毒親を考えるー万能感とは何か7−11/16
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少し話がママ側に逸れるけど、ママは子供にこの万能感を発揮されまくる時期「やってらんねー」感情を常に感じ続けることになるわけだよね。
だからママ友と愚痴ったりパパや保育士ほかいろんな人的資源にフォローして労ってもらいながら大人関係との間で自分の感情をケアをしなくちゃダメだ。
自分時間を充実させたりね。
ここ超大事。
母親は自分の感情をケアしなければならないということを忘れがちだから。
ケアどころかもっともっと頑張らなきゃとかきたてている人もあるかもしれない。
子育てなんて当たり前なのにケアなんて、自分を甘やかしているのでは? と感じる人もいる。
なぜならママ自身に「子供を自分以外の対象のある地平に着地させるというめちゃくちゃしんどい大仕事に従事している」という認識がほとんどないからだ。
ママ自身も世間もこの大仕事を軽視し母親ならやれて当たり前くらいに「思い込んでいる」し、側には二人羽織みたいに一体化している子供という目下育成中の超若手新人がいつもくっついてる。
まずケアされ労られてしかるべきだと注目されるのは目の前の子供だって思ってしまう。
だから誰もママを労ることを知らないんだ。
これはほとんど二度目の出産、精神的出産と言っていいくらいの大仕事だと思うのに。
※「コーピングリスト」ケアのためのリスト。スキー、温泉、お茶を飲む、絵を描く、なんでもいいから褒めてもらうなどなど事前に自分の楽しみをいっぱいリスト化しておいて、ちょくちょく与えられるものを自分に与えていくようにするといいっていう話です。あれもこれもできなーいってストレスにならないように。
※「思い込み」=信念、これが本当の感情を感じることを禁じてしまう。現実に合わない思い込みを持っていると、物事を歪んで捉えて気がつかず、非現実的な努力をし続けることになる。自分ではなかなか気がつくことができないし、指摘されてもなかなか認めることができにくい厄介なもの。
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ケアをしないで感情を置いてきぼりにすると、感情は無視された怒りでコントロール不能なものになる。
その上これくらいやらなきゃなんて「思い込み」の最中にあるとき、人は自分の感情を無視している。
常に蓋をし続けていくと感じること自体ができにくい不感症体質になってしまうのね。
感じられないのに感情的ってなんだか不思議だけど、「感情さん」は感じないように無視されると怒り暴れるのだ。
だからママ自身が自分が感情をコントロールできなくなっていること自体に気がついていないなんてことが起きる。
こういう時ママは不機嫌だったり、キレたり、子供相手に愚痴ったりなんてことをしてしまう。
気づけて自分をケアしてあげられたらいいんだけど、気づいた瞬間「子供相手にキレるなんてサイテーだ」とさらに自分を責めて追い詰めたり「母親は家庭の太陽でいなきゃ」なんて幻想を抱いて感情を押し込めちゃったら不感症が強まって、ついには自分の態度そのものにも気付くことすらできなくなる。
特に母親はこうあるべきという強い信念と言っていいほどの「思い込み」を持っている家族、親戚、保育士などの「ママは不機嫌にしてちゃダメ、いつも笑ってなくちゃ♪」「家でくらいくつろがせてよ」なんて求めに応え感情を押し込んだ日にゃ、もう四面楚歌だね。
感情をコントロールできなくなっているというサインを拾ってケアを勧めるどころか、無視してさらに周囲をケアするように動いちゃう……。
こうしてママは「良き母」であろうとどんどん自分ではないものになろうと頑張ってしまうんだね。
ぎゅうぎゅうに気持ちを押し込めて。
「しっかりしなきゃ、大人なんだから」と思えば思うほど抑圧は強くなって、感情さんの怒りは爆発的なものになっていくのに……。
※「感情さん」自分の感情は小さい子供のように捉えてケアしてあげる必要がある、ということで人称にしてみました。
※勝手に浮かんでくる「自動思考」の癖「べき思考」。〜しなきゃだめ、〜すべきと非現実的に理想化した何かに照らし合わせて自分を比較評価すること。人は「出来事」そのものではなく「自動思考(認知)」でどう捉えたかによって「感情」を抱く。「べき思考」はつまり「思い込み」の信念。「認知行動療法」で認知を再構成することで抑圧することなく感情にアプローチすることができる。
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こうして震えながら新しい地平へ飛び込もうともがいている超若手新人である子供が自分の感情を無視し、大人であるママ上司の感情をケアする、みたいな変な構図が出来上がる。
子供にしてみれば、超恐怖だよね。
まだ精神的に自分と一体化している感覚を持つほどママに身を委ね切っているのに、支える側が一杯一杯で支えてあげないと崩れそうなんだ。
今は、精神的出産の真っ最中。
出産時子供は必ず母体の不調に影響を受ける。
それと同じで圧倒的な力の差がある母親の悪感情に子供は飲み込まれ服従させられることになる。
ママに子供を支配する意図があろうとなかろうとね。
※子供が大人の感情をケアする、親子逆転。「アダルトチルドレン(AC)」が生まれる「機能不全家族」に起きている最大の問題はこれによって子供が現実世界へ着地することに失敗し、「万能感」を手放すことができなくなることだ。それについては10、11で。
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私はこの時母親は「母親なんだからできるはずという非現実的な思い込み=万能感」の最中にいるんだと思う。
「万能感!? 万能どころか、日々ダメダメだと打ちのめされているわよ!」と思うかもしれないが、日々怒りまくっている幼児が感じている万能感とはそういう苦しいものなのだ。
「自分にはなんでもできるはず」ということが非現実的なのに怒りまくる幼児と「母親なんだからできるはず」ということが非現実的なのにできないといけないと奥歯を噛み締めもがいている母親。
どちらも「万能感」に満ち満ちている。
人は「思い込み」の中にいる時、それを実現することに夢中で現実を見てはいない。
泣き喚き我を通そうとする三歳児が盲目で対応する母親の疲弊に気が付かないように、「非現実的な思い込み」の理想を実現すべきと思っている母親は自分の感情を無視し続けているため不感症で子供の恐怖、悲しみにも気がつかない。
気がついていないんだ。
子供の感情にも非現実的な理想だということにも気がつかないで「思い込み」の「理想に近づこうとしている」のだと信じて頑張ってしまう。
それが子供にとっての「いいお母さん」だとさえ「思い込ん」で。良かれで。
我が子が信頼すべき最初の人に打ちのめされて震えていることが見えない。
子供の欲求を拾わない。
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こうして不感症になってしまったママに無視し続けられた結果、子供は子供自身の持つ本当の欲求「本当の自己」を大切だとは思えなくなる。こうなると「自己肯定感」は……いうべくもないね。
子供は自らの感情を要らないものと打ち捨てて「偽りの自己」として生きていくことを決心する。
母が「良き母」の仮面を貼り付けたように、子供も求められていると感じた役割「ペルソナ」を固く貼り付けてね。
そしてまたこの「偽りの自己」を生きていくことになった子供自身も、自分の欲求、感情を無視して生きると決めたわけだから、母親同様に「思い込み」からくる「万能感」の世界を生きることになっているということはもうおわかりだろうと思う。
つまりその子は適切な時期に「万能感」を手放すことに失敗し、持ち続けることになってしまったということだ。
精神的出産に失敗し母親の中に取り残されている。
母親のしがみついた「良き母」でありたいと言う「万能感の幻想」を守ってやるために。
※ウィニコット「偽りの自己」は「本当の自己」の持つ欲求から全く切り離され、置かれた現実に表面的に適応した自己。
※ユング「ペルソナ」周囲に適応させた仮面。人は通常いくつかのペルソナを持っていて、会社や学校、家庭、恋人といる時などそれぞれの顔を使い分けている。健康な状態ではこのように柔軟に仮面を取り外し交換しているものだが、過剰適応してしまった人は自ら「一つの仮面=自己そのもの」と認識してしまうほど固い仮面を貼り付けて剥がせないでいる。
飛躍しとるんじゃないだろうかって不安になって出せなくなるけど、とりあえず出して仕舞えばいいのだ。
今の時点で理解していることなのだから。
私に必要なのはそういうこと。