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オルタファイズ山脈の魔王

 一人で旅立った俺は、自分の実力を確かめたい。首都では俺は魔法を使うことを禁じられていた。ここら辺の森は人はいないし、魔法の試し撃ちをしてもバレることはないだろう。

 詠唱の発音がうまくいくか緊張しつつも、両手を拡げて樹木に向けた。

Fire(ファイア)ball(ボール)!」

 すると、大型の火の玉が飛び出て、樹木が炎上した。

「うおっ! マジで魔法使えたぜ!」

 炎が燃え広がないうちに、魔法で鎮火させた。生きていて魔法を使える日がくるとは、夢にも思わなかったぜ。

 この森はオルタファイズ山脈の(ふもと)。もう少し進むと、魔王ガルドの半径百キロメートル以内に突入する。召喚された奴にしか入れない領域だ。

 身体能力はかなり上がった。一年の鍛錬の成果だ。絶壁も軽くよじ登れる。出力を上げれば、空中を飛ぶことも可能だ。

 それにしても、オルタファイズ山脈の頂上はかなりかなり高い。魔王ガルドは山頂にいるから、辿り着くまでが大変だ。魔法を使えばすぐに着くが、スナイダーさんいわく空中を飛ぶ魔法は魔力の消費量が半端ないらしい。魔力の無駄遣いは命取り。これから俺が倒しに行くのは史上最恐の魔王だからだ。念を入れておいて損はない。

 それにしても、龍聖勇者もバカだよな。あんな簡単なことを間違えて、魔王ガルドに倒されるとは。俺は龍聖勇者と同じミスはしない。魔王ガルドを倒すために、頑張って勉強をしてきたんだ。それに、異世界では死にたくない。

 ずんずん前へと歩みを進めていると、前方から生物反応がした。

「前方の者! 誰だ?」

「クックック! オルタファイズ帝国の新たな勇者よ。この先の魔王ガルドの元へ向かっているのだろう?」

「何者だ!?」

「魔王ガルドの配下・魔人アルシュナルドだ」

「何用だ?」

「ただの監視だ。お前が魔王ガルドの元へ向かっていることを魔王ガルドに伝えるためだけ。素通りして構わない」

「背面から襲うのか?」

「俺は監視役だ」

「そうか」

 魔人といっても、普通に話せるんだな。魔族も案外悪い奴らばかりではないのかもしれない。といっても、ゲーム感覚で魔王ガルドは倒させてもらうけどね。

 さて。結構登ってきたけど、そろそろ魔王ガルドの元に到着するはずだ。崖から顔を出すと、巨体が、大きく立派な椅子に座っている。あの巨体が、魔王ガルドなのだろう。魔王ガルドの周囲には、(しかばね)がたくさん転がっている。その一つの屍の服装が、龍聖勇者だった。龍聖勇者すらも、魔王ガルドに負けたのか。力を過信しすぎるとは。

「ユウシャ......ブッコロス!」

 なっ! 目から光線が!

 ギリギリ避けて、スナイダーさんが言っていたことを思い出した。魔王の半径二百メートルに近づくと、こっちに攻撃してくるんだった。

「危ねぇ」

 魔王を倒すために超スピード攻撃が必要なのは、二百メートル離れたところから攻撃するからだ。遅い攻撃だったら、魔王に攻撃が届く前に魔王の力で消滅してしまう。

 試しに、石を魔王に向かって投げたらどうなるか。足元に落ちていた石を拾い上げて、投げてみた。すると、わずか数秒で石は木っ端微塵となった。魔王ってだけでかなりの力を持ち合わせているんだな。

「次はFire(ファイア)ball(ボール)!」

 スピードの遅いファイアボールはどうなるか。魔王ガルドは一瞬で、ファイアボールを弾きかえした。

 なら、サンダーはどうだろう?

Thunder(サンダー)!」

 ふむ。魔王ガルドは、サンダーも無効化してしまったか。では、そろそろ魔王ガルドを倒すことにしようか。

 龍聖勇者が魔王ガルドを倒せなかったのは、魔王が強いからじゃない。龍聖勇者が弱いからだ。といっても、力が弱い弱くないの問題ではなく、バカかバカかじゃないかだ。龍聖勇者は、バカだったのだ。

 俺はバカではない。慎重にいけば、魔王ガルドなど倒せる。まずはスピードを上げた攻撃だ。

Fire(ファイア)ball(ボール)

 最初は普通のファイアボール。そのファイアボールに、スピードを上げる魔法を掛ける。それから、火力を上げて魔王ガルドに向かって放ってみる。

 駄目か。あの程度の攻撃では、魔王ガルドは倒せないか。なら、もっと超スピードにしないと。

 火球のスピードを魔法でどんどん上げていって、魔王ガルドに向けて撃っていく。こんなんじゃ魔王なんて倒せないし、魔王ガルドを倒すにはスピードだけじゃなくて威力も必須だ。

「ブッコロス! ブッコロス!」

 魔王ガルド......セリフが怖ぇー! すぐに殺さないとまずい。

 (サンダー)なら威力も高い。サンダーにスピードを上乗せして撃ってみるか。

 サンダーにスピードを上乗せし、放ってみると魔王ガルドに雷が直撃。かなりダメージを受けていたから、そのすきに間合いを詰めて剣で片腕を切り落とした。

「グアアァ!」

「魔王のくせに、いっちょまえに痛みを感じてんのか」

 初めて片腕を切り落とされたのだろう。つまり、初めて出会った敵が俺だということだ。俺を恐れているんだ。さあ、とどめだ!

 心臓部を狙った一撃。魔王ガルドは蒸発した。

 魔王がダメージを受けて恐れおののいている時は、魔王に近づいても攻撃されないのか。勉強になる。

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