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第40話:集めて楽しい「仲間達」

『おぼえてろよー!』

すごい定期的に攻めてくるアデレード艦隊を撃破し、今日もシュプルギーティスは平和だ。

いや、戦時中に平和ってのもおかしいが。

「お疲れサマです」

艦に戻ったムスチテルキ隊をアリツェが迎える。

エプロンを身につけその手には雑巾とモップ。

「何してんだ?」

「お掃除デス」

「何でまた」

「皆サンのお役ニ立ちたいと司令官サンに相談したところ、コノ大役を仰せつかりマシタ」

「なるほどな」

オレに頭を下げると通路の掃除をはじめるアリツェ。

ああいう生真面目な所はアーデルハイトの影響なのだろうか。

「ヴラベツサン」

「ん?」

「ナニかありましたら、ワタシにご命令くだサイ」

「おう、頼りにしていいよな」

「ハイ。オーブネにノったツモリでというやつデス」

ビオトープの整備とかもアリツェに手伝ってもらおうか。

とか考えながら部屋へ戻ろうと歩いていると、ばったりツェラに出会った。

「ヴラベツ、話がある」

「?」

オレの部屋。

二人でベッドに腰掛ける。

「話って?」

そう尋ねるオレだが、薄々気付いてはいた。

「アリツェのこと」

「何かあるのか?」

「何もない。艦の仕事も一生懸命手伝ってくれている。素直だしいい子」

ツェラの言う通り、アリツェはとってもいい子だ。

全く「侵攻者」らしさも感じられないし、何かを探っているような様子もない。

「だから不安。彼女は人に近すぎる」

「だから、か……」

「この戦いで彼女の存在はジョーカー。良くも悪くも」

「でもジョーカーってことはいい使い方もできるんだろ?」

「そう上手くことが運べばいいけれど」

「上手くいくさ」

「根拠は……?」

「まぁ、無いけどな」

ツェラが呆れたようにため息をつく。

けど、その顔には優しい笑みが浮かんでいた。

「実際さ、悪いことじゃないと思うぜ。アリツェは頑張ってくれてるし、どんどんいろんな面を見せてくれてる」

「うん。クルーにも毎日挨拶してる。みんなアリツェをかわいがってる」

「なんか半分くらいはマスコットみたいな扱いな気はするけどなぁ」

「確かに……」

それでも少しずつ馴染んできていると言うことだ。

ばあちゃんがアリツェに艦の清掃を任せたのもアリツェの存在がみんなに認められてきたからだろう。

多分。

「掃除が面倒だっただけかもしれないけれど……」

「ばあちゃんがよく掃除してたからな……」

司令官だというのに仕事がないとかおかしな話だ。

「てか、掃除をアリツェに任せたらそれこそばあちゃんの仕事はなくなるんじゃ……」

自分で言っててバカバカしいが、実際そんな状況なのが困り物。

「今は張り切ってスパローの整備をしている」

「げ……」

嫌な予感しかしないことを言わないでほしい。

「やることないので私も戦いますよ!」とかばあちゃんなら言いかねない。

「可能な限り阻止する」

「頼むぞ」

ばあちゃんにしろ、ゲッコー艦長にしろ最高の戦力なのは違いないがオレ達の立場というものもある。

出るとしても最後の切り札だ。

「ま、アリツェは大丈夫だ。きっとな」

「うん。信じたい」

「ちょっと息抜きしようぜ。アリツェも一緒にさ」

「ビオトープ。案内する?」

「おう」

場所は変わってビオトープ室。

なにやらアネシュカとナっちゃんが盛り上がっている。

「何したんだ?」

「見て見て、かわいいっしょー」

アネシュカが見せびらかしているのは紫色でまるまるとしたキャラクター。

これは――

「ブドオンじゃねーか! わぁ、懐かしいな」

「もしかしてベっちゃんもこのキャラ知ってたりするんですか!?」

「ナっちゃんは知らないのか? 大人気キャラなのに」

「そーなのよ! 知らないなんてありえなくない!?」

「ナニをしてるのデスか?」

「お、アリツェか!」

「見て見てーブドオンかわいいっしょ!」

アネシュカから手渡されたブドオンのマスコットを手に取りまじまじと見つめるアリツェ。

上下左右くまなく観察している。

「ナンなのデスかコレは? 紫色で血色がワルいデス」

「ブドウだしな」

「他にも色々あんのよー。どじゃーん」

「うわ、すげぇ」

ブドオンにはたくさんの仲間がいる。

それはもう無数にと言ってもいいほど。

「こんなに同じの集めて意味とかあっちゃうんですかー?」

「同じのじゃないし。コレはヴァインシュトックでコッチのがヴィーニュ!」

「コイツはグレープ、こっちはフロズニィだっけ」

「全部同じじゃないですかー!」

「全然違うし!」

「ウーヴァは毛が陽気にカールしててヴィノグラートは目が半開きだ」

「ウィーティスは両目の色が違うしイナブは目が一個で毛がないし」

目の個数と色、頭部に生えてる謎の毛の本数や髪質から無数とも言えるブドオンは判別することができる。

そんなうちの一つをアリツェはマジマジと見つめていた。

「このブドオンはナンというのデショウ」

「ソイツはソーローだな。一つ目毛なしでイナブと似てるけど目の位置がちょっと右にずれてる」

「ドンなキャラなのデスか?」

「んー、この子はね他のみんなより出来が悪くてそれを気にしてる子なんだよね」

「ナルホド、出来損ないデスか……」

その言葉にどういう意味があるのかわからないが――

「気に入ったのか?」

「……」

アリツェはなにも言わないが気に入ったらしいことは誰の目にも明らかだ。

「ソイツあげるわよ。たくさんあるしね!」

「……イイのデスか?」

「モッチロン! 仲間だもんね!」

「……仲間」

「大切にしなさいよ」

「ハイ」


挿絵(By みてみん)

ステラペディア

「ブドオン」

有名なアニメ映画に登場するキャラクター。

ブドウに手足が生えたようなキャラであり、目の数と色、頭から生えた謎の毛で判別できる。

もう完全にミニ○ンズとか言ってはいけない。

基本的には紫色だが緑色マスカットもいる。


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