぽい話だ。


しかも魔素過多中毒の症状って、つわりに似てない?

食欲不振とか嘔吐とか気持ち悪いとかのつわりの症状に紛れて中毒症状が出たら、妊婦本人にしたら全部普通のつわりだと思うんじゃないかな。

もしパーシヴァルのお父さんがその患者さんをただのつわりと診断してたら、魔素過多中毒の薬や魔法は使われず、大変なことになっていたかも知れない。


聖女は魔法を使えない。

魔法のない世界から来た聖女は当然魔力ゼロで、パーシヴァルの言う魔力無適合症なわけだ。

そしてこの世界の騎士と結婚し、子を産む。


「もしかして貴族って魔力が強い?」

「必ずしも強いとは限りませんが、比較的強い者が多いです」

アレックスが答えてくれる。

「じゃあさ、聖女の騎士って魔力強い人が選ばれるとかある?」

「聖女様の騎士は戦闘能力も必要ですので、強い魔力があれば当然プラス評価になります」

とアレックス。

「今の五人はどうなの?強い方?」

「魔力は量コントロール共にギルバートが飛び抜けています。次いで俺、ニコラス、パーシヴァル、リアムの順です。他の貴族と比べ水準は高いと思います」

なるほどー。

魔力強い人が何だかんだ聖女の騎士に選ばれるわけだ。

ピースが揃った感じがするな。

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