第六章「陽迎の理由」
今回は少し短いです。ごめんなさい!
そうやって場を荒らして暫く静かのままでいると、やっと頭の混乱から治った部長が恐る恐る俺に聞いてきた。
「なぁ、結局説明すると言った割に何一つわかってないんだが」
「すいません、こいつ場のノリで適当に言うだけなので、代わりにというか元通りに俺が説明します、陽迎はいうならドMでうざくて、ブラコンなんです」
「はい?」
「兄恐怖症ですが、別に怖いっていうだけで嫌いってわけではないみたいで、というか大好きみたいで、さっきみたいにアタックしてくるんですが、恐怖で気絶するんですよ、今みたいに、で、それなのに懲りない理由として、この行為自体に快感を感じるみたいでわざと近くに来たりして味わってるみたいです、たちが悪い」
「納得はできないが理解はした。 ただひとつ腑に落ちないのがある」
「なんですか?」
「普通は恐怖症持ちになった理由を話すのはマナー違反かもしれないがそれが知りたい」
「まあ不思議かもしれないですよね、話します。 今、俺の身長は平均的なんですが昔の俺は成長が早かったみたいで、成長の遅かった陽迎はそれが怖かったみたいで、同じ年のはずなのに大きくなってしまっていた俺が恐怖の対象になっていたみたいで、そのくせに嫌いになれなくて、毎日恐怖を味わっていく内に体がそれを覚えちゃったみたいなんですよね。 不思議なことになぜか痛みまでもその味の中に入っているみたいで、結果こんなんなんですよ、親が言うにこんな風に育てたつもりはなかったと号泣してましたがね」
「そりゃあそうだろうな、黙っていればこんなにカワイイのに中身がこれじゃ」
部長は先ほどの絡みと俺の話で陽迎の残念さが理解出来たみたいだった。
「だから入部させるのはちょっと」
「そうだ………い、いや駄目だ、駄目だ、そういう差別はいけない、入れるぞ」
無理張って入れようとしなくてもいいと思うんだがなぁ。
どう考えても陽迎に部室取られそうな気がするんだけど、まあ部長がいうならしょうがないや。
憂鬱だ。
「じぁあ後は任せましたよ、俺達は帰ります」
「あぁ、わかっ、ま、まって陽迎君はどうするつもりだっ!」
「任せます、では」
「ちょっ、まってくれ」
俺は急いでこの空間から逃げ出すために奏を連れて、教室を出る。
遠くから俺の名前が聞こえるが、無視しながら歩を進めていく。
暫くしてその声が聞こなくなって俺は奏にしゃべり始める。
「奏さ、怖いのはわかるがさすがに喋らなすぎじゃねぇか」
「あのひと怖すぎるよ、だめだよ、思考が真っ白だよ」
「そういってもなぁ、俺だけじゃあ話持たせるのは難しいとおもうんだけど、その件についてどう思う?」
「ひなたなら、大丈夫だよぉ、私が保証する」
グッ、と奏は親指を突き出す。
とてもかわいらしい動作だが、大丈夫とは思えない。
「はぁ、お願いだから少しでも話に参加してもらえないかな」
「明日から努力する」
「努力しないフラグなんだけど、お願いな」
「うん」
こうして俺たちは家へと帰っていった。
今回は陽迎のフォビアの理由が明らかになって終わりです。
そろそろがんばらないといけないかも・・・