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第二話 わたし、赤ちゃんになりました。

 まあまあ。アニュエちゃんほどの天才(物理)になると、こういう不測の事態にも強いわけです。大体わかった。


 つまり、こういうことだよ。


 前世わたし(アニュエ・ストランダー)、誤って毒キノコを食って十五歳で死亡。


 現世わたし(アニュエ・バース)、生まれ変わりを果たす。苗字は名札に書いてあった。


 こうだ! 簡単だろ!?


 え? 馬鹿でも分かる? あっそう……。


 というか何回見ても間違って食べた毒キノコで死亡ってダサいな。もし人に聞かれたら邪神その二と戦って戦死とかって答えるか。そうしよ。



 はぁ……。



 で。さっきわたしを抱き上げにきたのが、わたしのお母さん。ラタニア・バース。歳は知らないけどまだ若そう。栗色の髪に、お胸は小さいけど超美人。


 そのお母さんを呼びにきてたのがわたしのお父さんで、イング・バース。あまりパッとしない見た目でなんで二人が結婚したのかは分からん。


 それから……名前は分からないけど、小さな女の子がいた。お姉ちゃんかな? だとしたらいいね。前は一人っ子だったし。お姉ちゃんと遊んだりとかしてみたかったんだよね。



 とまあ、こんな感じ。そんなに分かったことは多くないけど、取り敢えずあの二人が巨人でわたしを食べようとしてたわけじゃないことが分かって良かったよ。


 そもそも、名前が『アニュエ』って、奇跡的に同じ名前になったの? そんな奇跡ある? まじ? 結構珍しい名前だよ?



「アニュエ〜」

「ばうあー」


 この声は……お父さん。何しにきやがった。おほん。何しにきたの?


 お父さんは部屋に来るなり、わたしのそばに座って、何故かわたしの頬を突き始めた。おいやめろ。それ結構痛いな。おい馬鹿。


「あぁ〜!!」

「おぉっと……ごめんごめん、痛かったか?」


 痛かったわ。普通に。痛かったわ。


 頬突きをやめ、今度は抱っこモードに移行する父。うわああああ首支えろ首! 折れるぞ!


 と思っていたら慌てて支えてくれた。良かった、知識としては持ってた。持ってなかったら死んでた。覚醒して数時間後に死んでたかもしれない。



 それから暫く、何が楽しいのか抱っこしたり揺らしたり。気の済むまでおもちゃにされたわたしは、なんだか疲れ果ててしまった。赤ん坊業界って思っていたより黒い業界なのかも。やばいわ、これ。




 お父さんが帰ってから、わたしはまた色々と考え始めた。


 そもそも、生まれ変わりとは言うけれど、何故わたしは前の記憶をそのままに生まれ変わったんだろ?

 生まれ変わりって話自体は、まあ、迷信も迷信だけど前の世界にもあった。本当かは分からないけど。


 でも、実際問題、わたしが会った中にそんな人はいなくて……だったら、なんで私は? なんで私の記憶は前のままなんだろ?


 うーん……そもそもここって、前と同じ世界なのかな? それとも、別の世界?


 なんか、考えれば考えるほど疑問が増えていくっぽい感じがするなぁ。そこら辺を調べようと思ったら流石にこの体じゃ無理だしなぁ。もう少し成長しないと。



 ま……気長にいけばいいでしょ、気長にいけば。





   * * *






 その晩、お母さんのお乳を飲んでいる最中、あの女の子がやってきた。お姉ちゃんかもしれないあの子だ。

 お母さんに似た栗色の髪。顔も……いや、お父さん要素薄いな。まじか。わたしがお父さん味強いとかか? やめてほしい。



「どうしたの、オリビア」

「まま……わたしもいもうと、みたい」


 ふむふむ。オリビア……わたしのお姉ちゃん確定! ふー!


……おほん。失敬、興奮しすぎました。


 いいよいいよ。お姉ちゃんにじろじろ見られるくらいならお安い御用。その抱いてるクマさんの人形も一緒に見る? 見る?


「アニュエは可愛い?」

「うん……かわいい……」

「そう。あなたもお姉ちゃんね、オリビア」

「うん!」


 可愛いなぁ。わたしの方が妹なんだけど。いや、わたしは前世の分も合わせれば十五歳分追加されるし……この場合どうなるんだろ? まいっか、どっちでも。


 お姉ちゃんはそれで満足したのか、とたとたと小走りで出ていった。可愛すぎるなぁ。将来的にシスコンになっちゃうかもしれない。お姉ちゃん大好き。お願いだからグレないで。




 それからまたお乳を飲んで……赤ちゃんってやっぱり寝るのが仕事なのかな? お乳飲んでるだけで眠くなるんだけど何で? おかしくない?

 そのまま……ダウン。気付いたら朝だった。


 起きたら、柵の隙間からお母さんの寝顔が見えた。うっわ美人何この人誰? わたしのお母さん? じゃあ頼むからお母さん寄りのスタイルにしてくれ神さま。お願い。


 対するお父さんは……あれお父さんいない。お父さんは別室で寝てるか……もしかしたらもう仕事に出てるのかも?


 そう言えば、お父さんは何をしてる人なんだろう。気になるなぁ。それによってわたしの将来若干決まっちゃうところあるし。

 欲を言うなら……いや欲も何もないなぁ……ストレスが溜まらなさそうな仕事……旅人くらいしか思い付かないんだけど……。


 とは言っても、わたしはまだここから動けないしなぁ。

 え、ちょっと待って。冷静に考えて動けるようになるまでどれくらいかかるの? 赤ちゃんがハイハイするのって大体八ヶ月とかそんなもんだっけ? そもそもわたし今何ヶ月目なの? 流石に生まれて一週間とかそういうこたぁないよね?



 えー……長く見積もってあと五、六ヶ月としても長いなぁ。耐えられるかなぁ。そんな長い間耐えられないよなぁ、普通に。記憶持ったまま生まれ変わるデメリットってこういうところかぁ。なるほど。

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