表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/18

英雄と化す

 さて。ここで他の勇者達、特に龍聖勇者が魔王ガルドを倒せなかったのかを説明する。

 俺は魔法詠唱は、英語でしなければならないと言った。ここで諸君に質問する。君達が覚えている英語は、本当に英語なのだろうか?

 例えば、アイスクリームとかソフトクリームと呼ぶものがある。実はこれは和製英語だ。和製英語ってのは、海外じゃ通じない英語で、日本が勝手に作った英語のことだ。ソフトクリームは英語だと『soft(ソフト) serve(サーブ) ice(アイス) cream(クリーム)』と呼ばれている。つまり、ソフトクリームまたはアイスクリームは英語ではないのだ。

 攻撃にスピードを上乗せするために行う魔法の詠唱は『accele(アクセラ)rator(レーター)』。アクセラレーターを和製英語で言うならば、『axel(アクセル)』だ。そう、龍聖勇者達はスピードを上乗せするために魔法を掛けたが、詠唱を『アクセラレーター』ではなく『アクセル』と言ってしまったのだ。龍聖勇者達は和製英語を英語と認識していた。

 対して俺は、正しく『アクセラレーター』と言った。

 オルタファイズ帝国が魔王ガルドを脅威だと思い込んだのは、召喚した勇者を全員魔王ガルドの元へ送り込んだからだ。もし召喚した勇者を最初に魔王ガルドの元に送り込まず、他の敵の元に送り込んでいたら、オルタファイズ帝国は和製英語の存在に気づけたかもしれない。

 でも、オルタファイズ帝国のミスは仕方ない。なぜなら、日本に和製英語があることを気づくことは難しいからだ。これはオルタファイズの失敗ではなく、勇者自身の失敗だ。ちゃんと英語を勉強しておけ。

「ふあぁ」

 あくびをしてから、魔王ガルドが座っていた椅子に近づく。あの椅子には、いわく魔王討伐の(あかし)があるはずだ。その証を持って帰らないと魔王ガルド討伐の証明は出来ない。

 それより、俺は和製英語の存在をオルタファイズ帝国に言うことはない。言ってしまったら、史上最恐の魔王を倒した勇者、ということにはならないからだ。史上最恐の魔王を倒した勇者ということにしておけば、俺は最強の勇者となる。諸君も、このことを外部には漏らさないでほしい。

 俺は、魔王ガルド討伐、と記されたカードを(ふところ)にしまってから帰路についた。


 魔王ガルド討伐の証を持ち、オルタファイズ帝国の首都に戻っていた。スナイダーさんは泣いて喜んでいた。

「タツヤ君!」

「スナイダーさん!」

「よく魔王ガルドを倒したね! 龍聖勇者でも倒せなかったのに」

「弱かったですよ。余裕でした」

「すぐに国王に伝えましょう! タツヤ君はオルタファイズ帝国の英雄だ」

 スナイダーさんに連れられて、オルタファイズ帝国の国王の元に行った。

 オルタファイズ帝国第二十七代国王カルロ・オルタファイズ。召喚者を除けば、オルタファイズ帝国一の戦闘力の保有者らしい。

(なんじ)、タツヤ・ミウラよ。貴殿の功績を褒め称える。『オルタファイズ帝国の英雄』の称号を与える」

「ありがたき、幸せ」

「英雄・タツヤにはオルタファイズ帝国の永住権も与え、オルタファイズ帝国からのモンスター討伐依頼を受けて頂きたい。後者については、強制ではない」

「後者、お受けします。オルタファイズ帝国直属の勇者にしていただきましょう」

「よかろう。史上最恐の魔王・ガルドが倒された報は、諸国に流す。貴殿はどのような家に住みたい?」

「どこでも構いませんが、強いて言うなればオルタファイズ帝国の首都にしてほしいです」

「首都だな? 了承した。付き人としてスナイダー、そして数人の使用人を付ける。明日には、もしかすると貴殿にまた魔王討伐を依頼する。覚悟しておけ」

「はい。襲撃にも対応出来るでしょう」

「ハハハ。では、スナイダー。英雄の付き人、(まっと)うしろ」

「ハハァ! お任せくだされ」

 よし! これでオルタファイズ帝国の英雄となった! これから、俺の理想とする異世界ライフを送る。

 スナイダーに案内され、オルタファイズ帝国首都の立派な家に住むことになった。かなり広い。異世界ライフ、素晴らしい。

「英雄だ! 英雄様がいるぞ!」

 民間人が俺の姿を見て騒ぎ立てる。それにつられて、周囲も英雄だと騒ぐ。

「龍聖勇者ですら倒せなかった魔王ガルドを討伐してくださった、オルタファイズ帝国の英雄だ!」

「あの魔王ガルドを!? 数百年倒されていなかった史上最恐の!?」

「英雄様は、史上最強の勇者だ!」

「これからもオルタファイズ帝国をお守りになってくださるぞ!」

「我らオルタファイズ帝国人は安泰だ!」

 少し大げさだが、悪い気はしない。英雄、良い響きだ。魔王を一掃すれば、もっと知られた存在となる。まずはこの異世界で、地位を確立しなくてはいけない。魔王ガルド討伐で、地盤は固まった。あとは、魔王ガルド討伐以上の偉業を成し遂げる。

 邪神龍(じゃしんりゅう)討伐だろう。邪神龍はドラゴン族の頂点に立つ神龍が、邪神化した状態だ。ここ数千年は姿を現してはいないが、現れたらすぐに討伐をしよう。世界の勇者となれるぞ。

 俺三浦竜哉の戦いはまだまだ続く。終わるわけがない。この異世界で俺が頂点に位置するまで、この物語は終わることを知らないのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ