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「どこの者だ」

小さい物置?みたいな部屋の簡素な椅子に座らされてこのセリフ。いやいやあんたこそ誰?

男は多分四十代。

グレーの短髪にがっしりした身体、制服ぽいものを着ている。警備員?大きいし怒った顔してるしこっち威圧して来るし、正直怖い。

ドアに近い所に男が立っていて隙がない。

こんなスパイ映画みたいな展開困るんですけど。

無理だ。白状しよう。

「聖女なんです」

「は?」

男は目を少し大きくして私の顔をよくよく見た。

この世界の人たちは二次元に近い美形ばかりだから、どう見ても私はこっちの人間ではない。

見ろ!このふっつーの顔を!今日は身支度もしてもらってないからすっぴんだし。

「馬鹿を言うな。どう見ても年齢が行き過ぎている」

「失礼だな!本当に聖女です」

「聖女を騙ると罪が増えるぞ」

「もう!ファイブの誰かを呼んでください」

「ファイブとは何だ」

「あっ、五人組の若い男の子です。一人は多分アレックスって名前で」

いっけね、キラキラファイブって私の造語だわ。

男は顔を顰めた。

「お前のような不審者を会わせる筈がない。少し待っていろ」

外から鍵をかけられて部屋に残された。窓も小さいし、逃げられそうにない。

男は私の着替えなどをいつも手伝ってくれている女性を連れて戻ってきた。

私の顔を確認してゴソゴソ二人話している。そうだよ、聖女ですよ。

てか年齢が行き過ぎているって!失礼極まりないわ。あっでも十代の想定ぽかったもんね聖女。もしかして歴代最高齢なんじゃないの私。

内緒話が終わり、衝撃を受けた様子の男が私の椅子の前に跪いた。

ほーらー、だから言ったでしょ!

「大変失礼しました、聖女様。何とお詫びして良いか」

「そうでしょう。大変傷つきました」

「申し訳ありません。お部屋へ案内致します」

あっ駄目だ、キラキラファイブに引き渡されちゃう。

「ちょっとこのままお話を聞きたいんですが」

跪いたままこちらを見上げる男と目が合った。近い。

てかめちゃめちゃかっこいいじゃん。厳つめの男前。

このところ一回り以上年下の若者としか触れ合っていなかったから、年上の美丈夫にドキドキしちゃう。

「どういった事でしょうか」

「私、話し相手がさっき言った五人組しかいなくて」

「はい」

「そちらの女性も、いつも良くしてくださるんですが会話はしてくれないんです」

「聖女様の身の回りの世話をする者と聖女様の職務をお支えする者、役割が別れておりますので」

「あなたが今話しているのはいいの?」

男は困ったような顔をした。イケオジを困らせるってキュンとするな。

「本来ならば許されません」

「おかしくない?何で五人だけなの。せめていつもお世話になってる女の人達とは話したいし、こんな扱いされて不信感があるんですけど」

ちょっと怖いけど言ってやったぞ。

本当は不信感があるんじゃなくて不信感しかないんだけど。

「聖女様は話し相手をご所望ということですね」

「五人組以外の人達とも普通に交流したいだけです」

「それは難しい。アレックス様初め聖女様の騎士の方々は、あなた様と常に行動を共にし、お守りするのが役目です」

キラキラファイブは騎士だったのか。知らなかった。

いつも一緒にいたけど話とかお茶とかしかしてないから、チヤホヤ係かと思ってたよ。

「彼らは家格、能力、人品に優れ、聖女様をお守りする為にこれまで厳しい研鑽を積んでいます。不足は無いかと存じますが」

「そういう問題じゃないって言ってんだけど。話くらい他の人ともさせてよ。こんなんじゃ友達もできないよ」

「聖女様が生涯を沿う騎士をお決めになれば、以後は多少面談も緩和されるかと」

「生涯を沿う?」

「聖女様は代々守護騎士と婚姻するのが伝統ですので」

はぁ?

あのキラキラした若人たちの中から結婚相手を決めろって?

「バカじゃないの」

「聖女様を強引な婚姻からお守りするためです」

「聖女と結婚にどんな関係が?」

「王が聖女様を第二妃として無理矢理娶り、聖女様が病み伏せ天変地異が起こったと故事にあります。そのような悲劇を防ぐため、聖女様自らが伴侶をお選びになれるよう騎士を配置し配慮するようになりました」

要するに結婚させてもいいメンズを選り抜いて聖女の騎士とし、その中から聖女が選んだ男と結婚させるってことか。

だからイケメンが皆チヤホヤしてくれたんだな。

そして勝手に他の人に惚れても惚れられても困るから、私は囲い込まれてたってこと?うーん。

「結婚するつもりがない場合は?」

男は何を言っているんだ、と言わんばかりに目を瞬いた。

「そんなことはありえません。あなた様は女性としての幸せを手に入れるべきお方です」

そういうことじゃないんだなー。

元よりモテないし、歴代彼氏は二人だけいたけど現在は恋人なし歴五年目で、ダラダラ日々過ごして特に差し迫った結婚願望が無かった訳よ。いきなり多分十代か二十歳前後の男の子と結婚は無理でしょ。てか相手が可哀想すぎるでしょ。

大体女としての幸せって何よ。ジェンダーや男女観についてこの人に話すのも無駄だろうけどさぁ!

「もう結構です。部屋に戻ります」

「畏まりました」

イケオジだけど頭は古いなこの男前。

跪いていた男が立ち上がると見上げるほどデカい。

手を差し出しエスコートされる。

悔しいけどドキドキすんだよなぁ。やっぱり若者とは出してるフェロモンの量が違うんだよなぁ。

男にエスコートされ世話係の女性に後ろにつかれ、結局一時間もしないうちにお部屋に戻されたのでした。

登場人物名前

リチャード→アレックス

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