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第四話 たいりくの本

 それから更に二ヶ月。わたし自身は前世の記憶をそのままに生まれ変わってるので、筋肉さえちょっと戻れば歩くことは簡単だ。感覚(・・)は分かってるんだから。


 壁に手をつきながら、おっきっき。おっ、案外簡単に立てるじゃん。このまま歩ける? 歩ける?



……歩けるぅっー!!



 フーッ!! 大地を踏みしめる喜びを知りやがって!!


……落ち着こう。


 こっちで生まれ変わって何ヶ月経った? 最初はそもそも動けなかったし、ハイハイだけでも限界があったし……わたしはようやく自由になったのだ!


 あ、今のセリフ、めっちゃ邪神っぽい。気のせいか?



 歩けるようになればやることはただ一つ。情報収集だ。わたしだって馬鹿じゃなくもないけど何からすべきかくらいは分かってる。

 幸いにして、この家にはどうやら本が沢山眠っているらしい。どこに眠っているかは分からないけど、お母さんがいつも読んでいるから間違いない。


 まずはそれがどこにあるか見つけよう。お母さんに聞くか? 教えてくれるかな?




「本?」

「うん」


 今まで喃語でしか話せなかったわたしも、ちょっとずつ話せるようになってきた。理由は歩けるようになった理由と同じなので割愛。

 お母さんに直撃してそう聞くと、お母さんはきょとんと首を傾げた。可愛い。今日も推しが可愛い。


「本なんてどうするの?」

「よむの」

「あらあら。まだ読めないでしょ?」

「よむのー!」


 わがままっぽく言ったら折れてくれた。なんか物置があるみたい。そこにこの前みたいな歴史書とか小説とかあるみたい。昔から本が好きだからちょくちょく買ってるんだって。ナイスお母さん。ちょっと借りるよ、永遠にね。



 とは言ったものの。流石に約一歳児が届くようなミニマムサイズの棚はなかった。ここもお母さんに協力してもらって、面白そうな本を片っ端から積み上げてもらった。

 何だかお母さんもわたしのことを『変』だとか『妙に頭が良い』だとか察し始めているらしく、特に何も言わずにやってくれた。感謝感謝。


 さて……取ってもらった本は全部で一〇冊。はじめはこんなもんでしょう。どれから読もうかな。ジャンル別に固めておいたほうがいいか。


 歴史書が二冊、魔法教本が四冊、小説が二冊、地理の本が一冊、神話が一冊。魔法教本はあとに置いておこう。どのみち今すぐには使えないだろうし。小説はどっちかって言うとただの暇潰しだからいつでもいい。

 やっぱり優先すべきは歴史書と地理、それから神話か。【ネヴェルカナン】だっけ? ここがどんな世界なのかもっと詳しく知る必要があるし。

 歴史書……いや、地理の本からだなぁ。ここにこれがあった、とか言われた時に分かりやすくなるし。




〜四時間後、地理、歴史書読了〜


 ふむふむ、なるほどなるほど。だいたいわかった。


 大雑把に言えば、この世界は三つの大陸から成っている。


 最も大きな大陸から順に、【グランバレー】、【ミドルフォール】、【リットモール】だ。歪な三日月のような形をしたグランバレー、三日月の欠けた側にひし形のような形のミドルフォール、そしてグランバレーを挟んでその反対側に小さな丸型の大陸、リットモール。この三つの大陸をまとめて、【ネヴェルカナン】と呼んでいる。

 他にも細々した島国とかはあるみたいだけど、まあそこら辺は今はいいや。大まかな地理を覚えたかっただけだし。


 で、現状ネヴェルカナンで一番権力を持っているのが、このグランバレーにある【オ・ガ帝国】。なんとグランバレー全体の六割を占める大国家らしい。何だそれチートじゃん。

 次に、ミドルフォールにある【聖国ブラハマン】、同じくミドルフォールの【ジル・イル】、グランバレーの残りを占める【バスラオ連合国】が大きい。リットモールには特別ここらに次ぐ大国はなく、小国や村が集まっているだけ。分かりやすく言うと田舎だ。


 この中で敵対関係にあるのが、オ・ガ帝国とバスラオン連合国。理由は簡単で土地の奪い合い。帝国はどうにかして大陸の残りを占拠したく、連合国は帝国を倒してその領土を広げたい。

 最後に戦争があったのは三〇年前。そこから現在は休戦状態にあるらしいけど、『終戦』じゃあない。いつまた戦争が起きてもおかしくないらしい。


 一方、ミドルフォールにある二つの大国はこういう争いごととは無縁らしい。大昔、話し合いと共に建国されたおかげで、そこにわだかまりが無いからだそうだ。むしろその周りにある小国が戦争をふっかけようと息巻いているらしいけど、大国相手だから手が出せないと。


 リットモールは田舎なので割愛。


 将来的にどこに向かいたいかと考えると、比較的平和な【聖国ブラハマン】か【ジル・イル】。聖国は神さま信仰とかちょっとキツイらしいから自由度の高い【ジル・イル】辺りに行きたい。



 ただなぁ。




「……まさか、どいなかしゅっしんなんて……」



 この村、実はリットモールである。


 ど田舎大陸のその端、大陸から遠い方の端にある、小さな小さな村。そこに、この村はある。おいおい嘘だろ、剣聖ちゃんともあろうわたしがど田舎生まれか? 冗談キツイぜまじか。

 いずれはここを出るだろうし、別に出身がどうとか関係ないけど……ジル・イル、めっちゃ遠いやん。まじか。



 はぁ……。



 なんか、生まれ変わってからため息ばっかり出てる気がするなぁ。あれ、そんなに出てない? 承知。


 ま、地理と歴史はある程度頭に叩き込んだし……、


「神話かぁ……神さまがいるみたいな話は聞いたけど」


 地理と歴史の本を除け、神話の本を手に取った。何でこんなに分厚いん? 馬鹿か?


 表紙には後光を放つ翼の生えた男の絵。神さまか人かは分からない。

 表紙をめくると目次、どうでもいいのでスキップ。二ページ目は、神さまたちの系譜だった。


 どうやら、光の神イヴと闇の神アダムには、連なる神さまたちがいるみたい。武器の神、とか、魔法の神、とか。そういうもの。神さまの子供って書いてあるけどそもそも神さまって子供できるもんなの?

 特に気になる神さまはいない……あ、いや、こいつ。こいつちょっと気になる。



 魂を司る神、シエレー。



 もしわたしの生まれ変わりに神さまたちが関係しているのなら、こいつ辺りが関連してそう。だって魂の神さまでしょ? 元の世界からこの世界に魂を運んできて……とかそういうこと?


 うーん、分からんな。



 神話の本も内容だけは覚えたけど、特に今有用な情報はなかった。まあ、そうだろうとは思ってたから別にいい。必要な時はまた別で読もう。



 さてさて……では、お待ちかねの魔法の本……と、いきたいところだけど。



「……ねっむ」


 あり得ん眠い。この体に叩き込むにはちょっとハードすぎた。ちょっと寝ないと死ぬかもしれん。寝るか。また起きてから続きをしよう。



 それじゃあ、おやすみなさい。


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