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フリッカー  作者: 友衛
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2.スキル

自分の置かれた立場について、ある程度の把握ができたレティシアが考えたのは、身を守る力を手に入れなければならないということだった。

なにしろレティシアの周囲を取り囲むのは、何かしらの戦闘能力を持つ者ばかりであったのだから。

それに加えてレティシアの身分である。物騒な国であるということを差し引いても、大きな権力を有す者はそれだけ敵が多いと考えるべきであった。


今まで目にしたスキルから、この世界には魔法という存在があることがわかっている。

それ以外に目にしたのは剣や槍、弓、変わりどころでは暗器といった打撃系の武器ばかり。銃など見かけないので、機械文明はそれほど発達していないと見るべきだろう。


未だ2歳児であるレティシアにおいての、大きなアドバンテージ。

いわずもがなフリッカーであるということ。正しくはフリッカーとして今まで引き継いだ能力があるだろうこと。

戦う力をひとつも引き継いでいないというのは考えづらかった。

最初の切っ掛けさえつかむことができれば、そのスキルを手に入れることができるはずなのである。


まずは確実に手に入れることのできるものに手を伸ばすことにした。



最初の彼女の引き継いだものは、フリッカーになる切っ掛けとなった記憶である。

その記憶には、その最初の彼女としての記憶と直後の死後の世界フリーズでの記憶、そして次の転生先の記憶が含まれる。

2番目の彼女が実際に何の力を引き継ぐように望んだのかは知らないが、生前、ある程度は考えをまとめていたのだ。今まで引き継ぎに失敗したことがないのは感覚的にわかっているので、引き継がれているものとして考えていいはずである。

そのスキルを持っていると確信しているレティシアは念じる。するとチリンと鈴の音が聞こえた。


『フリッカーの申請を受理しました。

スキル:歌唱、スキル:器楽、スキル:詩吟、スキル:舞踏、スキル:礼儀作法 を フリッカーへと付与します』


スキルが付与されると同時に、その時の自分が能力の引き継ぎを申請した状況についても思い出す。


2番目の彼女は小さな島国の王女だった。

その国は女性の権利が乏しく、王女とは父王の命令に従う以外の行動を認められていなかった。非常に閉鎖的な国であったのだが、ある特殊な産業を有していたため結びを得たい国は多かった。

歴代の王たちは、引く手数多な王女を嫁がせるのに付加価値を更に高めるため、王女に様々な教育を施した。それは2番目の彼女も例外ではない。

様々な教育を施されて、父王の命じるまま勢力を伸ばしていた国に嫁がされたのだが、そこでは本当の意味で望まれたわけではなかったのだろう。ほぼ軟禁状態で数年を過ごし、恐らくは彼女の扱いに困ったのであろう夫に差し向けられた刺客に命を奪われるという、何とも報われない一生を過ごしたのだ。


2番目の彼女は、そんな自分の人生に価値を見いだせなかった。

だから駄目で元々といった心持で願ったのだ。


「私が王女として受けた教育で手に入れた技術を、引き継ぐことを望みます」


あまりに範囲が広すぎる願いだった。本来なら却下される願いであるはずだった。


しかし、その2番目の彼女の人生はフリーズの住民に非常に高い評価を得ていたのだ。

それは、どれほどの長さがあるのか誰も把握していないフリーズの歴史の中で、歴代三位に輝いたというほどの、高い評価を。

それだけの評価をたたき出すということは、当然滅多にあることではなく。しかもまだフリッカーになり立ての、何の能力も引き継いでいない状態での評価であったのだ。

そんな彼女がたくさんの能力を得たとしたら。フリーズの住人たちの期待が高まった結果、2番目の彼女の申請が通ってしまったのだった。


そしてもう1点、彼女にとっての誤算があった。

彼女のいう「王女として受けた教育で得た技術」とは、歌やダンス、刺繍といった教養的なものを指していたのだ(ちなみに刺繍というスキルはないらしい)。それなのに。


チリン、と再び鈴が鳴った。


『フリッカーの申請を受理しました。

スキル:棒術、スキル:水魔法 を フリッカーへと付与します』


その国の王族は男性は剣術、女性は棒術を護身術として教育に課せられていた。

また海に囲まれた小さな島国で水源の確保が難しかったため、素養のある者は水魔法を身に着けるのが当たり前でもあった。

その2つの技術も引き継がれているのだと思い出したレティシアは、迷わずスキルの付与を願ったのだ。


まだまだ体が未熟な今、棒術というスキルを生かすことは至難である。

しかし前世の記憶を持ち精神が成熟しているレティシアならば、2歳児の体力しかないという欠点を含みつつも、水魔法を使うことはできるはずだ。

まだまだ他にも引き継いだ能力はあるはずだが、幼い体で多くのスキルを有していても持て余すだけである。最低限の身を守る手段を得たことで、由とするべきであろう。

そう内心で納得したレティシアは、今後のスキル習得に関しては成り行きに任せようと結論づけたのだった。



レティシア・アークハルド  Lv.-

種族:ヒト  性別:女  年齢:2

所属:クレイナート王国 アークハルド侯爵家

職種:-

HP:19(19)

MP:35(35)

SP:28(28)

スキル:『武術系』棒術

    『魔法系』水魔法

    『教養系』歌唱 器楽 詩吟 舞踏 礼儀作法

    『特殊技能系』鑑定 ???

賞罰:-

特殊技能系スキルの「???」は、今はまだ謎のままで。

フリッカーとして引き継いでいるのに、この世界では適応しなかった技術です。

まだ先になりますが、ちゃんとスキルとして確定させる予定はあります。

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