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孔明さまのいうとおり!

作者: 1

 ーー西暦234年秋8月23日 中国大陸 五丈原ーー


 この日、大陸を席捲していた三国のうちの二国、蜀と魏の戦地であるこの五丈原に一つの巨星が墜ちた。

 諸葛亮孔明。

 中国史最高の政治家、兵法家とも言われた天才が死んだ。

 人生50年と言われるこの時代に54歳という人生をもって戦い続けた男だった。

 病に伏してもその智謀は衰える事はなく、魏の司令官司馬懿とも互角以上に渡りあった。

 その死は蜀の人間は嘆き悲しみ、魏の人間さえもその死を惜しんだ。

 魏の司令官司馬懿は陣払いした蜀の布陣跡を見てこう呟いたという。

 ーーまさに天下の奇才。孔明の如き人間は二度と現れないだろうーー。

 と。

 その死を悼み、墳墓は漢中の定軍山に質素に葬られた。

 そして孔明のいなくなった蜀は滅亡の一途を辿るのだがーー。



 それはまた別のお話。

 え?そっちが本編じゃないかって?

 いいの、私がそうしたいんだから!

 そう、これから始まるのは死んだ私が行き着いた先の話なのだからー。



 ーーーーーーーーーーーー



「はっっっ‼︎」


 いきなり目が覚めた。

 激しい動悸に、荒い息づかい。体中汗だらけ。

 ちょっと一息つこう。

 はい、深呼吸。

 すー、はー、すー、はー。

 よし落ち着いた。

 で?ここは何処ぞ?

 たしか私は五丈原で、魏延のバカたれが七星延命の儀式を邪魔したからそのまま陣没した筈。

 はて?

 何で私生きてんの?

 しかもこの屋敷、漢の様式ではない。

 床に直接木組みの枠を四角に組んで、その中に灰を敷き詰めている。

 これは炉の一種か?

 ほうほう、これはなかなか考えられている。

 ここで火を熾せば部屋全体を暖める暖房にもなるし中央で調理する事もできよう。

 ん?

 この脇に置いてあるひょろ長い小さな瓶に何やら嗅いだ事のある匂いが。

 ちょっと一口。

 …こくっ。

 ⁈((((;゜Д゜)))))))

 なんだこれ!美味いぞ!

 酒か?酒なのか?

 漢の酒とは違うがなんだ、水のように呑めるし、しかも温かい!

 ちょ、もう一口。

 ごくっ、ごくっ。

 っ〜ぶはぁ!

 これは死人も生き返るわ!

 うん、死んだ私が言ってんだから間違いない。

 あ、二口呑んでしまった。

 しかし…一体全体ここはどこだ?

 この甘露につい脱線するところだったが。

 ちょっと調べてみようか。

 よっこいしょ。

 ……?

 なんか、身体が、重い。

 ああ、胸か。

 こんなでっかい南瓜みたいなのを二個もついてりゃそりゃ重…。

 …………………。

 え?

 待て待て。ちょっと待て私。

 落ち着いてもっかい見てみよう。

 そろっ…。

 ぷるん。

 うん。間違いない。


「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ‼︎」

「きゃいっ‼︎」


 きゃい?

 人が居たのか!

 外から声がしたぞ。

 ガバッと起き上がり、ダダダダダッと戸を開ける。

 ガラッ!


「聞きたい事がある!」

「きゃああああ⁉︎」


 戸を開けて見るとそこにいたのは少女。いや幼女とも言える歳の女童だ。

 涙目になりながらその身にあわない、大きめな鉈を手にしながらへたり込んでいる。


「あ、目が覚めたのですね。ちょっとだけ待ってください、今薪を割っちゃいますから…」


 幼女が両手で鉈を振りかぶるとその重さで後ろ側に千鳥足だ。

 もっとも千鳥足の用法が違うがこの際考えない。

 その様は千鳥足そのままだ。

 そして。

 べちゃっと後方一回転した。

 またまた涙目になって土まみれの顔を腕で拭う。

 なんだか…見てて…泣けてくる。

 そう思っていたらまたコケた。


「ああ、もう後で私が手伝うから話を先に聞かせて?ね?」

「…はい」


 囲炉裏とかいうこの暖をとる四角い木枠の対面に幼女、もとい童女が顔を水で洗ってちょこんと座る。

 幼女も童女もどっちも同じ?

 そんなことどーでもいいの。

 とりあえずこの状況を説明してもらわないとどうしようもない。


「で?これは一体どういうコト?」

「その前に。私は七宝。幻術師を生業にしています」

「幻術?奇門遁甲とかそういうの?」

「いえ、大陸の術式とは起源と根本から違うので。全く違うモノと考えていただいて結構です」

「え?大陸?ここって中華じゃないの?」

「ええ。ここは大陸よりもずっと東の果てにある中つ国。または蓬莱。または日の本。あなた方の言葉で言えば倭…と言えばよろしいでしょうか?諸葛亮殿?」

「…蓬莱なら耳にしたね。遥か古の始皇が不老不死を探して徐福に向かわせた地がそうだったね」


 はぁ、やっぱり蜀でも魏でも呉でもなくぜーんぜん違う土地か。

 ……ん?

 ちょっと待って。


「ね、七宝ちゃん、さっきなんて言った?」

「え?なんのことですか?」

「七宝ちゃん、私の事なんて言った?諸葛亮って言わなかった?」

「え?ええ、私貴方を喚び招いたのです。諸葛亮孔明殿」

「違うよ?」

「でしょう?…え?いま、なんと?」

「だから違うよ?諸葛亮孔明じゃないよ?」


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・( ゜д゜)


「ええええええっ⁉︎じゃ、じゃああなたは一体どこのどちら様なのですかぁ?」

「私?孔明」

「…はい?えっと…どういう事ですか…?」

「あー、その前に今ってどんな時代?私が生きていた時代と同時期?」

「え?あ、いいえ。今は永禄4年であなたが生きていた時代から1000年以上後の未来と言えるでしょう」

「はぁ〜1000年。じゃ知らないのも仕方ないかぁ。私はね、諸葛麟孔明!諸葛亮は私の兄ィ」

「諸葛…麟さん…?」

「そう。あまり知られていないけどね、私と亮兄ィは双子なのよ。でもね、実は私たち2人で一人前でさ。

 兄ィは政治、私は軍略しかできなくてね、だから2人揃って諸葛孔明ってワケ」

「……」


 あーやっぱね。(あざな)は二人で共有してたし、この事知ったひと皆そーゆー顔するのよね。


「じゃ、じゃあさっき叫んだのは?なんじゃこりゃあって言ってたじゃないですか?アレっていきなり女になってたから叫んだんじゃなかったんですか?」

「違うよ〜。生前の私って胸なかったのよ、それが気づいたらこの巨乳でしょ?そりゃなんじゃこりゃあってなるよ」

「……」


 ありゃ、完全に茫然自失してる。

 でも仕方ないね。事実だもん。さてさらに聞きたい事があるんだけど…まぁ遠慮はいらないか、勝手にそっちが喚んだんだから。


「でさ、なんで七宝ちゃんはさ、私を喚んだワケ?」

「ええっと…私、見様見真似で陰陽道を…やってみてですね、その中に泰山府君祭…というのを見つけて。ちょっと術式を組み直して…過去の人物を喚び出すようにして」


 ああ、七宝ちゃん、もう涙目だわ。で?泰山府君?

 死者を裁く仏教の神様だっけ?

 そっちは兄ィの方が詳しかったんだけど。

 しまったなぁ。

 勉強しておくべきだったかな?

 しかしこの子、一体いくつ?

 陰陽道だか泰山府君祭だか見様見真似でやろうとして

 できるんなら見た目通りの年齢じゃないでしょ。

 まぁ兄ィが本命なら失敗もいいところだけどね。


「それで、ですね、大陸史最高の軍師にして宰相だった諸葛亮殿のお力を借りたくて…先日近くで崖から落ちて亡くなられた方を依代にして…あなたを…喚びだしたんです…」


 ちょ、このコ、涙目でサラッと他人のこの体を利用したってコト?

 怖っ!

 このコ、実はかなり黒いんじゃない?


「…で、兄ィを喚び出して何をしたかったの?」


 その時。

 その子の目が怪しく光ったのを私は見逃さなかった。

 あ、やっぱりこの子あっち側か。


「…天下布武。」

「…は?天下…ふ、ぶ?」

「天下を武を以って布く。それが私の夢!だから!最高の軍師である貴女と!諸葛亮殿のお力が必要なのです!力を貸してください!私の幻術と貴女の占術と軍略!があればきっとできます!諸葛亮殿がいれば盤石でしたが!大丈夫!天下を取った暁にはこの国の半分を貴女に差し上げましょう(ウソ)!さぁ!いざ!私とともに!覇道の道を歩みましょう‼︎」

「嫌だ。」


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・( ゜д゜)(二回目)


「そ、そんなこと言わないで…」

「い、や、だ」

「なんで?どうして?天下ですよ?貴女と兄上様が一生かけても果たせなかった大事業にもう一度挑めるのですよ?何が不満なのですか⁉︎」

「だって中華じゃないじゃん。ココ」


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・( ゜д゜)(三回目)


「見縊るんじゃないわよ!私は中華全土が欲しかったの!こんなどことも知れない辺境が欲しかったわけじゃない!私の神算鬼謀は全てを呑み込む!あと10年あればきっと魏も呉も席捲してやれた!」


 あ、ヤバい。

 つい本音が出た。

 兄ィは確かに漢の再興を目指してたんだけど私は違うんだよね。

 自分の才覚で天下を、中華を奪う!

 これが私の大目標。

 それが何が悲しくてこんなちっぽけな国取り合戦しなきゃなんないのよ。

 兄ィが怒ったら怖いから言わなかったけど、先に死んじゃったからその後は私の好き放題。

 結果蜀の財政は傾いたみたいだけどそんなの私が生きてりゃなんとでもなった訳だし。


「とゆーわけで。私は第二の人生をゆっくり謳歌するわ。じゃーね」


 さて、ここを出てどうしようかな、と思っていたら七宝ちゃんが私の足を掴んでくる。


「あああ!待ってください!信長が!このままじゃ信長が天下を取っちゃうぅぅ!」

「知らないわよ、誰よ、信長って?」

「尾張の大名で最近力を伸ばし始めた勢力です…。その勢いと姿は貴女の国で言えば曹操に比す、とか」


 ピクッ。

 曹操?

 あんな文武ともに中途半端な奴に似た男が天下?


「笑わせんじゃないわよ…」

「えっ?」

「曹操?あんな奴、一度も私に戦で勝てなかったヘッポコじゃない。そんな奴に似た奴が天下?ハッ、おかしすぎておヘソでお湯がぴーぴー言っちゃうわ!」

「ひぇぇぇ…。」

「…いいじゃない。曹操の奴がこの時代でも活躍してるっていうなら私だってやってやろうじゃない…!」

「じゃあ⁈」

「七宝ちゃん、勘違いするんじゃないわよ。私が戦の仕方を教えてやろうってだけなんだから。まぁついでに天下を取っちゃったらごめんなさいね」


 そう言ってドン!と踏ん反りかえって七宝ちゃんに言い放つ。


「さぁ、まずはこの国の文化、歴史、情勢、趨勢、経済、軍閥、兵器、人材、地学、天候…その他諸々を私に教えなさい!」


 裏の伏龍といわれた私が再び天下を窺う…。

 規模は大きく落ちるけど私の力をまた愚かな奴等に見せつけるのも悪くない。

 さぁ、新しい天下布武の始まりの一歩目を始めましょうか!



ども1です。

あらすじでも軽く触れましたがお試しで考えたお話をちょっと投稿してみました。

諸葛亮孔明をたまたまググったら妹がいたという記述が。

そこからピン、と閃いたお話。

因みに七宝ちゃんはかの果心居士。CV悠木碧。

諸葛麟ちゃんはオリジナル。CV竹達彩奈。

もう自分の脳内煩悩メーカー発動笑

なので、続編とかはあんまり考えてません(笑

出来も1時間程度で考えたのでよくありません。

ではまた何処かで( *´艸`)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 新着の短編リストで見掛けて読ませて頂きました。 1時間ほどで、これだけ書けるとは羨ましい限りです。 孔明に妹がいたという説は始めて知りました。 三国志演義に登場する女性は、貂蝉(ちょうせん…
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