第四章「フォビア部の出自」
翌日。
適当に授業をこなし、問題の放課後まで過ごす。
そして放課後。
「なぁ、奏」
「んー?」
「やっぱり行ったほうがいいかな? 普段放課後って残らないからすごくめんどい」
「そりゃあいかないとじゃないかなー、入部したわけだしー」
「そうだよなぁ、はぁ、なにするのかわからないのに放課後残るとか時間の無駄だよ」
「どうせゲームしかすることないんでしょー、それなら部活したほうが高校生っぽいよ」
「求めてねぇし………まぁうだうだ言って来なくてもあっちから来そうだもんなぁ、しょうがない、行きますか」
「うん」
俺は立ち上がり、部室まで目指す。
改めて部室までの道のりを見てみると、単純に遠い。
俺たちの教室は校舎からみて右よりなわけだが、部室はの左の左。
測ったことはないが、200メートルはありそうだ。
大げさなだけかもしれないが。
そんな道のりを適当に奏と会話をしながら歩き、部室の前まで着く。
扉を開けると正面の大きな机のところに部長が本を読みながら待っていた。
そこまで本に集中はしていなかったようで、俺らが扉を開けるとすぐに本から目を離して、本をパタンと閉じる。
「待っていたよ」
「来たくはなかったんですがねー」
「あ?」
「すいません、なんでもありません」
「まあいい、来ないかと思ったからよかった、昨日と同じ場所に座ってもらえるか」
「わかりましたーっと」
俺たちは言われたとおりの場所に座る。
「で、部長、なにするんですか?」
どうせまた昨日みたいに逃げられるか誤魔化されると思ったことを踏まえての質問だったが意外にも返答は返って来た。
「今日はだな、初日からで悪いが部員を集めてほしい」
「部員です………か、そういやここ何人いるんですか?」
部として認められるには最低四人~五人の部員と顧問が付くことが校則で決められているから俺たちが入る前には部になっていたわけで、他に二~三人はいるはずなのだが。
「君たち含めて四人だな」
「四人ということは元々は二人ですかっ! ならどうやって部に………? また会長権限というやつですか?」
「いいや、ここは部であって部じゃない、適した言葉でいうなら更生所といったところだな」
「更生所ですか………」
「そうだ、なぜだか知らないがここ一帯の地域の人たちはフォビア持ちが多いらしくて、20年前の校長がこれじゃ子どもたちが持って世間に出た時に困るとして作ったのがこの部の始まりだ、実際毎年毎年フォビア持ちが少なからずいたみたいで、今までこの部は継続していることになっている」
「そういうことですか、それが部であって部じゃないということですか」
「そういうことだ、昨日は思わず活動内容聞かれて自分らしくない行動を取ってしまったが別にここは部ではない、なにかの大会があるわけじゃないしな、フォビアになっている者を集め更生させるための集まりとしての形式上の部というわけだ、だから学校のホームページの部活紹介欄にはここの存在は書かれてないし、表上にも出していない」
「なんで表に出さないんですか? 出せば隠れているフォビアでしたっけ? それが集まるのでは?」
「君たちはもうクラスにバレているから分からないと思うが、バレて恥ずかしいと思うものは大多数だ、それに、おおっぴろげにここの部活を紹介して入ったとしたらその時点で入ったものが恐怖症持ちとバレてしまう、そうなるとそこを突かれいじめに発展するかもしれない、それを危惧しての措置だ」
なるほど、そういうことか。
する人がいるかどうかはさておき、もし先端恐怖症持ちがいたとして、それを利用して恐喝などパシリなどさせることは簡単だ。
目の前に尖っているものを見せるだけでいいのだから。
それをしない条件で顎に使わせることは余裕であろう。
俺の場合は普通に男に囲まれただけで終わる。
今までそういうことなかったのは不思議だが。
「って、クラスにバレてるんですかっ!」
隣の奏も強く頷く。
「なんだ知らなかったのか、私も君たちのクラスのことはよく知らないが、休み時間、君たちのクラスメイトに遠回しに君たちのこと聞いたのにすぐに恐怖症のことですよね?って言われたもんだからびっくりしたよ」
バレてないようにしていたつもりだけど、まあ流石に分かるよな。
怯えているかどうかなんてすぐわかるし、不自然に奏を通して会話している上に、席も隣固定。
わからないほうがおかしい。
「そうですね、納得しました、もう吹っ切ってクラスに溶け込んでみるとして、話を戻してもらっていいですよ」
「うむ、でだ、話が最初に戻すが表に出せない以上、地道に調査してフォビア持ちを探してこの部活にて更生してもらいたいのだ、もちろん、更生をさせる手段などわからないわけなのだが、昨日言っていた通り手助けが必要な人がいるかもしれないからな」
「それはわかったんですが、もしそのフォビア持ちが他の部活入っていたり、拒否した場合はどうなるんですか?」
ここは基本兼部は認められておらず、拒否された場合はどうしようにもできない。
「他の部活に入っているものは別に構わない、これは正式な部ではないから助けがほしい時に来てもらえるだけでいい」
「だったら俺達も」
「お前達は他の部活に入ってない上に、早く治したいのだろう?」
「そうでした。 続けてどうぞ」
早く治せるか分からないのにその文句はおかしいんじゃないかとツッコミったかったが話が進まなくなるのでやめておいた。
「断られた場合はお前達の判断で構わない、本当に助けが要らないという奴は一人で治すことは可能だ、だけど意地を張って拒否していたり、本心を隠している場合などがあるからその時はなんとかしてでも連れて来い」
さすが部長なだけある、説得力がある。
「とりあえず、こんなところだ、別に今日の活動といった割には別に今日してこいってわけじゃない、今後の昼休みや、放課後などを使って情報収集を頼む、それ以降の活動についてはフォビアがもういないことを確認してから伝える。 それでだが君達のクラスメイトや知り合いにフォビア持ちを知っているか?」
本当はもうちょっと長くなる予定でしたが、読みにくくなると思うので二分割しました。
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また来週の水曜に投稿します