1.現状把握
久しぶりの更新です。
のちのち登場するキャラクターの掘り下げがイマイチだったので、改めて煮詰めなおしています。
わたしがフリッカーと自覚してから数日が経つ。
まだ2歳にしかならないわたしの行動範囲は狭く、その範囲内でできる限りの情報収集に努めた成果をまとめてみよう。
まず、わたしの名前はレティシア。
わたしをお嬢様と呼ぶ女性が常に傍についていることからある程度予測していたが、わたしの身分は相当高いらしい。
使用人たちの話題にのぼることから、この国には王様がいる王政の国だということがわかっている。
そしてどうやらわたしの父親は、その側近にあたるらしい。ということは貴族なのだろうか。
その父親には、この数日で会ったことはない。
同じく姿を見ない母親は、既に亡くなっているらしい。父には複数の妻がいて、その中で最も美しかったのが母であったのだという。
この国は褐色の肌に黒檀のような濃い茶色の髪、同色の瞳という容姿の人が一般的だ。対する母は外国の血を引いていたらしく、白い肌に銀髪、青い瞳であったとのことだ。
そしてわたしは母の特徴をよく受け継いだと言われる通り、白い肌に黒髪、青い瞳を持っている。ちなみに髪の色については父が黒髪であるようだ。
そしてわたしには3つ年上の同腹の姉。人数はわからないが異母兄弟が幾人かいるらしい。少なくとも兄が2人に姉が1人いることはわかっている。会ったことはないが、年の離れた兄はよくわたしの元へ姿を見せるらしい。
そうして周囲に聞き耳を立て、情報収集に努めていたときのことだ。
わたしの世話をする使用人の1人が、恋人に贈られたという指輪を同僚たちに自慢していた。
いかに彼が金持ちで、自分への贈り物に気を配ってくれるかをのろける彼女。その自慢する指輪が視界に入って、内心首を傾げたのである。
わたしがフリッカーとなって記憶を持つ2度目の生は、立場は非常に低かったが王女という身分だった。
一応は王女であったため、調度品などは一級品がそろえられ、自覚はなくともそれなりに見る目が鍛えられていた。
そのわたしの目から見て、その指輪は程度の低い偽物にしか思えなかったのだ。
瞬間、チリンとどこからともなく鈴のような音が鳴る。続いて、
『スキル:鑑定を発現する条件が整いました。フリッカーへ付与します』
という声が頭の中へ響いたのだ。
幾度目かの生で引き継いだ能力の1つ、鑑定が定着したのである。
それと同時に、この能力の使い方や特徴、制限への知識も同時に思い出す。
定着したばかりの鑑定の能力は未熟だが、1度使い方をマスターしている分は早く使いこなせるようになるはずだ。
わたしは喜んで、鑑定を発動した。
まずは自分のことである。
レティシア・アークハルド Lv.-
種族:ヒト 性別:女 年齢:2
所属:クレイナート王国 アークハルド侯爵家
職種:-
HP:19(19)
MP:35(35)
SP:27(28)
スキル:鑑定
賞罰:-
国の名前と身分がわかった。考察通り王政の国で、他にどれほど公爵や侯爵がいるかはわからないが、そうとう身分が高いことが証明された。
ステータスについては平均がどれほどであるのかわからないため判断がつかない。2歳児であることも考えれば高くはないだろう。
SPが減っているのは、鑑定を発動させるのに必要であるということか。
次に、ステータスの中から国の名前を再検索する。うまくすればどういう国だかわかるかもしれない。
クレイナート王国
:大陸東部の国。犯罪国家。
北をホーツ山脈、それに連なるホーツ大森林を有し、森林の沿岸部へと王都を据える。ホーツ大森林より以南は砂漠であり、エキナ砂漠は大陸最大の面積を誇る砂漠である。国土の7割が砂漠に覆われている。
説明を読んで、体がビシリと固まった気がした。
(…犯罪国家?)
途中、さり気なく書かれている説明文に、見過ごせない言葉を見つけたのだ。
人身売買や麻薬の製造、武器の密売。
しばらく考えてみるが実態を知らない以上、それがどういったものであるか結論は出ない。他に何か情報を得ようと、未だ惚気話を続ける使用人たちを鑑定することにした。
アカザ Lv.12
種族:ヒト 性別:女 年齢:19
所属:クレイナート王国 アークハルド侯爵家
職種:暗殺者
HP:149(149)
MP:50(50)
SP:28(28)
スキル:暗殺 隠密 小剣技
賞罰:殺人 強盗
ルキア Lv.25
種族:ヒト 性別:女 年齢:22
所属:クレイナート王国 アークハルド侯爵家
職種:諜報
HP:252(252)
MP:80(80)
SP:12(12)
スキル:性技 暗器 索敵 影魔法
賞罰:殺人
ネア Lv.18
種族:ヒト 性別:女 年齢:19
所属:クレイナート王国 アークハルド侯爵家
職種:魔術師
HP:193(193)
MP:123(123)
SP:48(48)
スキル:杖術 火魔法 水魔法 光魔法
賞罰:殺人
(どうして全員に殺人の賞罰がついているの!?)
しかも職種も物騒である。
魔術師はいいとして、なんだ諜報って。なんだ暗殺者って。
他に兄弟がいる以上後継者になる可能性は低いが、それでも令嬢である自分の側付の面々がこれである。侯爵家令嬢の側付であるなら、人選も整えられているのではないだろうか。
犯罪国家。
もしかして選りすぐり、エリートと呼ばれる人間がこれであるとするなら、その実態とは。
背筋を冷たい汗が滑り落ちた。
その後も接触する数少ない人間を、一縷の望みをかけて鑑定し続けるレティシアであったのだが、その期待は裏切られることになるのだった。
今回、側付の3人が出ましたが、そこまで出番が多くなることはないかと思います。