第七章「家のすごし方」
はい、これも前半・後半?で分かれる予定です。
二人で家に着くと一旦ここで別れる。
「じゃあまた後で」
「あとでー」
そう言って俺は家へと入るとキッチンの方から母さんが出てくる。
母さんはエプロンをしており、家の中が美味しい匂いが充満しているところから料理をしていたことが見て取れる。
「あれ? 奏ちゃんは?」
「一旦帰るってさ」
「あら、そうなの」
「そうだよ」
そう言い捨て俺は家の中に入り、二階の自分の部屋に戻るために階段を登り、扉を開けると、ベッドに寝ている奏がいた。
俺はため息をつくと、鞄を机の上に投げ捨て、ベッドまで近づく。
「なにしている」
「くぅ………」
可愛らしい寝息を立てているが、どう考えてもこの短時間で寝れるわけがない。
どこかのメガネじゃあるまいし。
青い狸だけに狸寝入りっていうわけか。
「しょうがないな」
俺は机の引き出しをあるものを取り出し、再びベットに近づいて奏の両手を手に取る。
そして手首にそれをかける。
それはガチャリと音を立てて、両手首に二つの輪とその間に鎖がつながって銀色の輝きを放つ。
いわゆる手錠と呼ばれるものである。
さすがにその異常はわかったみたいで飛び起きるが、時はすでに遅く、ちゃんとハマっている。
「ひなた………」
俺に向かって奏は睨んでくるが、俺はそんなこと気に止めず、机の元に戻って椅子に座る。
そのまま俺は勉強し始めようとしたのでたまらず奏は聞いてくる。
「ひなた、どゆこと? これ、緊縛プレイ? それなら言ってくれればいいのに」
「なにが緊縛プレイだ、ただ返却してあげただけだっ!」
以前こいつに寝てる隙に手錠をかけられたことがあったのだ。
猿轡と目隠しもセットでね。
そこから放置されていたわけだが、そんなに長くされなくて、目隠しを取った奏本人が言った言葉として、
「放置プレイどうだった?」
というものだった。
その時に持って帰り忘れたのがその手錠ってわけだ。
ちょうど寝ていたから意趣返しをしたというのがこの手錠ということになる。
「ちょっ、どうしてこんなことするの?」
ここまで来たからには勿論返す台詞は。
「放置プレイどうだった?」
「キメ顔って言ってるところ悪いけど放置って割りにはそこまで放置されてないし、私がひなたにしたからって普通女の子にこーゆうことする?」
「猿轡と目隠しがないだけましだと思え、というかいつも言っているが窓から入るな、窓は玄関じゃねぇ」
奏の家とは窓から窓へと渡り歩けるほど近く、その渡り歩ける窓というのが、丁度俺の部屋と奏の部屋の窓のことである。
完璧に設計の時点でこうやって部屋から部屋へと渡り歩けることが想定して作ってるとしか考えられない。
もし隣の家の人が犯罪者とかだったらどうするつもりだったんだろう?
「私の玄関はここなのっ! っていい匂い~、カレーかな?」
「多分な」
「私も食べたいっ! 早く手錠を離して~」
「まだできないし、奏は出来上がるまで適当に寝てろ」
俺はそのまま鞄からノートを取り出し勉強に取り掛かるが、勿論そんなに簡単に奏もさせるわけがなく……。
「いぃやだぁー、ひまぁああ、ひなた、面白い話してぇえええ」
「勉強するから黙ってろ」
「ひなたぁあああああ、そんなのやめよ?」
そのまま無視して手を動かしているものの定期的に俺の名前を呼んでくるもんだから集中できやしない。
だけども我慢だ。
私にはすべき使命が___。
「ひなた、好きだからこっちむいて?」
「まじでっ!」
思わず振り向いてしまうが、振り向く間でそんなはずがないという思いが芽生え、振り向いたあとで完璧に後悔した。
奏は可愛らしく微笑み、ちょろっと舌を出していた。
その表情で察した、だましやがったな……?
「ひなたって本当単純だよ……ごめんごめん、そんなに怒らないでー」
話の途中で俺は立ち上がると先ほどの威勢はなくなり下手に出るが、俺は足を止めずにベッドへ近づく。
はい、どうしたか?
奏の家の近さはよくある幼馴染の家を思い浮かべて良いと思います。
まあまったり(?)回ではあったと思います。次回更新もまた水曜日にします。