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ダークナイト

 術者の死亡によって、人々は掛けられた眠りから覚める。眼の前の変化に戸惑うのは一瞬だった。すぐに彼らは集中する。そういう作戦だ。

 シューノは一段高い場所から、エルエルの死体を高々と掲げて邪悪に笑う。首を掴んだ右手に少し力を込めると、彼女の体は儚い翠色の光になって四散した。敵対していたはずの人間でさえ、その光景を嘆く。眠りながらもきっと、自分達が彼女によって守られたことを感じていたんだろう。

 相争い合う二人の人間が仲良くなるには、共通の第三敵があらわれるのが一番だと言う。それは集団でもそうみたいだ。みんなの眼はもうシューノに釘付けだった。流石に、ヘイトを集めるのはお手の物らしい。

 そこで、正義の魔法使いの登場だ。彼女は派手な上級スキルを振り回して、シューノと対峙する。すぐに、我も我もと騎士団の人間が魔法使いの味方につく。その中にはシューノと特別仲の良かったモーセおじさんもいた。わたしは見ていられない。けど、眼を塞ぐと、自然に意識が辺りに木霊する罵声の嵐に移ってしまう。いろいろな言葉が聞こえてくるけれど、全て意味は同じようなものだ。わたしは聞いていられない。

 手筈通りにいっているなら、そろそろ正義の魔法使いが大呪文を詠唱しているころだ。空から降り注ぐ《サンダーブレード》の雨がシューノを襲って、彼は右手足に部位欠損ダメージを受け、敗走する。轟音と共に、歓声が上がった。どうやらお芝居はスケジュール通りに動いているらしい。

 わたしは眼を見開いて、シューノを探す。するとボロボロの彼の姿が眼に飛び込んできた。やたらめったらに投げつけられるゴミが、無数にその背に当たっている。追撃の矢や魔法に当たり、そのHPはもうイエローを割り込んでいた。

 彼は足を引きずりながら、無様に逃げる。

 涙なしには、見ていられなかった。

 もうひとりの英雄のことは、誰も知らない――。

第二部終了となります!

ここまでのご読了、ありがとうございました!

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