友情のために 五
梶原家であるということが、それだけで殺すべき存在ということなのかもしれない。
それでもね、個人的に美咲に恨みがある訳ではないのだし、この美少女を殺そうなどとは思えないことでしょう。
美少女だからこそ殺される?
それとも性格の悪さの発揮どころかしら。
「ボクはその要求を受け入れても良いと思います。全てを捨てて生きる、その罰を受け入れる覚悟があるというのなら、ボクはお二人を生かしておくのも構わないのではないかと。それでは美鈴様、どうなさいますか?」
淡々とした冷たい言い方だけれど、翔は私のお願いを全て聞き入れてくれるらしい。
いや、私が頼んだ以上だ。
だって彼は美咲だけではなくて、お二人をと言ってくれたのだから。美咲だけで良いと言ったのに、私までを含めてくれたのだから。
それにこんな言い方ではあっても、彼はきちんと感情を持っていて、悩んでくれているのだということを、私は知ってしまっている。
しかし最終的な決定権は、この香山の娘にあるという。
「うぅん、可哀想ですけどぉ、仕方ないですね。かけちゃん、お願いします」
人が良さそうに作られた笑顔で、可哀想だとか言ってくるけれど、そんなことを感じているとはとても思えない。
だからといって、私たちを苦しめたいだとか、そういったこともないらしい。
本当に彼女はなんとも思っていないのだろう。
少しの感情さえも入っているとは思えず、仕事の一つとして片付けているだけ。誰が死のうと、どうだって良いんだ。
殺してきた人の人生なんて、私も今まで考えることがなかった。
作業のように斬ってきた人たちにも、こんな風に、それぞれの人生があったのだろうな。
そう思うと、私がここで罰を受けるのも、当然のことなのかもしれない。
こいつは、いつこの気持ちを知って、いつ殺されるのだろう。いつこの地獄を、誰が見せてくれるのだろう。
美咲を守る為には、その役目を負うのは私ではないのでしょうね。
「お二人とも、いらっしゃって下さい。死刑執行人というのがおりますが、お願いします、ボクにその役目をお任せ頂けませんか?」
刀など握ったこともなさそうな、白く細い腕のくせして、翔はそのような提案をしてきた。
許可を求める相手は、私じゃなくて後ろにいる貴男の主でしょう?
そう思うのだけれどまっすぐに私を見つめて、彼は頼み込んでくる。
きっとこれで、失敗してくれるということなのかしらね。
「構いませんけれども、失敗しただとか、そういうことはおやめ下さいね」
「ええ、努力します。それでも尚、失敗したとなりましては、運命が生を告げているということでしょうね。そうはならないよう、確実に一撃で仕留めさせて頂きます」




