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貴女が信じてくれるなら  作者: ひなた
諦めと恐怖
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第七話

 うぅ、翔が悪いのかしら。

 私がこんなにも私らしくないのは、翔のせいなのかしら。

「えっとぉ、天野雪絵さんでしたっけぇ?」

 連れて行かれたのは、若い女性の前。

 その佇まいから、身分が高い人なのであろうことを伺わせる。

 仮にも姫である美咲にも、少しは見習って欲しいものだと思う。

 でも外見的にはやっぱり美咲の方がずっと上ね。

 顔全体を見ても美咲の方が可愛いし、各パーツごとに見たとしても、絶対に美咲の方が可愛いわ。胸も美咲の方が大きいし、スタイルだって美咲の方がずっと抜群よ。

 美咲ほどの美少女を見続けてきた私としては、こんな子ブスとしか言えないわね。

 どこをどう間違えても、可愛くなんて見えないわよ。

 話し方で誤魔化そうとしているけれど、声もいまいち。雰囲気と格好はお上品で可愛いふりをしているけれど、全然ダメダメね。

 それになんだか、性格が悪そうで、悪寒が走るわ。

 このタイプの人って絶対に裏表が激しいのよ。

「かけちゃんが褒めているからぁ、すごい人なんだよねぇ。若くて可愛い女の子だったからぁ、わたしぃ、びっくりですぅ。羨ましいなぁ」

 腹立たしい。完全に作られたキャラとしか思えないわ。

 天然で本当にこんな子なんだとしたら、本気で引くし神経を疑うわ。天然のぶりっ子だって、そういうことなのでしょう?

 ああ、気持ち悪い。

「彼女は香山美鈴様です。その表情は、ご存知なのですね? さすがの情報力です」

 嫌悪感で満ち溢れた私の表情をなんと思ったか、翔はそう言って私のことを拍手して、褒め称えてくれた。

 香山美鈴って、香山裕史の娘のことでしょう?

 道理で気分が悪くなってくるくらいに嫌な感じがした訳だわ。

 しかし翔も翔よね。

 嫌がっている私を見て、私が彼女を知っていると思ったなんて。

「褒められるほど、私は素晴らしいものではありません。情報というほどの情報も持っていません。だから、こうして敵の前に一人、突き出されているのです」

 出来る限り恐れは見せず、堂々とした態度で私はそう言った。

 自慢をするとその程度に見られてしまうから、慣れもしない謙遜なんてしちゃって。

 私は私を優秀だと思っているし、褒められて当然だと思っている。

 今回の逃走劇でかなり自信をなくしはした。

 本物の天才軍師を見て、私なんてまだまだの子どもなんだと思ったわ。世間知らずだと思ったわ。

 だけど私が天才なのは知っているし、将来は世界一の軍師として美咲に全てを捧げるくらいの自信はある。

 それは今でも変わらないことなのに、本当は謙遜とか言いたくもない。

 だって思ってもいない嘘なんだもの。そしてありえないことでもあるんだから。

 私が私のことを低く言えるなんて、これも翔のせいなの?

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