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錬金術

 魔人アルシュナルドによって地下ダンジョンに閉じ込められた俺達は、魔物を倒しながら地上を目指すしかないようだ。

「ダンジョン攻略は、普通なら何日掛かる?」

「最短記録は、一年と八ヶ月。ただ、その記録は食糧などがあったからだし、ダンジョンの地図を持っていたからだ。私達は、この地下ダンジョンの地図を持っていない。私達はここで絶える」

「いや、待て。ダンジョンは魔力障壁で覆われているのに、なぜアルシュナルドはここまで俺達を落とせたんだ?」

「外部からの干渉は出来ても、内部からは無理だ。それがダンジョン特有の魔力障壁」

 試してみよう。右腕の筋力を強化だ。

Rein(リイン)forcement(フォースト)!」

 強化魔法を右腕に掛ける。あとは、ロックドラゴンを討伐して手に入れたスキルの出番だ。スキル名は『豪腕(ごうわん)』。パンチをする際に、上級身体強化魔法を使用したのと同等の威力になるらしい。これと強化魔法を併用する。

 豪腕と上級身体強化魔法を右腕に併用し、構えた。左足を踏み込み、握った右の拳でダンジョンの壁を殴りつける。

(いて)ぇ!」

「ダンジョンの魔力障壁は伊達じゃないからな。何年も掛けて地上へ行くしかない」

 果たして本当にそうなのか? ダンジョンの地図を持っていないなら、自分で作ればいい。魔物を倒して進むにしても、俺は勇者でサラは元冒険者ランクAの腕だ。まずは地図。

「このダンジョンの地図を作る」

「地図を作るには、空間把握系の魔法が必要だ。空間把握系魔法は王家の血を引く者にしか扱えない。私達には無理だ。歩いて地図を作るなら、その間に地上を目指して歩いていた方が良い。時間は有限だ」

「いや、魔法を駆使して地図を作る」

「く、空間把握系魔法を使えるのか?」

「いや、魔物擬態という魔法を使えるだけだ」

 この魔物擬態は、異世界召喚されてすぐにスナイダーさんから教わった魔法だ。

「魔物擬態は、魔物の一部だけ擬態出来る魔法だな。どうやって使用するんだ?」

「うまい使い方があるんだ。ダンジョンなら、コウモリ系の魔物はいるよな?」

「いると思う」

「コウモリ系の魔物を生け捕りにして、首から上を魔物擬態する」

「ん? マジ?」

「それしか方法はない」

 コウモリの感覚機能は素晴らしいんだ。コウモリの機能を模したら、地図製作は造作もない。こういう魔法が役に立たない場合は、雑学知識が豊富だと助かるな。

 コウモリ系の魔物を探していると、オーク系の魔物の亜種を見つけた。今日の晩飯としてちょうどいいから、狩ることにした。

「サラ。結界の剣をくれ」

「あいよ」

 剣を預かり、一瞬で間合いを詰めて眉間を一突きした。するとあっけなく、オークは倒れた。

「食える部位を解体しよう」

「オークの美味しい部位はヒレと呼ばれていて、希少部位だ。背中肉で、背骨に沿()って棒状に伸びている」

 ヒレか。位置からしても、ブタと一緒だな。

「わかった。ヒレを取り出すなら、まずはロースを切り裂くしかないか」

「ヒレは揚げ物に向いていると聞く。私が調理してやろう」

「頼んだ」

 オークの解体を俺がやり、調理をサラに任せた。すると、サラが唸っていることに気付いた。

「どうしたんだ?」

「ヒレを揚げるにしても、油がない」

 油か。そういえばそうだな。ただ、この大きさのオークからなら、十分な量が採油出来るだろう。

「オークから油を採取する」

 採油の方法は......熱するんだよな。鍋で熱し──鍋がない。どうしたものか。

 そういえば、スナイダーさんが言っていた。ダンジョンの壁には少量の鉄とオリハルコンが混じっている。溶かして抽出(ちゅうしゅつ)すれば、鍋を作れる。

 ただ、ダンジョンの壁には魔力障壁があるから魔法での破壊は不可能。スナイダーさんがダンジョンの壁には鉄とオリハルコンが含まれていることを知っているということは、物理的に壁を破壊することは可能なのだ。

 物理的破壊。化学爆発ということだ。単純に、ダイナマイトとかで良いんだろう。初期のダイナマイトはニトログリセリンを筒に詰めただけだったから衝撃で爆発しやすかった。が、今の状況なら好都合。衝撃で爆発するなら、爆発させやすい。

 ニトログリセリンの作り方は硝酸、硫酸、グリセリンが必須。だが、ダンジョンには硝酸も硫酸もグリセリンもない。なら、スキルポイントを消費だ。

 スキルポイントとは、LVが上がると手に入るポイントで、スキルポイントを消費してスキルが手に入る。今まで俺はスキルポイントを消費していなかったから、まあまあスキルポイントは溜まっている。

 このスキルポイントで、まずは【錬金術】というスキルを取得。このスキルは、この世界からしたら役に立たないスキルだ。しかし、分子配列を知っている人間からしたらすごいスキル。分子配列の知識を有していれば、地道な錬金が出来る。早速、錬金術スキルを発動。

 目の前にステータスボードのようなものが現れた。四角い枠だ。何だろうと考えてみると、このボードがわかった。このボードにはものが入れられて、入れたものの分子配列をいじくることを可能とする。少しやってみると、硝酸も硫酸もグリセリンも入手。首尾は上々である。

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