ゴーレムキング
俺は目の前にいる魔人・アルシュナルドを倒すために力を込めた。地下ダンジョンを脱出するためにかなりの力を消費したから、こいつを倒すには最低限の魔力消費でなくてはならない。
最低限の魔力消費。だったら、あれしかない。俺は防音結界魔法の魔法陣を構築、展開させて詠唱をした。そして、アルシュナルドの周囲から空気がなくなる。アルシュナルドは藻掻くが、肺には二度と酸素が送られなくなった。数分後、絶命した。
「最低限の魔力でアルシュナルドを倒せたな」
サラはアルシュナルドの脈を確認する。「脈はない。アルシュナルドは死んだようだ
魔族に脈など存在するのか気になったが、今は速攻でゴーレム族を殲滅だ。
「サラ。ゴーレム達はどこにいるんだ?」
「魔力反応を探れば良いんじゃないか」
「ああ、魔力反応か」
俺は周囲の魔力反応を感じ取って、膨大な魔力反応とその周りに小さいながらもかなり驚異的な個体反応も感じた。ゴーレムの群れである。
「見つけたか?」
「バッチリ見つかった。そこまで向かおう」
群れの元まで向かってみると、国王から聞いていた通りの姿のゴーレム達がいた。その数、おそらく幾千にもなる。こういう群れになら、爆発系統の魔法をぶちかますのが一番だ。魔力が惜しいが、仕方ない。
爆発系統の魔法の魔法陣はやや複雑だ。構築に時間を要する。詠唱も難しいが、早口言葉は得意だから大丈夫だと思う。
まずは両手を指揮者の指揮のように動かして、空中に魔法陣を描いていく。最後に、ゴーレムを一匹も逃がさないために、ゴーレムを追尾する第二波の爆発も起こすべく魔法陣に細工をした。
その魔法陣をゴーレムに向けてから、こっそりと詠唱。爆発が起動した。
「サラ、結界魔法!」
「お、おうっ!」
サラの結界魔法によって何とか自爆を防げた俺は、魔力反応を確かめた。ゴーレムキングだと思われる魔力反応のみ、爆発に耐えたようだ。
「ゴーレムキングと一騎討ちをする。結界の剣をくれ」
俺は剣を預かり、光学迷彩のようにして姿を景色に溶け込ませた。高速移動をしてゴーレムキングの周囲を回転し、一気に刺す!
しかし、予想外にもゴーレムキングは俺に明確な攻撃をしてきた。
「痛っ!」
俺はゴーレムキングから一旦離れて、ため息をつく。もしかすると、ゴーレムキングは俺の魔力反応を見ていたのかもしれない。ただ、俺が教わったのは、ゴーレムは魔力反応を見ることが不可能だということ。それはゴーレムキングでも同じだと聞いた。なぜ魔力反応を見れるんだ。
いや、俺の熱反応を見ている可能性もある。検証のために、まずは魔力を押し殺して、光学迷彩で近づいてみよう。
「ぐあぁぁ!」
無理無理無理無理! だが、これでわかった。ゴーレムキングの奴、魔力反応を見ているわけじゃない。多分だが、熱反応を見ているんだろう。これの対策は、俺の熱を遮断すれば良いんだ。つまり、アルミニウムの壁を目の前に構築。アルミ壁をサラに頼むことは出来ない。俺が即座に魔法陣を展開した。
アルミ壁を動かし、俺はゴーレムキングと間合いを詰めて剣で首を斬った。だが、機械だからまだ動くことが出来ていた。だから、内部から機械をえぐりだして、配線を全て切ってやった。死んだな、と思うとゴーレムキングのコアを取り出す。コアは普通の魔物とは違い、硬い。しかも、ゴーレムキングの狂暴性を生み出す魔法陣が刻み込まれている。新発見だ。
ゴーレムのコアはゴーレムキングに比べると柔らかいから倒す時にいつもコアが壊れていたらしく、どんな魔法陣がゴーレムのコアに刻み込まれていたか謎だった。だが、ゴーレムキングのコアは硬いから魔法陣がはっきりとわかる。この魔法陣は、狂暴性を生み出す魔法のものだ。これも国王に報告する案件だな。
「んじゃ、ゴーレムキングの素材を回収して王都に戻ろう」
「ああ、わぁってる」
俺達はゴーレムキングの破壊した素材と、爆発を食らっても消失はしなかったゴーレムの素材を回収すると元来た道を引き返すために振り返った。
「結局、ゴーレムの群れのみならずロックドラゴンも倒しちまった。これは国王からの報酬を増額してもらわないといけない」
「タツヤはせこいな」
「勇者は律儀なんだぜ」
帰路につくと、険しい山道を進んでいった。足取りは重いが、今日中に家に帰りたかった俺はものすごい早さで道を移動していく。サラは俺に着いていったため、早々に疲れたと言い出した。
「疲れたぁ!」
「サラ、早く家に帰りたいだろ? 頑張ろうぜ!」
「ちょっと休もう」
俺はどうしたものかと腕を組んで、それから中級収納魔法を開いた。
「サラはこの中に入っていろ。俺が家まで運んでいってやるから」
「助かる」
魔力消費量はマジで半端ないが、帰りの道中でロックドラゴン以上の魔物と出会すことはない。
そういえば、ゴーレムキングと言えどロックドラゴンよりはるかに弱かったな。などとゴーレムキングをバカにしながら、垂れる汗を拭って懸命に足を前へと出していった。やがて、見慣れた景色が目に飛び込んできた。