メモリー/Give me our yesterdays
メモリー
遠くで子供達の笑い声が聞こえた午後の熱が
眠りにつこうとした僕の耳に残って
海の揺らぎに抱かれているようだった
思い出せば
いつもみんなでどこかを目指して走っていたような気がする
暗く塞ぎ込む暇なんて無かった
一緒にいれば何でもできるように感じていた僕達が立ち向かうものは
いつも大きすぎた
汗ばんだ腕
よく乾いた洗濯物の匂い
癖のあるそれぞれの喋り方
互いの友情を何も感じなくなるほどに
長く傍にいた気がしたから
形に残るものは少ない
今は
閉じられた窓の中で
虚空の高みを駆ける風を想う
時にはひとりで
時には誰かと笑っていて
それでもあの頃をふと思い出せたら
僕達はそれでいいのだろう
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Give me our yesterdays
わたしを抱きしめて
あたたかくふんわり抱きしめて
帰って来たあなたに包まれるのが好きなの
極上の真綿みたいに
やさしいあなたの声を聴かせて
せつなさだけが残る電話もいいけれど
曇った窓辺のガラスのおもちゃや
クリスマスの飾りつけ
造花に街灯に噴水に
髪かざりとお菓子を売るワゴン
でもわたしはいなくてあなたもいない
そんな日々
色んなお話をしてほしい
あかるい冗談交じりのお喋り
あなたが誰かから聞いたというあのお話を
もう一度聞かせてほしい
わたしの髪を撫でてほしい
小さかったころみたいに
笑いかけてほしいの
困った顔をされるかもしれないけれど
またあんな風に甘えてみたい
泣いて意地を張ってみたい
もしあなたにお願いをしていいのなら
どうかぺたぺたに赤く塗られた木靴みたいに
わたしの見せた笑顔を飾らないで
わたしがあなたに贈った季節を忘れないで
どれだけきれいなリボンを結んでいても
素敵なプレゼントを抱えていても
寂しくなってしまう
たしかにわたしはあなたに会わない間
色んな間違いをしてしまったけれど
色んなことを知ってしまったけれど
くだかれたばかりの石みたいに
冷酷で尖っていていつ爆ぜるともつかない
人をゆるす心もない
どうかわたしをそんな人間に書き換えないでね
わたしを怖がらないで
もし
あなたが自分を怖がっていたのなら
抱きしめてくれるだけでいいから
そうしたらわたしは
わたしの想いをありったけのレースでくるんで
きっとあなたに渡すから
だからわたしの前にあるこの樫の扉を
どうか早く開けてほしい
わたしの__いつまでも愛しい人