魔女は今日もお嬢様の味方です!
入ってきたのはきつい目つきと真っ赤なドレスに黄色の合金ドリルを装備した、という貴族様だった。
「いらっしゃいませ!お綺麗ですね。何をお求めでしょうか?」
「ええ。今日は買いに来たわけではないの。依頼をしに来たのよ」
意外と優しそうなしゃべり方。やっぱり人は見かけによらないとかいうもんね。
私も魔女で色素が薄いけど前世の記憶持ちだし・・・。
「はあ。依頼ですか。あまり受けたことがないのでできるかわかりませんが」
「ええ、別に人を殺せとかじゃないわ。薬、惚れ薬を作ってほしいの。できるかしら」
惚れ薬・・・。物騒だね。確かに人を殺せとかではないけれどそれでもね・・・?惚れ薬ってある意味毒だからね。
「作れますよ!あの・・・。それで、内緒にするし、私個人が気になっていることなので、答えたくなければそれでいいんですけど…。誰に使うんでしょうか」
「・・・。少し長くなるかもしれないわ。まず自己紹介からしましょう。
私はアレーシア・メル・クルーシュよ。一応公爵令嬢なのだけれど・・・。それで、私には婚約者がいるの。」
この流れは婚約者を好きになろうとするか好きにさせようとする流れでは・・・?
「はい、ってやっぱり高貴な感じはしてましたがすごいですね!!」
「続けますわね。その婚約者は、この国の王子、第一王子なの。」
「ええ!!!」
王子相手に何しようとしてるんですか!そればれたら私の立場やばくないですか?
ただでさえ魔女なのに!?
「その第一王子は、好きな人がいるの。私以外で。」
「・・・」
これはあれでは・・・。やっぱり王子に使う流れでは・・・?
「その好きな人は、王都に住むかわいい、平民の女の子だったの。」
ろり・・・こん?
「それで、その女の子も王子のことが好きで・・・」
やっぱり、ろり・・・こん?
「それで、恥ずかしながら、私はその王子のことがどうしようもなく好きなの。」
やっぱり。王子、引き裂かれてかわいそうだけど、ロリコンだから同情してあげない。
「それで、私は器の狭い人間だから、どうしてもあの子が隣にいると許せなくなって、
仲を引き裂いてしまいそうなの。」
え?そこはだから王子に…って流れじゃ・・・。もしかしたらほかの人のことを好きになりたいとかそういうことかな?
「はい、」
「だから、わたしもその女の子のことを好きになって王子を理解したいの。確かに可愛いねってそういってあげたいの。だから、使うのは私自身かしら…」
優しい!!めっちゃいい人でした。そもそも悪い人だったら話してくれないしね。
「つらい思いをなされているんですね…」
なんだか私が読んだことのある小説の展開に似ている。
「でもきっと大丈夫です。その女の子の名前を年を教えてください。ついでに王子様のも」
「?王子は18歳、グレン・ジーク・シュルドーク、女の子の名前は、イリーナ。13歳よ」
やっぱりロリコンではないですか。5歳も年下・・・。にほんだったら中学生ですよ?あり得ません
「でしたら、きっと感知がいたと思います。私は王子様のうわさを聞いたことがありますが、
とても優秀で、王子としての役目を全うされているだとか。そんな王子様が、平民の女の子を好きになるはずがありません。なったとしてもあきらめているはずです」
「確かに私も最初はそう思っていたの。でも、普段心から笑わないあの人が、あの子の前で満面の笑みで笑ったの。抱き合ったりもしていたわ」
・・・。貴族はやっぱり腹黒いし、その分平民は単純だしいい人ばっかりだと思うから、村の人みたいに。だから、その素直さとかに単純に心をほだされただけではないのだろうか。
「抱き合うは、5歳もしたなんだから、王子は何かその子が悲しいことがあって、慰めたりしていたのでしょうか。心から笑うのは・・・。王子はきっともともといい人で、笑いたいけど、王子としての役割があるから普段笑えないだけではないでしょうか。それが平民のそのこと喋ると無邪気だし、子供だから王子としての役目をついうっかり忘れちゃうとか、そんなところだと思います」
「確かに・・・。でもそれが都合のいい解釈にも聞こえてくるの」
「よし!じゃあ、手っ取り早くこの問題を解決させましょう。」
「ええ。私が17年間抱えてきた問題を?」
「え。17歳なんですか!私16歳だからとし近かったんですね!」
「いやそれより解決法を・・・」
「はっ。すみません。簡単です。王子にこの惚れ薬を飲ませればいいんです。あなたが」
「え?・・・」
「もしそれであなたに対する王子様の態度がいつもと変わらなかったらそれは王子様があなたをもともと好きだったから変化がなかったということになります。それで態度が変わったら、残念ながらそういうことになります」
「確かに・・・。王子から私をどう思ってるか聞いたほうがいいわね。あなた頭いいわ」
「ふふ、ありがとうございます」
「使用方法はわかるかしら」
「簡単です。あなたがまず薬を飲んで、王子と話す前に心から祈ってください。『この人が私を好きになってくれますように』それで話すとあなたへの態度が変わらなかったり変わったり」
「5分経っても全く変わらなかったらそれはあなたのことがもともと好きだったってことになります」
「ほんと・・・?」
ウルウルした目でこちらを見てきている。やばい。いろんな意味で
「ええ。頑張ってみてください」
「頑張ってみるわ。いくら払えばいいかしら」
「いえ、いらないです。初回サービスです」
「あら、そんなのあるのかしら」
「いえ、だれに使うか詳しく話してくれましたし、みんなの幸せが私の幸せなので。もしご結婚なさったら私のところに絶対報告しに来てくださいね!それさえしてくれればお金はいりません」
「もう、気が早いってば。でも、一番乗りで報告しに来るわ」
「これ、薬です」
「ありがとう。なんだか世界が明るい気がするわ。いってくるわ」
「ええ、いってらっしゃい!」