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「ふーっ」


ニコラスとギルバートが図書室から出て、侍女のカーラさんが来てくれた。

やっと一息つけた。怖かった。


「聖女様、今日はもうお休みになりますか?ご気分が悪いのでは」

カーラさんが私の顔を見て言ってくれる。

確かに身体が震えそうだけど、でもこのままじゃ、明日ファイブと祠に行くなんて無理。

もう少し考えを進めないといけない。


「聖女が旅を終えた後、誰とも結婚しないってのは無理なんですか」

ブレントさんに聞いた。

ブレントさんは難しい顔をする。

「聖女様の結婚相手は聖女様の後ろ盾となります。身分を保証し、衣食住を整え、聖女様に豊かな生活を提供するのが役目です」

なるほど。

私はこの国には家もないし貯金も仕事も無い。

友達も頼る相手もいないし、この屋敷を放り出されたら夜寝る場所も無い。

結婚しなければどうしようもないってことか。


「住み込みで働ける所を紹介してもらうとか」

「聖女様だと知られれば人が群がるでしょう。拐かされ何をかされるやも知れません」

それも無理なわけね。

「聖女様の騎士の面々は、それぞれ聖女様を妻に迎えて十分な生活をできるだけの家の者ですし、皆素晴らしい若者です。何を不満がありますでしょうか」

はー!

さっきの流れでわかるじゃん!


「子どもを産みたくないんです。誰が相手でも関係ない」

そもそも元の世界でももうすぐ高齢出産の年齢でハイリスク。

人生設計には無いけど万一出産するなら設備の揃った病院でできれば無痛分娩で、とか思ってた。

それをこんな知らない国でなんて無理。

しかも過去の記録を見ると、多分私が死ぬまで産まされるんじゃないの。


過去の聖女は、妊娠出産を繰り返して身体が弱って亡くなったんじゃないか。

他の女性より明らかに多い子どもの人数、寿命の短さ。

聖女の子どもの利用価値。

これだけ揃えばそうとしか考えられない。

社交に煩わされず何不自由ない暮らしって言うけど、それは閉じ込めて自由を奪われていたんじゃないの。

私よりずっと若い女の子が、聖女として奉られた女の子が、そんな目に遭っていたのだとしたら辛すぎる。

涙が出てきた。


「聖女様、ひとまずお部屋に参りましょう。お召し物を整えます」

カーラさんがそっとハンカチを渡してくれた。

もう今日はグダグダだ。


「明日は早朝の出立です。今日はゆっくりとお休みください」

ブレントさんが部屋の前まで送ってくれた。

晩ごはんは体調が悪いと部屋で一人で取らせてもらうことにして、もう誰にも会わなくていいようにした。



一人で布団の中で考える。

問題は二つ。

一つは聖女の寿命の短さ。

もう一つは旅を終えた後の聖女の生活。


明日も祠に行かなきゃいけないから、急ぎなのは寿命について。

仮説は二つ。

祠の地下でのビリビリが生命を削る説と、結婚後子どもを何人も産んで身体が弱る説。


今まで三回やった感覚としては、あのビリビリで生命を脅かされることは無さそう。何となくだけど。

立ちっぱなしで疲れる感じはあるけど、苦しいとかヤバそうとかは無いんだよな。

まぁ感じられないくらい僅かな影響が積もり積もって、という可能性はあるけど。

今のところ、祠を回り終える前に亡くなった聖女はいないし、魔物被害で困ってるんだから地下の儀式はやらないといけない。


では出産で短命になったのか。

大家族スペシャルとかで七人八人子どものいる家族は見たことあるけど、でも普通に考えたら短期間で何人も出産したら身体がガタガタになって寿命縮みそうだよね。

この国の医療技術がわからないけど、周産期医療はどんな感じなんだろう。

出産自体が命に関わることはそりゃ日本でもあるけど、もしかしたらこの国ではもっと危険なのかも。

明日パーシヴァルに聞いてみよう。


ずっと考えていると眠れなくなるので、後は明日の自分に任せて全て忘れて寝ることにした。

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