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毒親を考えるー万能感とは何か1−6/16

人は生まれながらに持っていた万能感をどのようにして手放し現実に着地するのか。

子供からママ側に視点を写し、自身の感情をケアすることを知らなかった母親に起きていたことはどんなことだったか。

そして最初の最初の段階で万能感ではなく自分自身を手放すことになった子供について。

 1

 万能感とは乳児の母子一体状態から始まる、世界、相手、自分の在り方の全てが自分の思う通りになるのが当たり前だという感覚のことを言う。


 自他の境界のない世界観。

 泣けばオムツが替えられ、お腹が空いたと思えばおっぱいが勝手に来て空腹を満たしてくれるのが当然という感覚だ。

 この時期の親は乳児にとって他者ではなく自分の手足の延長のようなものだ。

 欲求が叶えられない時、子供は自分の身体が(……と感じるのかな)思い通りにならないことに苛立ち泣き喚いて怒り、不満をぶつける権利があると信じている。


 ※ウィニコット 母親が「原始的没頭」することによって、乳児が乳房を自分の一部と捉える錯覚を持つほど安心できる環境を作り「ホールディング(抱える)」する。

 ※マーガレット・マーラー「分離個体化理論」分離までの過程。自他の識別がない状態→母親を自分の一部のように感じ当然のように操作していいとする万能感を持つ状態→……後述

 ※メラニー・クライン「妄想-分裂ポジション」満たしてくれる良い存在(理想化)満たしてくれない悪い存在(脱価値化)と二極化している。強烈に愛し、強烈に攻撃する。




 2

 そこから段々と子供は親が自分とは違う別個の存在であり、自分の思うようには思わないし、感じないのかもしれないと気がついていく。

 その気づきは成長によって子供自身の欲求が多様化し、以前のように親が子供の快不快に思うように対応できなくなることで自然と起こる。

 万能感の世界にいた子供は以前は願えば勝手に満たされていたのになぜだ! と不満を抱き暴れる。

 ここからしばらくなんでもかんでも「お母さんのせい!」と清々しいまでの万能感を発揮する状態が続くわけだ。


 ※マーガレット・マーラー「分離個体化理論」前述引き続き……母親を自分の一部のように感じ当然のように操作していいとする万能感を持つ状態→母親を自分とは別個の対象として認識する→……後述

 ※ウィニコット「ほどよい母親」母親が原始的没頭から覚醒、子供が成長して欲求が多様化することによって生まれる、投げ掛ければ応答はあるがいつでも子供の欲求が全て叶えられるわけではないという葛藤が起こる環境のこと。これによって母親は自分とは別個の人間であると理解してくことができる。

 母親と言う対象ではなく「ほどよい母親と言う環境」って感覚が不思議……。まだ他者じゃないからなんだね、きっと。





 3

 うすうす親が他者であると気がついていくと言うことは、同時に母子一体で万能だと思っていたのは幻想?? ってわかっていくことでもあるんだね。

 万能感が崩れだす。

 子供は自分の思うように欲求が叶わなくなってきたが「それでもなんとか思うようにはならんのか?……うーん、どう考えてもならんな……」と徐々に納得していく過程に入る。

 現実を吟味するんだ。

 その過程ってつまり、「自分でなんとかできることも結構あるし、いいとこでママに手出しされるとうざい……でもうまくいかないのは嫌だからママがそばにいてくれないと!!」

 なんてママに自分の都合よく思い通りに動いてもらいたがって「やっても怒るし、やんなくても怒る」と言う非常にめんどくさい状態を繰り返すってことなんだけどね。


 ※マーガレット・マーラー「分離個体化理論」……母親を自分とは別個の対象として認識するまでに次のような経過を辿る→「分化期」まず母という存在を特定「練習期」母から離れて探索を始める「再接近期」母がやってもやんなくても怒るような状態を経て母は別個の存在と認識しだす「再個体化期」母子分離して他児と遊べる(〜三歳くらい)




 4

 こうして徐々に「ママは私のもの。私の思うがままにしていいの。言わなくてもなーんでもわかってくれるし、勝手に汲み取って叶えてくれるんだよ!」というのが当たり前の心地よい万能感的世界から「ママにはパパというパートナーがいて、私がママを思うがままにすることはもう許されないらしい」と言う現実世界に着地していくはずなんだ、けどね……。

 あ、突然パパが出てきてあれっていうふうになるんだけど、パパは社会の代表なんだね。


 母子一体という対象のない自己だけの万能で当然な「一者関係」→夢現のような主観と客観の「中間領域」を揺れうごきながら→母親という対象とののっぴきならない「二者関係」→また「中間領域」を揺れうごきながら→父親、母親、私というものに代表される社会的な「三者関係」へ。

 ここにたどり着けば現実世界への着地成功だ。

 幼児期を終えるまでのストーリーはこんな感じなのかなって解釈している。

「ママとの蜜月をパパが断ち切る(去勢)」ことで社会化するというエディプスの神話になぞらえたフロイトのストーリーが私にはちょっと想像しにくかったんだけれど、こんなふうに理解しました。


 ※フロイト「エディプス葛藤」(五、六歳)男女問わず子供の初恋(愛着の対象では?)はママ。ペニスを持つ男児はこのまま母親を対象として強く愛着を示すが、ペニスを持たない女児は母親の対象としては不完全だと知り、完全な姿で産んでくれなかった母親を憎む。(「ペニス羨望」) 女児はその後対象をペニスを持つ父親へと愛着の対象を切り替える。という流れがあって、結果どちらも「異性の親に恋着し同棲の親を敵視排除しようとする」。そしてそれは異性の親によって阻止され葛藤ののち諦める。三者関係への移行、社会化の過程として捉えたので愛着としたけど、通常愛着ではなく恋着、幼児性欲と捉え抑圧される嫉妬をどう扱うかという問題として捉える……のかなぁ。難解。

 ※フロイト「超自我」三者関係での父親は社会で生きていくために必要な理想的価値観を代表している。ルール、道徳、倫理観、良心。

 ※ウィニコット「中間領域」本人の主観的思いと客観的現実との間。ぬいぐるみや毛布など母親の代わりとなる愛着の対象「移行対象」を利用し支えられながら幼児の持つ強烈な主観的感情を和らげて現実に着地していく。




 5

 ここで子供が葛藤を乗り越え「万能感は幻想だったわ」と認めるのに必要なのは、万能感なんて魔法がなくても私は自分の欲求をそれなりに実現することができると信じられることだと思うんだ。

 自分はできる、だからなんとかなる、生きていけるって思えるようになる。

 生きていけるっていうと大袈裟に聞こえるけど、この時期の子供にとって世話をされないというのは死に直結するからね。

 だから子供の感情はとても強烈。いつだって絶望と背中合わせなんだ。


 万能感の幻想を手放すやり方は「中間領域」を使って「移行対象」に慰みを求めながらスローステップで丁寧に。

 自分の手に負える分だけを。

 でないと「万能感を手放すこと=現実は自分にはとても手に負えないどうすることもできないものだ! と絶望を感じながらも、血まみれになってでも受け入れないとダメっ! って鞭打つこと」になってしまうからね。

 これじゃあ人は逃げ出したくなるし、逃げ出せなきゃどうかしてしまう。


 ※アンナ・フロイト「防衛機制」人のとりうる、現実から自分の内側へ逃げ出して自分を守る手段。いろんなバリエーションがある。逃げ出した代償として現実を生きられなくなる。




 6

 子供は時には欲求を汲み取って叶えてもらえたり、自分でできるように助けてもらえたり、励ましてもらえたりと「ほどよい母親(環境)」に「ホールディング」されることによって、自分は自分で欲求を実現できるし、実現してあげる価値がある存在だと信じられるようになっていく。

 ママから見ると、理不尽に意味不明に怒りまくり、都合よく甘えまくりされながら感謝もされず、自分できてるぜってドヤ顔されるってことだから「はー、やってらんねー」って感じかもしれないけどさ。

 可愛いから許すっ!! って飲んで「すごいじゃーん❤︎」とかとかやって受け止めていくわけね。

 こんなふうに二者関係の地平に着地するという大仕事を成し遂げることで、子供は自分にはちゃんと能力があるし、丁寧に扱われるべき大切な存在だと感じられるようになるんだね。

「自己効力感」や「自己肯定感」が育まれるんだ。

 同時に支えてくれた環境……つまり母親を代表する人間や、世界(こちらへの信頼獲得は三者関係の着地の時かな)は絶望的なものではない、助けになるものという深い信頼感を抱くことができるようにもなる。


 ※「自己効力感」自分はできるという感覚。「自己肯定感」に栄養を送ることができる要素の一つ。ただし簡単に揺らぎやすくその効力はわずか。

 ※「自己肯定感」どのような自分であろうがありのまま認めそれを肯定することができる力。人間という植物があるとしたらその根っことなる部分。例え幹を切り倒されても復活する力を秘めている、揺るぎがたいもの。

 ※「自己信頼、他者信頼、世界への信頼」この三つがないと人生ハードモード。

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