地上を目指す
地下ダンジョンに落とされてからかなり経過した。
ダンジョンの階層と階層の間には階段がある。その階段は、かなり安全だ。というのも、モンスターは階層を移動することはあまりないからだ。その階段を拠点とし、今日の朝飯を調達することにした。
「私も着いていこうか?」
「いや、拠点で待っていてくれ。モンスターが近づいてきたら、結界を展開しろよ。拠点を守る役目は任せた」
「ああ、わかった」
俺はサラに拠点を託し、周辺にいるモンスターに近寄った。一番近くにいたのは蜘蛛型のモンスターだ。正直、うまそうな気がしない。素通りをしたいが、それも無理そう。ということで、狩ってみる。
魔法弾を生み出し、それを圧縮。ミリ単位の魔法弾にして、前に繰り出した。その瞬間、蜘蛛は破裂した。
「グロい......」
蜘蛛の死骸の上を飛び、またうまそうなモンスターを探す。すると、小型のドラゴンのようなモンスターを発見する。最初はドラゴンだと思ったが、よく観察すると大型のトカゲモンスターだと理解した。
頭を突き抜けば良いか。背中に飛び乗り、拳で頭を叩いた。そうしたら、すぐに絶えた。
「弱いな」
トカゲの死骸を回収し、拠点に戻った。
「美味しそうなモンスターいた?」
「いた。トカゲ」
トカゲの死骸を見せると、気持ち悪いから食べたくないと断られた。
「気持ち悪い?」
「うん」
サラを説得し、何とか今日はトカゲを食べることになった。その間に、地図を完成させようと超音波を発していた。その甲斐あって、地上に一直線に繫がる隠し部屋の発見に至った。
「サラ」俺は書き出したダンジョンの地図をサラに見せて、隠し部屋を指差した。「ここからなら一気に地上を目指せる」
「本当か? なら、早く行こう」
早速拠点を移動し、隠し部屋に到着する。壁を押してみると、お城みたいに回転して中に入れた。上を向くと、天井は高かった。ここから空を飛んでいけばすぐに地上に着くが、何とこの世界には空を自由に飛ぶ魔法はないと知る。
「ないの!? ファンタジーなのに!?」
「残念ながら、ない」
「風魔法で上に行けないか?」
「風魔法を連続発射するには限度がある。途中で真っ逆さまに落ちて終わりだ」
いろいろ考えた結果、風魔法でまず行けるところまで行って結界を展開して床にして、間を置いてからまた風魔法を発射することになった。
「だけど、タツヤ。結界を維持するにも魔力を食う。風魔法と結界を使い続けるわけだから、途中で魔力が切れる可能性がある」
「魔力は寝れば回復するんだろ?」
「ある程度はな」
「なら、今日はこの隠し部屋で過ごすことにしよう」
「え?」
「今日と明日の食べる分だけの食料を確保してから、魔物のコアに一気に魔力を注ぎ込む。明日になれば魔力は回復するから、結界を維持させる時だけコアに溜めた魔力を使えば良い」
「そういうことか。わかった」
俺は隠し部屋から出て、二日分の食料に魔物を狩った。そして、食べれる部分だけをある程度加工し、サラの下級収納魔法に入れた。
その作業を終えると、サラは喉が渇いたと騒ぎ出した。
「喉がカラカラだ」
「水? このダンジョンで水を入手するのは至難だと思うぞ」
「だが、喉が渇いたんだ」
となると、空気中の水分を集めてみるか。だけど、どうやって集めればいい?
湿気の多い部分を区切り、圧縮を掛けてみた。が、この方法だと魔力消費量が半端ないのに得られる水が少ない。出来るだけ魔力の消費はなくしたい。錬金術スキルで水を得られなくもないが、魔力を食うから駄目だ。
鍋を取り出した。鍋の底は丸いから、水蒸気が中央に集まりやすい。鍋に足を四本取り付けて立たせて、その真下にコップを置いた。
「これで、地中からの水分がコップに集まる」
「けど、それだと量は少なくないか?」
「だから、これから水分のあるものを近くに置く」
まずは尿。これはさっき排出した。次にモンスターの死骸の中でも、水分が多い部位。他にもみずみずしい植物を並べた。
翌日。それらの水分が蒸発して、最終的にコップに集まっていた。それを微量の魔力で冷やし、サラに渡した。
「うまい!」
「よし。早速、地上を目指すぞ」
俺達は風魔法で行けるところまで行き、結界を展開して床にした。結界の魔力源は、もちろん昨日魔力を溜めていた魔物のコアだ。
風魔法が使えるまで休憩してから、また風魔法を発射。結界を展開して休憩。発射、休憩を交互に繰り返し、天井に到達した。魔力障壁があるため、物理的に天井をぶち破る。そして、明かりが差し込んだ。
「「地上だ!」」
俺とサラは叫んだ。その叫び声に反応し、近づいてくる気配があった。
「なぜここにいる!」
近づいてきたのは、魔人アルシュナルドだった。
「這い上がってきたんだ。ダンジョンに俺達を落としたことを、後悔させてやるよ!」
「貴様など、ゴーレムキングが相手をするまでもなく倒してやる」
こいつはゴーレムキングより弱い。こいつを倒せないようでは、ゴーレムキングを倒すことは不可能だ。ゴーレムキングを倒す分の余力を残して戦う。