1話 雄三毛キャット族Vtuberミケダマ根古
1時間半程度の放送だが星乃シソは疲労がたまっていた。
さすがに宇宙ウイルスが生物的な疲労はためないが精神を持つため精神的疲労は高まっている。
放送としては普通の時間だがミケダマ根古の言動にヒヤヒヤしていてそれどころではなかったのが大きい。
やばそうな話を漏らしそうな静止したり。
逆に30分遅刻していた事実を語って誘導したり。
ゲームも協力なのか殴り合いなのかわからなかったが案外進めれた。
「それじゃあ、おつかれさまー」
「おつノシー!」
最後までコメント欄は盛況で閉じられる。
星乃シソの指示通りに放送終了手順を踏みちゃんとカメラも落とす。
レンズ蓋がないので箱を置いて視線を防いだ。
マイクも今度はチェックして。
「ふうう」
「お、ニンゲンぽいですね。それじゃあ、今日はありがとうございました」
「終わったあ、多分オレ史上最大数見られたよ。おつかれさま」
「それでなんですけれど、こういう縁ってめったに無いのでコンビ名決めませんか?」
星乃シソからしたら本心は怖すぎて目を話しておきたくないというのが肝要だった。
確かに宇宙ウイルスがVtuber同士で出会うこと自体は奇跡に等しい。
しかし宇宙ウイルスとしてはソレで組むことには値しない。
しかしニンゲンから見られた際の寂しいという異端に見られることの回避とちゃんと見張ってこちらすら巻き込まれないようにしたいと判断したのだ。
そしてこちらが提供できる物も多いというデータ的な判断も大きかった。
「え!? いいの、ぜひ!」
「今からツイートして決めてもらいましょう」
「やるやる!」
こうしてふたりは後々初めてのオフコラボ組として有名になっていくだろう。
コラボ名は募集することに。
多数の応募が集まって行く……
「それじゃあ、今日は楽しかったよ! すごく色々面白かったし! 何より同類がいるとは思わなかったや! まるで本物の神様みたいだったけれど」
「それは私もです。いろいろ学びになりました。確か人は……こういう時、こうするんですよね」
星乃シソは腕を差し出す。
ミケダマ根古は驚きつつも……
すぐに手を取った。
握手をしてここに奇妙な関係のふたりが生まれたのだった。
「今度は何をしましょうね?」
「うーん、とりあえずエゴサしてから決めたいかな……今日色々ありすぎたし」
「それもそうですね! では、次元超技、鍵」
閉じられていた空間が再び開放される。
星乃シソのソレを見て。
ミケダマ根古は目をまんまるにま開いた。
「えっ!? 今のって一体!?」
「うん? 基本的な次元超技だよ。次元超技は慣れれば色々出来るから、鍛えていくと良いよ」
「次元超技……?」
ミケダマ根古の疑問は扉が開くガラガラとした音でかき消される。
そのまま星乃シソは手を振って扉を閉じ……
外へと歩いていく。
公園の茂みにひとり自然に隠れ次元超技を使い一瞬周囲を隠蔽する。
その瞬間に自身の擬態を変えて空へと羽ばたく。
大きな白い翼を持った鳥になっていた。
気分がよくなったのと精神的な疲れから飛んで帰りたくなったのだ。
空を舞い晴れ渡る空は新たな出会いを祝福しているかのようだった。
星乃シソは宇宙ウイルスだが2次元と人を介することで初めて別の宇宙ウイルスとも繋がれた気がした。
星乃シソは心に寂しいという感情はなくとも誰かと繋がり愉快な気分になれることをこの日しっかりと味わう。
ココは都内に有る下町の一軒家。
既にボロくなっており誰かが住んでいるかどうかは一見よくわからない。
しかしその中では玄関前に立ち尽くす1つの姿があった。
「今日は本当にすごい日だ……化け猫の同類、しかもご先祖さまに合えるなんて。まさしく神様だなあ」
ミケダマ根古。名前はたくさんあるがこれといったものはない。
1000年生きる由緒正しき化け猫である。
これで1話はおしまいです。ぜひ評価、ブックマークをしてくれると幸いです。