狼の恩返しは返品可能ですか?
主人公視点の小説を苦手とする私。
これでも何度も修正を加えました。
これも経験と思って投稿いたします。
「なぁ、常盤君?」
「なんだ、青鼻?」
「青鼻って呼ばないでくれるかい!?」
俺はよく利用している学校近くのファミレスで780円のハンバーグランチを食べながら目の前の男といつもとかわりばえのしないやり取りをしていた。
ぶちゃけ暇なのだ。
俺の前の席にいる男の癖にチョコレートパフェとイチゴミルクを注文した金髪男が幼馴染の青鼻。
本名が……たぶん、青葉だったと思う。…青木だったか?
名前が似てるし、昔から鼻水垂らしているから俺は青鼻と呼んでいる。
学校ではファンクラブがあるくらい美形だが鬼畜なナルシスト男。
年上のお姉さんに散々貢がせるのが趣味らしい。
「キミ…その腕でよくハンバーグ食えるね?っていうよりもナイフだけで食べるのやめなよ。危なっかしいから。」
「昼飯食ってないんだよ。それにいちいちナイフとフォークを持ち変えるほうがめんどくさい。」
俺の左腕は幼稚園ぐらいの頃からまったく動かない。
普段は左手をポケットに入れて動かないように固定している。
そうしないと脱臼したみたいに俺の左腕はぶら下がるために通行人にジロジロと注目を浴びる。
他に困る事といえば食事。
特に今みたいなナイフとフォークを使うような洋食。
この場合、俺はナイフで切って、ナイフで刺して食べる。
ステーキみたいな固い物は大変だがハンバーグみたいな軟らかい物は比較的食べやすい。
それに俺は肉が好きだ。
「昔っから気にはなってたけど……その腕どうしたんだい?」
「………知らなかったか?」
「僕が小学生の時にキミと同じクラスになった時はもうその腕だったよね?」
ああ、こいつは小学生の時に北海道から俺のクラスに転校してきたんだっけ?
「好きな女のために…あいつを守るためにむちゃやらかしただけだよ。」
俺は窓から見える景色をそれとなく見た。
もうそろそろ秋も終わる。
窓から見える木々も冬に備えて葉を落とし、それを通行人は踏みしめる。
休日のために通行人がいつもより多いようだ。
「ありえないね。キミはやくざに囲まれても平気なやつだ。」
「…当時、俺は幼稚園児だぞ。」
「小耳に挟んだ話なんだけど、キミが通っていた幼稚園が恐ろしい地上げ屋に狙われていたのを幼稚園児のキミがそれに関係していた会社ごと潰したそうじゃないか。っていうかあれって本当なのかい?」
「………知り合いの暴力団のいくつかに頼んだだけなんだが。」
「どんな幼稚園児なんだい、キミは…」
祖父ちゃんの友人にそういう人が多いからちょっと嘘泣きして頼んだだけなんだがな。
意外とそういう道の人達は子どもには甘いからな。
よくお菓子くれたおじちゃん達は今も刑務所で元気にしてるかな?
今度手紙送ろう。
「それで、本当はなんなんだい?」
昔っからこいつに嘘は通じないんだよな。
腐っても幼馴染か。
……まぁ、言ってもいいか。
「別に……犬に噛まれて、散弾銃に打たれただけだよ。」
「………はぁ?」
「色々あったんだよ。小さい頃…な。」
俺は小さい頃、当時は幼稚園児だった時の事を青鼻に話した。
………
……
…
小さい頃、俺は遊び場だった裏山にある小さな洞窟へ冒険をしにいったことがある。
秘密基地の近くにあった小さな洞窟。小さな頃の俺でもギリギリ入れるぐらいの真っ暗な穴。
中を懐中電灯で照らし、アニメの歌を歌いながら意気揚々と奥に進んだ。
どのくらい進んだろうか?しばらく歩いていると奥に明かりが見えた。
お宝かと思って走ったらただ洞窟の外に出ただけだった。
その時、ガッカリ落ち込んでいた俺の耳に聞こえたんだ、動物のかすかな鳴き声が。
俺は気になって鳴き声が聞こえる方に歩いていった。
少し歩くとそこには足に何かが挟まって血を流している真っ白い犬がいた。
今思えばあれがとらばさみっていう罠だったのかもしれない。
とにかく痛そうだったから外してあげようと思って近づいた。
そうしたら白い犬が俺を威嚇してきた。
牙を剥き出しにしていて、今にも食われそうだった。
けど、子どもだから平気だったんだろう。
俺は気にせずに罠に手を伸ばした。
そしたら白い犬が俺の左腕に噛み付いた。
痛かったが俺は我慢してなんとなく白い犬の頭を撫でてあげた。
同じような場面がアニメにあったからその真似をしただけだったんだがな。
泣きそうになる痛みを堪えて撫で続けたら、白い犬が大人しくなって俺の傷跡を舐め始めた。
安心した俺は近くにあった石や木で罠を壊した。
きっと古い物だったんだろう。
じゃなかったら子どもの俺が壊せるはずない。
俺は白い犬の足を罠から外すとリュックからハンカチを取り出して母さんの真似事で傷口を水筒の水で濡らしてから白い犬の傷口を縛った。
その後は懐いた白い犬と一緒にその場所でじゃれ合っていた。
しばらく遊んでいて俺が白い犬の体を撫でようとしたら石に躓いてバランスを崩した。
そして、そのまま俺は白い犬を思いっきり突き飛ばしてしまった。
すると、遠くで音がしたと思うと俺の左腕が真っ赤に染まった。
最初はなんともなかったが段々痛み出してきた。
そしたら遠くで怒声が聞こえた。
その時、俺はあの罠を仕掛けた悪者だっと思った。
だから俺は白い犬を連れて洞窟に隠れた。
必死に奥に、奥にって走った。
倒れそうになるたびに白い犬が心配そうに鳴くからやせ我慢してとにかく走った。
そこからはよく覚えてない。
気づいたら病院だった。
山の麓で倒れてたらしい。
白い犬は居なかった。
腕は検査の結果、散弾銃で打たれていた。
何があったか話したんだけど信じてくれなかった。
大人たちが探してもそんな洞窟見つけられなかったらしいし、その散弾銃の弾も数十年前に製造中止になったものなんだそうだ。
白い犬も行方不明。
結局、記憶の混乱ということになって原因はわからずじまい。
………
……
…
「んで、残ったのが不自由な左腕とその記憶ってわけだ。」
「実に興味深いじゃないか。」
それ以後、俺の左腕は動かなくなった。
さっき話した散弾銃が俺の腕の神経をずたぼろにしたらしい。
傷跡が酷いので俺は日頃から長袖の服を着ている。
「それが記憶違いや夢だったという事はないのかい?」
「これを見ろ」
俺は動かない左腕を右手で掴んでテーブルの上に置く。
マネキンの腕みたいで気持ち悪いがそれでも自分の腕。
あるだけでも感謝しなきゃいけない。
っと、話がずれたな。
「ほら、この傷。このボツボツが散弾銃。この大きいのが白い犬の牙の痕だ」
「…ほぅ〜。」
腕を捲くって俺の傷だらけの腕を青鼻に見せた。
俺とあの日を繋げるアルバムと勲章。
腕は動かなくなったが後悔はしてない。
あの犬を救えたし、あの不思議な経験は今も思い出してもワクワクする。
「どうだ、信じたか?」
「…まぁ、キミのいう事だし、信じようじゃないか!」
「さすが青鼻だな♪」
「青鼻いうんじゃない!」
俺は結構気に入ってるんだがなぁ。
あ〜おいお鼻のトナカイさんは〜♪ってな。
「気のせいか?なんか、すごい不快な感じがするんだが?」
「気のせいだ」
青鼻は勘が鋭いからな。
気をつけなければ。
さすがトナカイ並みの野生の勘を持つ男。
「なぁ、やはり気のせいじゃないと思うのだが?」
「疲れてるんだよ。それよりこの後どうする?」
とりあえず話を逸らそう。
青鼻はすぐ引っかかるから扱いやすい。
「駅前のゲーセンに行こうではないか。今日こそ勝つよ!」
「と言いつつ財布に期待してるんじゃないのか?」
「…期待してるよ、相棒♪」
財布は俺らでの隠語。
それが意味するのはかつあげ狩り。
俺達がよく行くゲームセンターはよく言う不良のたまり場という所だ。
行けば必ずと言っていいほどかつあげの現場を発見する。
そこで、俺達はかつあげしている奴をぼこって逆に財布を取り上げる。
俺達は儲かる。かつあげされていた奴には感謝される。
相手は不良なので良心も痛まない。
青鼻は弱いの俺が暴力担当。
片腕でも祖父やその友人に鍛えられたので自信がある。
ちょっと卑怯な戦い方や下手すると命に関わる技が中心ではあったが。
青鼻は獲物の捜索担当。
あの青い鼻は嗅覚が鋭いからな。
「なぁ、やっぱり…」
「疑心暗鬼は友達無くすぞ」
………
……
…
「ただいま〜」
俺の両親は共に海外赴任中。
片腕が不自由な息子を見捨てて海外にいったバカップル。
同じ1流企業に勤める両親は父親がアメリカに転勤が決まると母親は社長を脅はk……平和的な話し合いで同じ勤務先にしてもらうほどのバカップルぶり。
そんな事ができるぐらいだったらなぜ勤務先をアメリカじゃなくて日本にしなかったんだろうか。
あの人達は気分しだいで生きる人たちだから仕方ないのかもしれないが。
そう思わないとあの人達と親子なんてやっていけなかった。
これを悟るまでは色々と苦労を重ねた。
という事で俺は爺ちゃんの家に住んでいる。
江戸時代の商人が住んでいたらしいすごい大きな屋敷だ。
蔵だってあるし実際にドラマの撮影でも使われた。
…心霊番組にも使われた。
気にしちゃいけない。
ラップ現象や金縛り、うめき声が聞こえるなんてことが日常茶飯事でも気にしちゃ……いけないんだ。
靴を脱いで屋敷の奥に行くとピンクのフリフリのエプロンを着た祖父ちゃんがニコニコと笑顔で台所に立っていた。
「…ただいま。祖父ちゃん」
「ああ、お帰り♪」
このいい年をして鼻唄交じりにオムライスを作っているのが俺のお祖父ちゃんの常盤 厳吾朗。
祖父ちゃん、ウサギのエプロンでセー○ームーンはどうかと思うぞ?
趣味はお菓子作り、裁縫、掃除、散歩、ゲートボール、ゴルフ、野球……と多種多彩である。
仕事は陰陽術士とか占い師とか武器商人とかスナイパーとか色々らしい。…信じてないが。
「先に食事にするか?それともお風呂に入るか?…それともわた「だまれ!」……婆さん、最近孫が構ってくれないんじゃよ。反抗期かのう?」
神よ!なぜ、俺の家族はこんなのしかいないのか!?
昨年無くなった唯一の常識人だった祖母ちゃんに愚痴を言いながらいじける祖父ちゃんをほっときつつ、俺はお風呂に入る。
俺は実はお風呂が苦手だ。
理由は色々あるがまず、左腕が動かないから服が脱ぎにくい。
しかも、右腕が洗いにくい。
お風呂でじっとしているのも落ち着かない。
だから俺はお風呂は手早く済ます。
そうして髪を乾かしてから爺ちゃんと食事をする。
祖父ちゃんがオムライスにハート型にケチャップをかけようとも隣の部屋からうめき声が聞こえようとも庭に尻尾が2本あるネコがこちらをじっと見ているというような事もいつもとなんら変わりない日常。
ぴんぽーん。
…化け物屋敷とご町内から恐れられているこの屋敷のチャイムが鳴らされるほうが珍しい。
セールスマンの間でもブラックリストに乗っているこの家。
町内では恐怖の7不思議に堂々ランクイン。
この屋敷の前を通る人でさえも珍しい。
セールスマンが玄関先で発狂したり、屋敷の周りで交通事故が多発したり、心霊番組でこの屋敷が取り上げられた時に霊能力者が奇声をあげたりしているのだから無理もないが…。
「こんな時間に誰かのう?」
「俺が行ってくるよ」
スプーンを置いて急ぎ足で玄関へ向かう。
結構でかい屋敷なので玄関までは距離がある。
向かう間にも何度かチャイムが鳴らされた。
俺が玄関を開けると…
「………こんばんわ。」
一言で表すのであれば美少女。
見た目は俺と同じ年ぐらい。
純白のワンピースと白銀の長い髪。
確かアルビノっていうんだったか?
月明かりが彼女を照らし出す。
その光は純白のワンピースと白銀の髪を神秘的に輝かせる。
芸術的な絵画のような神秘的な光景。
その子は俺をジッと見つめている。
瞳は月と同じ色だった。
その子は口をゆっくりと開く。
「私は貴方に助けていただいた狼です。あの時のお礼にお嫁になりにきました。」
「………」
…俺はゆっくりと戸を閉めた。
あれは美少女じゃなくて痛い子だった。
もしかしてあれを電波系っていうのか?
…忘れよう。
ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。
…本当に痛い子だ。
俺はため息を吐きながら仕方なく戸を開けた。
そこには顔を真っ赤にしてこちらを睨む少女。
「…なぜ閉めるの?」
「え〜と、…精神病院は隣町だぞ?」
「私は正常よ!」
そんなわけないだろう?
何処の世界に鶴の恩返し…じゃない、狼の恩返しを見ず知らずの家でやる子がいるんだ?
…もしかして?
「もしかして君は…?」
「思い出したの!?」
「風俗のサービスは頼んでいないんだが?」
「………えっ?」
「だから、童話プレイなんて家は頼んでいませんが?っていうかそもそもいくら生活が苦しいからって君みたいな子どもがいかがわしい仕事なんてしちゃ駄目だぞ。」
「ちが〜うっ!!」
違うのか?
そうだったら相談に乗ってあげようと思ったんだが。
目の前の子は顔を真っ赤にして息を切らしている。
なぜかこっちを睨んでいる。
「ハァ…ハァ……昔、貴方に助けてもらった狼です!山で罠から逃がし、さらには銃で撃ち殺されそうだったのを身を挺して守ってもらった白い狼です!!」
興奮しているらしく、叫ぶように俺に言った。
あ〜、そういうことか。
「いくら貰った?」
「えっ?」
「青鼻の差し金だな!俺をからかう為にこんな手の込んだイタズラをしやがって!もう怒った。あいつが女子更衣室を盗撮したという証拠写真に修学旅行で女風呂を覗き込んだ時の証拠写真etcをインターネットでばら撒く日がついにきた!!」
「まってまってまって!!!」
あはははは!
個人情報?知ったことか!
俺を怒らせたあいつが悪い。
今日こそ社会的に抹殺してやる!
「数々のサイトで名スレを立てた俺の真の力を持ってすればニュースに取り上げられるほど大事にすることだって不可能じゃない!いや、それよりもまずは○コ○コ動画に画像を掲載……」
「………仕方ないわね」
そういって彼女は俺に……キスをしてきた。
唇が柔らかいとか舌が入り込んだとかというのは考えられない。
それよりも俺の頭の中にはあの時の夢がフラッシュバックする。
罠に掛かった白い犬。
幼い頃の俺。
撃たれた左腕。
洞窟へ逃げ出す俺と犬。
…その時、なぜか俺の心というか魂が納得する。
彼女はあの時の白い犬だ。
…けど、狼だったらしい。
夢が終わると彼女も唇を離した。
「どう?」
真っ赤な顔で聞かれた。
目もちょっと潤んでいる。
「……気持ちよかった…。」
「そ、そう!そのぅ、うれしい…。私の初めての…ってそうじゃないわよ!」
「わかっているよ。久しぶりって言えばいいのか?」
「…ばか」
そう言って彼女は俺に抱きついた。
肩が震えている。
「ずっと…会いたかった。あの日、私を救ってくれた日から今日を…ずっと夢見ていた。ずっと、ずっと…。」
俺はなるべくやさしく彼女を抱きしめる。
少しでも落ち着いてくれるように。
少しでも俺を感じてくれるように。
「あの時、知り合いの妖怪から貴方の腕が私を庇ったせいで動かなくなった事を知った時は命を絶とうとも思った。けど、貴方に恩を返したかった。貴方と一緒にいたかった。貴方に…愛されたかった。だから、私は…」
えっと〜、庇ったんじゃなくてバランスを崩した偶然だったんだが?
いや、それよりも気になることがちらほらと。
「疑問が色々あるんだが…妖怪というのは?」
俺に抱きついていた女の子はハッとしたように俺から離れ、身なりを整える。
「申し遅れました。私の名前はフローズヴィトニル。こっちの言い方だとフェンリル。西洋の魔物です。こちらの妖怪のぬらりひょんに貴方の捜索をお願いしていました」
北欧神話の!?
しかも。ぬらりひょんって妖怪漫画の妖怪総大将!?
「貴方がいなければ今の私はいません。あの日、私を救い出してくれたあの日からずっと…お慕いしておりました。嫌でなければ私を貴方のものにしてください」
そう言って彼女は再び俺に抱きつき、上目づかいでこちらを見る。
…むちゃくちゃかわいい。
しかも、意外と胸があるからお腹辺りに軟らかいアレが…。
「お〜い。早くせぬとわしが作ったオムライスが冷めてしまうぞ?」
…祖父ちゃん、感動の場面に横槍入れないでくれるか?
俺、女の子とこんなに密着したことなんてないんだぞ?
もう少し堪能したって…
「ぬらりひょん!」
……はぁ?
「お〜、フェンリルの譲ちゃんじゃないか!?元気しておったか?」
「はい。おかげさまで!ぬらりひょんはなぜここに?」
「ここはわしの家じゃ。ついでに、そいつはわしの孫じゃ」
「そうなのですか!?だったらもっと早く言ってください。…そうすればもっと早く会えたのに」
「すまんのぅ。ポセイドンから出会いは運命的に演出せねばっというもんじゃから秘密にしておったのじゃ」
「叔父様が!?」
ついていけない。
何?爺ちゃんがぬらりひょんっていうことは俺って妖怪?
ポセイドンって海の神様の?
…とりあえず
「爺ちゃん。説明するか、3億の生命保険を俺に渡す事になるか選べ」
「おお、そうじゃった…待て、生命保険などわしは知らんぞ!?」
「当たり前だ。言ってないんだからな。祖母ちゃんにもかけていたぞ。もちろん、全額俺が受け取った。」
「なんじゃと!?」
「安心しろ。祖父ちゃんの生命保険の受け取りも俺だから」
「なんじゃと〜!!」
「さぁ、DEAD OR DEATH!」
「どっちも死ぬのか!?」
「ふぅ〜、近所迷惑だから無意味に叫ぶのはやめろ。これだから老い先短い老人は…」
「わしが悪い事にされておるのか!?」
祖父ちゃんで遊んでいたらなんとか落ち着いてきた。
結構衝撃的な事実だからパニックになりかけていた。
「それで、俺は妖怪の血を引いていて、あの時の事は現実。その恩返しというか、この子が俺に惚れたからプロポーズに来たっていうことでいいのか?」
「そうなんじゃが意外とあっさりしているのぅ」
祖父ちゃん、そんなわけないだろう!?
俺が妖怪というのはまだいいけどこんなかわいい子が俺の嫁に来たなんて未だに信じらない。
俺がその女の子の方を見ると…
「私…迷惑だった?」
…わざとやっているんじゃないだろうか。
目を潤ませて…フルフル震えながら……僕の目をジッと……。
「そんなことない。うれしいよ」
俺は安心させるように彼女を抱きしめた。
さよなら、理性。こんにちは、男の本能。
なんだか訳分からないけどとりあえずいいや。
こんなかわいい子が俺を好きだっていうなら文句ない。
「ありがとう。私を貴方のものにしてください」
「ああ。お前の全てを俺のものにしてやる」
………
……
…
「変な夢…。」
俺はいつもより少しだけ早く起きた。
うなされたわけでもない。
むしろ、いい夢だった。
あまりにも現実離れしたおかしな夢。
何が『ああ。お前の全てを俺のものにしてやる』だ。
俺がそんな恥ずかしいセリフを言うわけがないだろうが!
しかし…
「…本当にあんなかわいい子が結婚してくれるなら俺が妖怪でもいいんだが」
口に出して恥ずかしくなった俺は頭を殴った。
「何を言ってるんだ、俺は?…少し早いけど朝飯を食べるかな?」
そうして俺はベッドから起きあ…が……る?
起き上がるためにベッドに手をついたけど感触がおかしい。
プニプニと心地よい軟らかさ。
いつものベッドの感触とは違う気がする。
「………」
プニプニプニ
「んっ……あんっ……♪」
「………?」
プニプニプニ
「ぁはっ……はぁん……♪」
恐る恐る手元を見る。
ベッドには夢に出てきた少女がいた。
その子は男の夢(?)の裸Tシャツで心地よさそうに寝ている。
俺の手は彼女の………胸に……
「…夢じゃないのか?」
それともこれも夢か?