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硬貨廃止

 俺は硬貨を削らせないための根本的解決案がある、と国王に言った。

「勇者タツヤ! そんな解決案が存在するのか!?」

「存在します」

「教えてくれ! どのように解決するんだ!」

 俺は元住んでいた世界のお陰で、このことを思いつくことが出来た。

「硬貨を廃止しましょう」

「な、何を言っているんだ!? 硬貨を廃止してしまったら、何を硬貨の代わりにすると言うんだ!」

「紙です。つまり、硬貨を紙幣にします」

「紙幣?」


 次の日にはオルタファイズ帝国内の硬貨は全て廃止され、硬貨は紙幣へと変換された。これなら紙幣を削っても、お金にはならない。しかし、偽札なら簡単に作れてしまう。

 そこで国王は、オルタファイズ帝国の国旗の絵を紙幣に印刷することを提案した。

 国王によると、国旗は国王にしか印刷出来ない魔法の一つらしい。国王自らが、魔法で紙幣に国旗を印刷。これによって、国王にしか偽札は作れなくなる。こういう仕組みが完成した。

 だが、紙幣という呼び方は国民にはあまり定着しなかった。よって、金貨の価値のある紙幣を『金貨』、銀貨の価値のある紙幣を『銀貨』、銅貨の価値のある紙幣を『銅貨』、とそのまま呼ぶようになった。少し不思議だ。

 硬貨廃止に(ともな)い、金貨を削って入手した金粉で荒稼ぎをしていた悪人達は資金源を失った。

 また、俺が完成させた防音結界魔法は、魔法陣と詠唱が国内限定で発表され、オルタファイズ帝国は大いに活気づいた。これにより、他国はオルタファイズ帝国に防音結界魔法の魔法陣と詠唱の開示を求めた。これには国王も(うな)ったが、俺の進言で渋々開示した。もし開示しなかったら、世界大戦になりかねない。

 紙幣制度は賛否両論あったものの、他国も真似して硬貨を廃止。紙幣だけの国が増えた。が、国旗が国王以外も印刷出来てしまう国も存在し、そういう国が紙幣制度に変えると、偽札が大量に流通し出していた。最終的にインフレーションになり、新通貨発行で何とか収まった。その後は紙幣制度を廃止して、硬貨に戻す国も続出。

 この一件以来目まぐるしい変化が起こったが、一番良かった変化が仲間だ。

 スミスは正式に俺の仲間となった。最初は怒っているだろうとヒヤヒヤしたが、思っていたよりは怒っていない様子。安心した。

「これからも勇者の役に立ってやるよ。冒険者ギルドも、最近は面白い依頼がないし、ちょうど良い」

 スミスの顔が少し赤いが気のせいだろう。

「これからよろしく。スミスがいると依頼が早く片付くし、良いコンビになると思います」

「ああ、よろしくな」

「もしかしたら、これから邪神龍と戦うかもしれないけど、気にしないでね」

「邪神龍!? あの邪神龍か?」

「はい」

「最近は邪神化する龍はいないんだろ? なのになんで邪神龍討伐をするんだ?」

「この世界の頂点に立ちたいんです」

「変わってるな」

「スミスさんも変わっている方ではあると思いますよ」

「サラだ」

「へ?」

「これからはサラと呼べ。仲間なんだろ?」

「わかりました。では、サラは俺をタツヤと呼んでください」

「わかったが、敬語もなしだ」

「わかり......わかった!」

「それで良いんだ」

 こっちの世界では敬語の方がしっくりきていたが、仲間に言われたら仕方ない。サラには、敬語ではなくタメ口で話すことになった。

「じゃあ、サラ。俺に防御魔法を教えてくれないか?」

「構わないぜ。どんな防御魔法を習いたい?」

「そうだな。どんな攻撃も防ぎきる防御魔法とか」

「そういう『THE最強』みたいな防御魔法は存在しないな。防音結界魔法を生み出したタツヤなら、作ることは出来そうだが」

「いや、防音結界魔法は下級収納魔法の魔法陣と詠唱から、収納魔法の部分を引き抜いて、それから工夫を加えただけだからな。ただ応用しただけで、別に俺がすごいわけじゃない」

謙遜(けんそん)すんなよ! オルタファイズ帝国の英雄って称号を国王から賜った勇者は、史上でタツヤともう一人くらいしかいないぜ?」

「もう一人? 誰なんだ、そのもう一人って?」

「オルタファイズ帝国が初めて召喚した勇者であるユウキ・ツダっていう諸刃(もろは)の勇者」

「諸刃の勇者?」

「その名の通り、自爆系統の魔法を得意とする勇者だ。相手に絶大なダメージを与えられるが、自分もダメージを受ける。この世界では諸刃の勇者は雑魚として扱われてきたけど、勇者ユウキは違った。勇者ユウキの防御力は人類史の中で最も高いと言われる。そのお陰で、自爆系統を使いこなして魔王を十七体討伐。魔王を十七体討伐しているのは勇者ユウキだけ。この記録は、今なお破られていない」

「諸刃の勇者ってすごいんだな」

「いや勇者ユウキがすごいだけだ。諸刃の勇者で、防御力が高いなんて奇跡に近いことだから」

 諸刃の勇者か。一撃一撃が命懸けだが、かなりダメージを与えられそうだ。もし今存在するなら、一度戦ってみたいものだ。

 それに、魔王を十七体以上討伐すれば歴史に名を残せる。あと十六体。頑張ってみよう。

「あ、タツヤ。諸刃の勇者と戦おうなんてことは考えんなよ。並の勇者なら一撃で即死らしい」

 怖い怖い! 本当に諸刃の勇者自身も命懸けじゃねぇか! 諸刃の勇者がいても、戦うのは避けよう。

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