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15遺跡調査隊

遺跡調査隊が出発して数日目に、先発隊から遅い連絡が入った。


『法師様。亜人の情報より多少はズレますが、確かに遺跡がありました。詳細はこれから調べますが、かなり広範囲だと思われます』

「了解した。座標情報も受信した。引き続き、周辺の調査を頼む」

『了解』


衛星画像で発信器の座標位置を検索すると、そこは樹木が点在する岩場にしか見えない。


「聞いた話しより少し川寄りだった様ですね。お陰で発見に時間が掛かったようです」

「亜人の情報など、そんなものさ。だが、法師殿達の言った通りに、身軽な先発隊を送っておいて正解だったな。この大所帯で右往左往していたら大変だっただろう」


法師の報告に枢機卿が先発隊を送った事への慧眼を誉める。


流石に未踏な遺跡の位置をピンポイントで指し示していたら、いくらなんでも疑われると思い、法師は少しずらして枢機卿に話していたのだ。


結果的にソレは、先発隊が賢者の所に寄るロスタイムを誤魔化すのに有効だった。

先発隊にはバッテリー節約の為に、位置情報を知らせる発信器の使用を制限する様に伝えておいたので、賢者の元へ寄ったのを知られる心配もない。

身軽な馬で向かわせたのも、隠密などの追跡をかわす為でもある。

馬を馬で追っていたら、あからさまにバレるからだ。


法師達の遺跡調査隊は、ほぼ予定通りに目的地の古代遺跡に到着した。


「少し向こうに住宅区画も有りましたが、基本的には商業区画の様です」


合流した先発隊の報告に法師が項垂れる。


「ははは、御希望の武器類が無さそうで残念ですね?しかし、生活に便利な法具が見つかるかも知れませんから、頑張りましょう」

「そうですね。人々の暮らしを良くする物が見つかるかも知れませんからね」


枢機卿の励ましに、法師は項垂れたまま答える。


「法師様。この遺跡は、かなり広範囲に点在している様なので、班を幾つかに分けて作業した方が良いのではないでしょうか?」


先発隊が、地図に大まかな範囲を記入して項垂れた法師に見せる。


「そうですね。機材も馬車も三セットあるから、単純に三班に分けましょうか。枢機卿様は、どうしますか?この辺りは安全そうなので狩りにでも行かれますか?」

「私は、法師殿と一緒に見て回ろう。専門ではないが古代遺跡という物を初めて見るので、興味がある」


総勢十名の調査隊は、法師と助手二名に枢機卿を含めたA班と、三人づつのB班、C班に分ける事にした。


枢機卿の目的が法師を監視するには、法師の班に入るのは妥当な行動だ。


メインが法師であるならば。


水の確保や夜営の準備を各班に別れて行ない、明日からの調査に備えた。



翌朝、定時連絡の打ち合わせをして、馬車はそれぞの方向へと進んでいく。


衛星画像で岩に見えたのは、朽ちたコンクリートのビルで、内部には多くの空洞があった。


適当な所に馬車を停め、太陽電池板を広げる。


法師達は調査機材を背負うと、馬車から少し離れてセキュリティシステムを稼働させた。


「これで大丈夫ですね」

「前回は、これが無くて大変な目に会いましたからね」


法師達の班は、笑顔を交わして遺跡へと入っていく。


雨ざらしになっていない部分には、劣化していないプラスチック製品も、幾つか見える。


法師達は懐中電灯で室内を照らしながら、目ぼしい物をカバンに詰め込んで行く。

枢機卿も興味が湧いたらしく、幾つか手にとっていじったりしていた。


部下の一人はデジタルカメラで撮影したり、地下の階層構造を探ったりして、次回の調査を踏まえた資料作りをしている。


「(本当に普通の発掘調査ではないか!)」


枢機卿がチラチラと法師の方へ視線を送っている様からは、そう考えているのが見える様だ。


「はぁ~。やはり、こんな武器しかないかぁ」


たまに武器を見つけても、既に教会でも量産化が可能になっている拳銃の類いでしかない。


見付けた銃を試し撃ちをしようとした部下を、法師はすぐに止めた。


「整備もしていない銃を使うと、暴発の恐れが有るぞ。医療チームも居ないのだから、余分な事はするな!」

「すみません。昔の銃が使えるかと興味があったので」


弾丸も既に酸化が進んでおり、使用できるものではないだろう。

だが、万が一と言う事もある。


法師達は、こうして、【普通の遺跡調査】を進めていった。


そう、法師達は。




発掘調査の為に分散したB班とC班は、見晴らしの良い岩場近くを移動していた。

途中で休憩をとっていたが、不審な行動には見えない。


しかし、ホロ付き馬車の中では、少し騒ぎが起きていた。


「賢者様。お久しゅうございます」

「皆も健勝であったか?この様な事に巻き込んで申し訳ない」

「いいえ。事の詳細は聞いております。この様な事は許されてはなりません」


賢者の知人達は、一部の者達による教会の独占と、教会が魔王を作り出している事実を聞かされている。

【事の詳細】と言いつつ、全てを知らされている訳ではないのだった。


「で、その独占派を倒せる法具が有るのは、どこなのですか?」

「この奥の洞窟を抜けた先に、軍事基地の遺跡がある。君達のお陰で、やっと入れる」


法師は馭者に道を指図して、そのトンネルを目指した。

入り口近くには検問所の跡があるが、既に人が居る筈もない。


トンネルの途中に無線式の動体センサーとセキュリティシステムをセットし、更に奥へと進む。


隠密が来ていても追跡がバレるので、これより奥へは行かないだろう。


かくして、遺跡調査隊の【本隊】は、真の目的地へと進んだ。


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