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生け贄者の末路。選定者の楽観的思考。
この世は平和に見えて実は違う。そんなことを知る者はいない。ごく一部を除いては。この物語は、そんなごく一部の知るものに関する物語である。そして本来世の中に知られるべきでない事実が知れ渡ってしまう恐怖の物語でもある。
「おっはよ~~」と少し気の抜けた感じで挨拶をする若者がいた。彼こそが冒頭のごく一部の知るものの一人。名を「栄:という。彼の職業は異質だ。職業は「贄選定師」。その名のとおり贄。つまり生贄者を選ぶこと。何に対しての贄かはのちのち説明することになる。選び方は彼の偏見でその決定権は彼だけでなく、先ほど申し上げたほかの知る者に対し「OK」をもらわなければならないという、システムだ。ただ、ほとんど「NO」は出ず即決で「OK」が出る。理由は単純だ。選定するものがいずれも、凶悪な犯罪者だから。だが、最近は様子が違ってきた。というのも、「栄」が私怨で剪定をしだしたのだ。そういう事態に備え他の物たちがいるのだが、彼らはそれに対しても「OK」を出してしまう始末。なぜそんなことがまかり通るのかは今後のおはなし。