メイドさんと
「という訳でお邪魔します。こっちのをこれで包めばいいですか?」
正面に座っているメイドさん達に聞いた。
三人、いわゆるメイド服を着た女性たちだ。
年齢は十代、三十代と思われる同世代、少し上の五十代くらいと思われる方。
「まさか聖女様に手伝っていただくなんて、滅相もないです。私どもでやっときますから」
一番年長の方が恐縮したように言うと、同意して若い二人もカクカク頷いた。
「私のワガママで皆さんのお仕事を増やしてしまっているので、せめて一緒にやらせてください」
笑顔で言い切って椅子に座ってしまう。
「いつもお世話になっています。ありがとうございます」
とりあえずお礼を言っておく。メイドさんとは普段すれ違うこともなく、お礼を言う機会もなかったから。
お名前を伺うと、メアリさん、イラさん、ドナさんと教えてくれた。
いつも午前中は洗濯や主な部屋の掃除など毎日同じことをして、午後はあまり使わない部屋の掃除や道具の修繕、窓ガラス磨きなど、テーマを決めて毎日は出来ないことをしているのだという。
今日の午後の仕事をメイドさん皆で分担し直して三人の時間を捻出し、手伝いをしてくれていると教えてくれた。
皆さん本当にありがとうございます。
三人は手元も見ずに、話しながら無駄のない動きで次々とお菓子を包んでいく。
めちゃくちゃ早い。
確かに私の手伝い、いらなかったかも。
まぁ気持ち気持ち。
お話しながら、私も手を動かす。
この屋敷のメイドさん達は、王城のメイドさんからの選抜メンバーらしい。
道理で皆さん仕事ができる。
聖女の屋敷のメイドに選ばれることは名誉だそうだ。
一番年長のドナさんは明るく次々と教えてくれた。
洗濯のコツや掃除で気をつける箇所など色々と聞いていたらとても楽しくて、気付いたら全部の包装が終わっていた。
「やったー!お疲れ様でした!」
メアリさんイラさんドナさんとハイタッチ。
厨房チーフに、多めに焼いた分をメイドさん達用と私用と貰った。やった。
そしてまた会議室に戻らなきゃ。はぁ。
気付けば日も傾いている。何時に終わるかな。
みんな定時とかあるのかな。今日は残業?
ファイブはいつも晩ごはん一緒に食べた後に解散してるけど、晩ごはんまでは仕事ということでいいかな。
普段はコースで順番に出てくるものを頂いてるんだけど、今日はその時間がもったいないな。
チーフにそそっと近寄る。
「あの、大変申し訳ないんですが、今日の晩ごはんは手で食べられるような簡単なものにしてもらえないでしょうか」
現在魔法の申請書類を職業を超えて皆で書いていて、時間がなくて殺伐としている状況をお伝えした。
「いつも手が込んでいて盛り付けもきれいで美味しいご飯をありがとうございます。でも今日は、手早く食べられるものを頂けると有難いんです」
チーフがニッと笑った。
「仕方ねえなぁ、特別に作るよ」
「ありがとうございます!」
会議室の人数がわからないのでまた連絡しますとお伝えして、オマケにチョコレート盛り合わせも貰って元の部屋に戻る。
ブレントさんは厨房の前で待っていてくれた。
「また会議室に戻ります」
「お疲れ様です。騎士団からは二人、向かわせました」
「ありがとうございます」
よかったよかった。ご飯前に申請書類だけは終わるかな。
ブレントさんは私を見てふっと笑った。
「聖女様は仕事熱心でおられる」
いやお菓子包むのは聖女の仕事とは違いそうだけど。
「貴方様のお心遣いを皆嬉しく思っています」
ブレントさんはいうとすぐに背を向けて先に歩きだしてしまった。
何だか急に褒めてくれるじゃん。
もっとたくさん褒めてくれてもいいんだけどな。
大きい背中を追いかけて会議室に戻った。