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授業中のひとこま
「ぱちん」
気の抜けたシャボン玉が割れたような音が、クラスの中で響いた。
その音がした窓側の前方へ向くと、なにやら机をぼーっと見つめている加藤がいる。
他の人らも音に気がついたらしくチラチラと顔を机から覗かせたりしていた。
「こら、またスマホでも弄ってんだろ、さっさと出しなさい」
先生はスマホを使って音が出たと思っているようだ。しかしそんな澄んだ音は出せないはずなのにと思うが。
「ぐずぐずしてないでさっさと出しなさい、反省文書かせるぞ、ん?」
くちゃ、くちゃ、くちゃ
何かを食べている音がする。水っぽいような、生っぽいような。
「おいおい・・・、ガムまで食べてるのか、こりゃ反省文5p確定だな」
ぎょろり、とずっと下向いていた加藤の目が、先生を見据えるかのように向いた。その瞳はまさに狂気の一言に尽きる位、暗く、鋭かった。
「お、おい加藤・・・」
その姿を見て思わず先生は怯んだ、しかし先生だけでは無かった、クラスの全員がその異質さに気圧されていた。
「・・・お前、その 左 手 は ど う し た ん だ ?」